ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川前社長が行っていたとされる性加害問題で、追及の口火を切った英国の公共放送BBCが、日本の民放キー局元アナウンサーに出演オファーしていたことが分かった。〝反グルーミング〟キャンペーンを展開するBBCは元アナに、過去に性加害問題を報じなかった理由やジャニーズからの〝圧力〟などを確認。本気で帝国の闇に迫っていた。

 一連の問題の発端は、BBCが3月放送の番組で、ジャニー氏から性加害を受けたとする元ジャニーズタレントらの証言をもとに追及したことだった。

 この10か月ほど前の昨年6月、BBCが出演オファーしたのが元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏だった。BBCの番組スタッフが同氏に接触し、「実は…」とジャニー氏の「グルーミング」を調べていると打ち明けた。

 グルーミングとは、わいせつ目的で相手を手なずける懐柔行為。性加害問題は、「MeToo運動」のうねりもあって世界的に厳しい目を注がれている。

「BBCは〝反グルーミング〟に取り組んでいます。英国内外問わず、著名人のグルーミングを調べています」(同局を知るテレビ局関係者)

 BBCは、かねて日本の芸能界でささやかれたジャニー氏の性加害疑惑をピックアップ。長谷川氏が局アナ時代、フジ系「とくダネ!」(1999~2021年)でリポーターとして活躍したこともあって、白羽の矢を立てた。

 BBCスタッフはメール、Zoomで長谷川氏と4回ほど打ち合わせした。かつて視聴率ナンバーワンだった「とくダネ!」がなぜ、性加害問題を報じなかったのか、ジャニーズから〝圧力〟はあったのか――などと多角的な質問で確認。長谷川氏が8月に顔出しでインタビューすることが決まり、その場所はあえて、フジ社屋が見える都内の公園に設定した。

 一方、水面下では被害に遭ったとされる複数の元ジャニーズタレントにも出演オファーしていた。交渉は一筋縄ではいかなかったが、最終的に複数人が出演を承諾。これを受け、BBCは長谷川氏へのオファーを取り下げ、出演はなくなった。

 長谷川氏の話。

「BBCでのインタビューではなぜ、局アナ時代に『とくダネ!』でジャニー氏の性加害疑惑を扱わなかったか?と質問され、『SMAP×SMAP』などジャニーズタレントが番組に出演していることを考えると、それは無理だったと答える予定でした」

 ジャニーズからフジが〝高圧的〟な態度を取られていたことも証言するつもりだった。〝幻の証言者〟となった長谷川氏は、ジャニーズとフジの往年のパワーバランスがあった事情に理解を示しつつ、「これまで問題を報じなかったテレビにも責任があり、批判は免れません」と当時の悔恨をにじませた。