自衛隊全体でも、常に2万人規模が不足している状態になっている。人口減少や昨今の安全保障環境の厳しさによる入隊への抵抗感など要因が言われるが、民間企業の賃上げが進むことで自衛隊への応募が低調になる傾向は無視できない。やはり給与や待遇面を大胆に改革しなければ、現状を大きく好転させられないだろう。
ところで、若い自衛官と話してみると、こちらが想像していなかった心情を知ることがある。
例えば、コロナ禍において私たち世代は「飲み会ができなくて、さぞかし苦痛だろう」と案じたが、むしろ「部屋で過ごしたい」人が多いというのだ。むしろストレスを感じるのは「Wi―Fi」が使えない時なのだと。
もちろん、かなり整備はされているが、自衛隊の所在する場所は僻地(へきち)が多く、赴任した部隊で電波が入らないと落胆が大きい。海上自衛隊では、艦艇希望者を増やすために通信環境の整備を進めていたが、地上の方は盲点になっていなかっただろうか。
個人の娯楽だと判断され、予算が付き難いかもしれないが、今やWi―Fiは生活インフラだと言えるだろう。ある部隊では、生活隊舎をきれいな景色が見える場所に建てたが通信状況は悪く、「景色よりWi―Fi」と言われているようだ。
いざ演習や作戦に入れば、自衛隊は不自由を強いられる。普段から同じようにガマンすべきという考え方のままでは、希望者を増やすことは難しい。 =おわり
■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 防衛問題研究家。1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書・共著に『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出版)、『自衛官の心意気』(PHP研究所)、『危機迫る日本の防衛産業』(産経NF文庫)、『陸・海・空 究極のブリーフィング』(ワニブックス)など。