「星野トマムを売却」中国企業の"謎だらけの行動" 売却に至った複雑事情、売却先は何者なのか?

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この当時、星野リゾートが中国系企業に売却したことは多くの紙面を賑わせたが、そもそも豫園商城がどのような企業なのかはあまり知られていないだろう。

豫園商城は上海を初めて訪れた観光客がほぼ訪れる有名観光スポット「豫園」の管理を祖業とする、1990年に上場した老舗企業だ。現在は「豫園」ブランドを使って事業を多角化しており、売上高の6割超を占める宝飾品販売を中心に飲食、小売り、リゾートなどを展開する。

星野リゾート トマム 中国
豫園商城は上海を初めて訪れた観光客がほぼ訪れる有名観光スポット「豫園」の管理を祖業とする(写真: Shin@K / PIXTA)

その豫園商城の親会社が巨大コングロマリット復星国際(Fosun)だ。2002年に豫園商城に出資を始め、直近の資料では間接的に60%超の株式を保有する。

復星国際は2010年代に海外の著名企業を“爆買い”した。世界各国のリゾートでホテルなどの施設を運営する仏クラブメッド(2015年)、高級アパレルの仏ランバン(2018年)、他に欧米の金融・保険企業も多数取得し、医療、保険、旅行、製造など多様な事業を手掛ける巨大コングロマリットとして知られるようになった。

親会社の復星国際は資産売却進める

今回の星野リゾートトマムの売却に関する記事のほとんどが、不動産不況を背景に復星国際が資産売却を進めていたことを紹介している。それ自体は事実である。

中国不動産大手「恒大集団」の債務危機が2021年秋に表面化し、中国では信用不安が他社に広がっていった。復星国際に飛び火したのは2022年6月。アメリカの格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが復星国際の格付けの見直しを始め、段階的に格付けを引き下げた。報道によると今は十分な情報が得られないことを理由に格付けは取り下げられている。

信用不安に見舞われた復星国際は2022年、アサヒグループホールディングスから2017年に取得した青島ビールや製造業・鉱山業子会社の株式などを次々に売却した。現地メディアの報道によると、2022年の資産売却額は30億ドル(約4800億円)を超えた。

大規模な資産切り離しや資金調達が奏功し、2023年に入ると復星国際の業績は回復に転じる。2022年12月期に5億4000万元(約118億円)だった純利益は、2023年12月期に13億7910万元(約303億円)に増えた。

ゼロコロナ政策の終了で旅行市場が急回復したことで、クラブメッドの売上高がコロナ禍前の2019年と比べても18%伸び、中国の海南島のホテルの売上高が過去最高となるなど、リゾート事業も急回復した。

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