「星野トマムを売却」中国企業の"謎だらけの行動" 売却に至った複雑事情、売却先は何者なのか?

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今年も復星国際は欧州の銀行を複数売却するなど、事業売却を続けている。ただし、2022年から「消費ビジネスに集中するため、非中核事業を切り離す」方針は一貫しており、売却している産業は製造業や金融業が中心だ。

では消費ビジネスとは具体的に何か。2024年4月2日、2023年12月期の決算説明会に出席した復星国際の郭広昌会長は、「家庭消費」と「グローバル」をメインセクターに据えると明言した。

特に力を入れているのは、中国人の旅行需要回復を照準にしたリゾートビジネスで、同社は2023年から2025年にかけて、クラブメッドの施設を新たに17カ所オープンする計画を立てている。

豫園商城はキロロリゾートも取得

その1つである「クラブメッド・キロロ グランド」は2023年12月、北海道余市郡赤井川村で開業した。

星野リゾート トマム 中国
クラブメッド・キロロ グランド(写真:クラブメッド・キロロ グランド公式サイトより引用)

同ホテルは2022年冬に開業した「クラブメッド・キロロピーク」に続くキロロリゾート2つ目のホテルである。そしてホテルとスキー場から構成されるキロロリゾートの現在を保有するのは、星野リゾートトマム売却を発表した豫園商城なのだ。

豫園商城が同リゾートを約160億円で取得すると発表したのは、2023年2月と最近のことだ。つまり、豫園商城は親会社の復星国際が非中核事業の売却を進めているさなかに、キロロリゾートを取得している。

復星国際と豫園商城の決算資料を分析すると、2023年に入って復星国際の業績が回復した一方、豫園商城は債務危機が顕在化し始めたことがわかる。

同社は2023年前半の業績は堅調だったが後半に入ると失速し、通年の純利益は前年比45%減少し20億2400万元(約445億円)だった。また、今年1~3月の純利益は前年同期比43%減少し1億8000万元(約39億円)だった。豫園商城は減益の理由を「不動産収益や投資収益の悪化」と説明した。

業績悪化に伴い、債務リスクも増している。豫園商城の今年3月末時点の負債比率は68%。短期負債101億3100万元(約2230億円)を抱えているが、保有現金は91億7100万元(約2000億円)にとどまる。

同社は2023年12月期決算資料で、1年間で資産100億元(約2200億円)を売却したと明かし、今後も負債比率を下げるために非中核プロジェクトから撤退しつつ、資金調達を目指すとしている。2023年は第三者割当増資で最大80億元(約1760億円)を調達する計画を発表したが難航し、2024年5月に取り下げた。

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