SNS禁止は意味がない 情報化社会生き抜くため不可欠なこと 「ママプロジェクトJapan」代表取締役 岩田かおり

2022年10月11日07時00分

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 今やライフラインの一部となったと言っても過言ではないLINEやインスタグラムといった会員制交流サイト(SNS)。しかし、一日中、スマートフォンの画面にくぎ付けとなっているわが子の姿を見ると心配になるもの。ガミガミ言わずに勉強をする子どもに育てる教育法を提唱、「『天才ノート』を始めよう!」(ダイヤモンド社)を著した「ママプロジェクトJapan」(東京)代表取締役の岩田かおりさんに寄稿していただいた。

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 インターネットの普及により情報が手軽に手に入るようになり便利になった反面、現代の子育ては困難になっている点もあり、特にSNSに関して多くのご相談をいただきます。メールやチャットの普及によりテキスト(文字)でのやり取りが増えました。テキストと言っても手書きの手紙とは違い、機械的なテキストでのやりとりでは、温度感やニュアンスが伝わりにくいためトラブルの原因になることが多いツールです。保護者同士のやり取りであっても、口頭で言えば笑い飛ばせる事が難解なトラブルに発展したり、わざわざ伝える必要のない情報を伝えてしまい不安になったりという相談も最近は増えています。

トラブルに巻き込まれやすい人物像とは

 特に子どもに使用させる場合には、どのSNSを主に使っているかを把握し、それぞれに応じたリスク(弊害・犯罪に巻き込まれる可能性など)を想定し家族内で話題に挙げて話しておくことが重要です。SNSにはそれぞれ特性があるので親も実際に使ってみることも大切。

 SNSやインターネットは世界を格段に広げられるツールではありますが、自分で考えて行動する自分軸のない人は情報に踊らされたり、情報メタボリックになり混乱に陥ったりしている親が多いのも現代の子育ての特徴です。

 SNSでトラブルになりやすい危険なタイプは、(1)情報整理が上手ではない人(2)現実と仮想の区別が付きにくい人(3)良いものは全て取り入れたい意欲的な人―でしょう。情報収集には良いですが、自分軸がない人にとってはアレもコレも良さそうに写って自分の生活に劣等感を感じてしまう傾向もあるツールです。

 また、SNSの問題点は中毒性。色合いや流れてくる情報は世界屈指の優秀なビジネスマンたちが研究に研究を重ねてアルゴリズムを日々更新し、1分でも長く見てもらう工夫を凝らしているということを大前提として把握しておく必要があります。そんな中、子どもがスマホを長時間眺めている姿を見ると、ルールを決める!(もしくは完全に禁止)なんてことをしたくなりますが、それは抑止力には繋がりません。

大切なのは「大枠」の確認

 一時的に抑止できたように見えた場合でも、実はこっそり布団の中に持ち込んだり、違うルートを見つけてアクセスしたりと子どもは親の目をすり抜けて、自分のやりたいことをする“生き物”です。もちろん家庭内でスマホの使用ルールを決める事は重要ですが、そのルールをすり抜けて当たり前だと捉えておく事が必要です。ただ、『使用時間は21時まで』『リビングで使用』『1日30分』といった細かいルールや約束とは別の、もっと大枠を伝えることの方が効果的だと感じています。

 その大枠とは…『人生の時間とエネルギーは有限だから何に使うかをしっかり考える』ということ。他人の私生活の切り取りにすぎない投稿や動画、無限に稼働しているチャットグループは、自分にとって『必要』or『暇つぶし』どちらなのか。これを考えずに使用していると、だいたいが暇つぶしになっている可能性が高いのです。親ができることは細かくルールを作り子どもに守らせることよりも、この大枠を伝え続ける事にあります。これにより、多くの家庭が『チャットグループから退会した』『子どもが自分なりの使い方を手に入れた』とうれしい声が届いています。

 また、親自身もスマホが手放せない、常にパソコンに向かっているなんていう方も多いかと思います。仕事でもデジタル機器を1日中使う業種の方も多いでしょうし、日常生活において手放せないものとなりつつあるのも事実だと思います。

親も子もデジタルから離れる時間を

 そこで、昨年の夏から長期休暇の際に親子で参加できる「デトックス(解毒)キャンプ」を始めてみました。一定期間、デジタル機器から離れ、大自然に触れてみようという企画です。今夏も徳島で実施しましたが、募集開始から30分で満員になりました。

 この大人気となった企画は、親子一緒に参加できて思い出を共有できるのに日中の活動はバラバラという親子共に大満足できる内容。よくあるパターンが、「子どもに自然体験を!」と張り切ってキャンプに行ったものの、日常生活に戻った途端、親は2、3日グッタリ状態となってしまうというもの。

 私たちのプログラムでは、親はサウナ、読書、瞑想(めいそう)、金比羅山御参り、終電を気にしない飲み会(!)など、思考を緩めてゆったり過ごし個室で就寝。一方の、子どもは大自然に浸り、自立心や協調性といった非認知能力をフル活用し、山と川の両方が堪能でき、子どもだけでキャンプサイトで寝るという内容。もちろんゲームもスマホもなしです!

 一定期間、デジタルから意識的に離れることで親子共にたくさんの気づきと、エネルギー回復が見られたとうれしい感想が届いています。

 これからの時代なくてはならない存在のデジタル機器だからこそ、定期的にデジタルデトックスする時間を意識的に確保する必要があると感じています。

 自分の行動の指針は『心』が決めるので、『思考』優位にストップをかけることが重要です。思考優位になると心が鈍感になり、意思決定が『マーケティングにあおられる』『他人が決めた指標』『一般的に良いとされていること』に偏ってしまいがちです。情報化社会を渡り歩くためには『心』をしっかり稼働させて判断していくこと(私は「動物的感覚」という言葉をよく使っています)が重要です。

 現代を強くたくましく生きたい人、自分らしい子育てを突き進みたい人には睡眠と同じくらい不可欠な時間だと捉えています。

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岩田(いわた)かおり 大阪市出身。短大卒業後、航空会社勤務などを経て結婚、3人の子どもを育てる専業主婦に。自身の経験を生かして幼児教育に関わるようになり、その後独立。独自の教育法を体系化し「かおりメソッド」として結実させた。現在、企業の社内教育講座を請け負うなどの活動も行っている。

(2022年10月11日掲載)
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