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アプリマーケティング最大の闇を解説します

前回はアトリビューション定義による「正しく計測すること」の難しさを書きましたが、今回はさらに各業者について具体的に解説していきます。

ラストタッチアトリビューションという単語は聞いたことがある方も多いと思います。アトリビューションを考える上での最も基本的な考え方で、広告の成果は最終的にコンバージョンをした直前に視聴・Clickした広告のものにするというルールです。
このモデルが正しいのかはもちろん議論の余地がありますが、デジタル広告はざっくり、最後に取ったもの勝ちという原則で戦っています。
ただしこれは、対等なアトリビューションが複数発生している場合のルールであり、実際のアトリビューションの優先順位は実は非常に細かい決まりがあります。
(どのようなアトリビューション定義の項目があるかは、前回のnoteを参照してください)

問題

ユーザーが以下の行動パターンを取ったとき、インストールはどの媒体の成果になるでしょうか?

図1 (1)

正解は

Twitterの成果となります。
どう考えてもAdNW(*1)の広告がインストールに直接貢献していますが、それでも成果はTwitterのものになります。

このままだと意味がわからないと思うので、簡単な問題から順を追って説明します。次の問題で同様にどの媒体の成果となるのかお考えください。

図2_修正

問題の違いは、AdNWの配信面がWeb面かアプリ面かの違いだけです。

一見、広告効果は1も2も変わらないように見えますが、コンバージョンは1. Instagram、2. AdNWの成果となります。
ユーザーの行動は同じなのに、Web面かアプリ面かによって成果のつく媒体が違うんです。どの媒体の成果になるのかは、広告の効果ではなくアトリビューション定義によって決まるのです。

大事なことなのでもう一度言います。

どの媒体の成果になるのかは、広告の効果ではなくアトリビューション定義によって決まるのです。

一般的なアトリビューションの優先順位は以下になります。

広告ID有りClick > 広告ID有りView(*3) > 広告ID無しClick > 広告ID無しView

今回の場合AdNWのClickで広告IDの有無がそれぞれ違うため、優先順位が変わり、結果として成果のつく媒体も変わっています。

それでは、問題を続けます。

図3_修正3

今回の問題では、AdNWでのClick後、動画を視聴した媒体と視聴秒数が違います。

この問題の正解は、「3. AdNW、  4. Youtube、 5. Twitter 」となります。

先程、一般的なアトリビューション優先順位では広告ID有りのClickがViewよりも常に優先されることを説明しましたが、なぜかこの問題ではYoutubeやTwitterの広告視聴が優先されています。しかも、Youtubeは5秒見ても成果にならないのに10秒見たら成果になり、Twitterは2秒でも成果になるの、不思議じゃないでしょうか?

これは、YoutubeやTwitterは特定条件でViewアトリビューションをClickアトリビューションとして計測させるためです。
Youtubeは、10秒以上の動画の場合は10秒視聴で、10秒以下の動画の場合は完全視聴したとき、ViewではなくClickアトリビューションで計測しています。これはYoutubeに限らずGoogle UAC共通の仕様です。
Twitterは2秒視聴で全てのViewアトリビューションをClickアトリビューションで計測しています

また、ClickとViewのアトリビューションは、優先順位だけではなく有効期間も違います。一般的にはClickが7日まで、Viewが1日までとなっているケースが多いですが、計測ツールの設定や媒体側の設定、広告IDの有無によって変わります。
ちなみにTwitterの2秒でClickアトリビューションを取るという仕様はAPACだけの仕様です。グローバルではありません。元々日本でよく使われていた計測ツールのF.O.XがViewアトリビューションに対応していなかったため、それに追随する形でViewアトリビューションをClickアトリビューションで取り始めたようですが、今となってはこの仕様に正当性はないと私は考えています。

余談ですがYoutubeやInstagramなどと比べてTwitterってやたらアプリの広告多くないですか?ターゲティングの問題もあるかもしれませんが、新規ユーザーでもやはりアプリ広告が多いんです。
これはアプリ広告との相性が良いという媒体特性ももちろんありますが、それよりもアトリビューションによってアプリ広告の効果が良く見えていることが大きいと考えています。(※ 完全な私見です)

そしてもうひとつ重要なポイントですが、GoogleやTwitterのようなAPI連携媒体(*4)は、アトリビューションをViewで取ってるのかClickで取ってるのか、計測ツールで測定することができません。
普通のAdNW媒体でViewをClickで計測しようとした場合、計測ツール側では異常な数のClickになるため、すぐにわかります。ですが、API連携媒体ではClickアトリビューションを飛ばしているViewの数がわからないのです。
API連携はGoogleやFacebook・Twitterなど大手プラットフォームだけに許された連携方法で、日本だと唯一Yahoo!のみがAPI連携をしています。API連携ではこのように裏で何が起こっているのかがわからないため計測ツールには全媒体一律の扱いにして欲しいのですが、なかなかそうはできない事情があります。本筋ではないので触れませんが気になる方は直接聞いてください。

では、冒頭の問題に戻ります。

図1 (1)

ここまでで各媒体のアトリビューション定義・計測ツールの仕様を理解されていたら、なぜTwitterのインストールになるのかわかったかと思います。
まずTwitterの視聴によるClickアトリビューションは7日間有効で、4日後のFacebookのViewアトリビューションより優先順位が高いです。さらに、翌日のAdNWの広告がWeb面のため、広告IDなしのClickとなり、結果として一番優先順位が高い広告ID有りのClickアトリビューションを取っているTwitterの成果となります。仮に最後のAdNWがアプリ面のClickだった場合はAdNWの成果になっています。

このように、API連携媒体は非常に有利な状況であり、広告効果が良く見えるのは当然のことです。
一部にはViewアトリビューションを計測しないという広告主もいますが、API連携媒体は全てViewアトリビューションを取っており、それを一部媒体ではClick扱いとしているため、Viewアトリビューションを取れない非API連携媒体は不利になります。

まとめ


アトリビューション定義によってどれだけ媒体の評価が変わるか、感じていただけたでしょうか。
今のアプリ広告業界は情報の非対称性が大きく、多くの広告主が情報を知らないがために正しいマーケティングが出来ていない状況です。これらを理解している広告主も少なくないですが、それでもアトリビューション条件による有利・不利をマーケティングプランに反映させるのは非常に難しく、理解はしていながらも目をつぶっているケースがほとんどです。

媒体が定めるアトリビューション定義に正解はなく、現状は各媒体が自由に決められます。ただし明らかに広告効果を水増ししようという思想でアトリビューション定義を決めている媒体もあるので、マーケターの皆さんに正しい情報が行き渡りフェアな競争環境になることを願います。

用語整理

(*1) AdNW.. アドネットワーク。ここでは、nendやzucksのような媒体を指します。
(*2) 広告ID.. スマホの広告用識別子(IDFA/GAID)のこと。説明を簡素化するため、アプリ面の配信では原則取得可能で、Web面の配信では原則取得不可能という前提を置いてます。
(*3) View.. 便宜上簡略化して書いてますが、正確にはViewthroughを指しています。
(*4) API連携.. 通常の媒体はアプリ広告の効果計測のために専用のURLを発行しますが、URL発行が必要ない媒体です。アトリビューションの計測方法がURL発行型の媒体とは大きく異なります。

追記

広告ID有りClick > 広告ID有りView(*3) > 広告ID無しClick > 広告ID無しView

こちらの順番に誤りがありまして、正確には

広告ID有りClick > 広告ID無しClick > 広告ID有りView > 広告ID無しView

でした。
何度も各計測ツールなどに確認して執筆したにも関わらず、大事なところで凡ミスしてしまい大変申し訳ございません。

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