北米

2024.07.20 17:00

1.5億年前のステゴサウルス化石「エイペックス」、史上最高額70億円で落札

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米ニューヨークのサザビーズで2024年7月10日、競売に先立ちメディア関係者に公開された1億5000万年前のステゴサウルス「Apex(エイペックス)」の化石(Lev Radin/Pacific Press/LightRocket via Getty Images)

1億5000万年前のステゴサウルスの化石が17日、米ニューヨークのサザビーズで競売に掛けられ、化石では史上最高額となる4460万ドル(約70億円)で落札された。落札予想価格の400万~600万ドル(約6億~9億円)を大きく上回った。

発見した古生物学者によって「Apex(エイペックス)」と名付けられた化石は、高さ約3.4メートル、全長約8メートル。サザビーズによれば「ほぼ完全骨格で、驚くほど保存状態が良い」という。

サザビーズは化石の発見から売却まで古生物学者と緊密に協力し、発掘、修復、骨格の組み上げのすべてを記録した。競売会社がこうした取り組みを行うのは初めて。

落札者は、ヘッジファンドのシタデル創業者でフォーブス世界長者番付41位の富豪、ケン・グリフィンだと報じられている。サザビーズによると、グリフィンは化石を米国内の機関に貸し出して公開展示したい考えで、落札後に「エイペックスは米国で生まれた。米国に留まるだろう」と述べたという。

出品者の身元は明らかにされていないが、サザビーズは「著名で尊敬を集めている商業古生物学者」で、本人所有の土地でこの化石を発見したとしている。

エイペックスは、1880年代から化石が多く見つかっている米コロラド州のモリソン層で2022年5月に発見された。英ロンドンの自然史博物館に展示されている「ソフィー」と命名されたステゴサウルスの化石に最もよく似ているが、サザビーズによれば体格はエイペックスのほうが約30%大きい。

エイペックスの落札価格は、「スタン」と名付けられたティラノサウルス・レックス(T・レックス)の3180万ドルを上回り、史上最高額を更新した。
米ニューヨークのサザビーズで2024年7月10日、競売に先立ち公開された1億5000万年前のステゴサウルスの化石「Apex(エイペックス)」(Alexi Rosenfeld/Getty Images)

米ニューヨークのサザビーズで2024年7月10日、競売に先立ち公開された1億5000万年前のステゴサウルスの化石「Apex(エイペックス)」(Alexi Rosenfeld/Getty Images)

次ページ > 恐竜化石の高額落札記録

翻訳・編集=荻原藤緒

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2024.06.26 16:00

レクサスが「ミラノデザインウィーク」にて、美しい体験を心に刻むインスタレーションを開催

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会場の中央には、BEVのコンセプトモデル「LF-ZC」があり、その周囲に光のスカルプチャーが並ぶ。

ミラノデザインウィークでは、家具デザインだけでなく企業展示も話題。今年、レクサスは「Time」というインスタレーションを開催。体験と時間を一組の概念ととらえ、新たな体験創造を提供するというものだ。 


「技術だけで突き進んでしまうと、最後は便利になって終わりです。しかしレクサスが目指すのは、テクノロジーが人をサポートすることで、未来をもっとよくすること。今やテクノロジーは、AIによって人間より早いスピードで物事ができる。しかし本来はインタラクティブ(双方向)な関係でなければいけない。ハードウェアとソフトウェアが交じることで、心が豊かに、そして感情的なものになるのです」と、レクサスインターナショナル レクサスデザイン部 部長の須賀厚一は語る。

レクサスは新しい体験を提供することを追求している。だからミラノデザインウィークは、レクサスにとっても特別な場所になる。インスタレーションの会場となるのは、ミラノの中心部からやや離れたトルトーナ地区にある大規模展示場スーパースタジオ。レクサスでは屋内にて「BEYOND THE HORIZON」、屋外で「8分20秒」という2つの展示を行う。

暗い展示会場に入ると、美しい水平線が浮かび上がる。中央にはレクサスの次世代バッテリーEVコンセプトモデル「LF-ZC」があり、その左右には等身大のスカルプチャーがずらりと並んでいる。

このインスタレーションを手がけたのは、デザイナーの吉本英樹。彼は2013年の第1回LEXUS DESIGN AWARDの受賞者でもある。

巨大なスクリーンに映し出される水平線の情景は、時間の経過とともに変化する。

巨大なスクリーンに映し出される水平線の情景は、時間の経過とともに変化する。

「BEYOND THE HORIZON、すなわち水平線の向こう側には、普通なら海があって、ぐるりと回ってまた陸地がある。しかしその水平線を接線の方向に直進したら、宇宙につながると考えてみた。水平線はとても美しく、そこに佇み、心に訴える。そんな人間の原点に返るような優しさがあります。

しかしその一方で壮大な可能性や奥深さもある。さまざまなかたちで自動車の未来が語られるなかで、レクサスの“次に行くんだ”という強いステイトメントを表現したかった。人が進化するように自動車も進化し、その人だけの自動車が完成するという“Software-defined vehicles”の考え方や、個々のユーザーに合わせた体験や経験を提供するレクサスの“Making Luxury Personal”の考えを表現するために、レクサスLF-ZCを抽象化した化身としてスカルプチャーをつくりました。

人がその前に立つとセンサーが反応して越前和紙に光が走り、和紙の柄が浮かび上がります」と、多くの来場者でにぎわう会場を巡りながら吉本は説明する。

スカルプチャーの発光は一定ではなく、さらに幅30m、高さ4mのスクリーンが映し出す水平線は、日の出から日没へと空の色を変化させる。つまりこの空間の姿は、すべてが一期一会の組み合わせ。それこそが人によって異なる体験へとつながっていく。

このインスタレーションでは、越前和紙や竹といった日本の素材を取り入れた。クラフト×テクノロジーは彼の研究分野のひとつだが、どのような意図があるのだろうか?

「スクリーンやスカルプチャーなどに、1500年も続く越前和紙を使いました。和紙は文化的なアイコンという枠にとどまらず、“職人の技”や“純粋なものづくりの価値”を表現しています。私は伝統工芸に興味があり、工房に見に行くことも好き。

伝統工芸は芸術の世界であり、日本には越前和紙のような財産がたくさんある。日本のブランドだからこそ、その財産を生かすべきだし、レクサスはクラフトマンシップへの敬意は深く、竹を内装材に選ぶなど日本で古くから使われる素材を尊重する姿勢もある。歴史ある素材や文化を大切にしつつ未来へと進むレクサスの姿勢が、最先端のインタラクションをうむのです」(吉本)

BEYOND THE HORIZONでは、会場に流れる音も、新しい体験へと誘う大切な要素となる。音楽を担当したのはAIを駆使した作品制作に積極的に取り組む音楽家、渋谷慶一郎だ。

渋谷は自身のサウンドインスタレーション作品「Abstract Music」を用いて、膨大なサウンドデータから生成された音像が空間を縦横無尽に動き回り、無限に変化する音響空間をつくり出す。同時に、スクリーンに映し出される光の変化に合わせて作曲された10分10秒の音楽が空間を満たしていく。その組み合わせは、偶然性と必然性を含む展開となっている。

「AIが日々の生活に入ることで、人は偶然性に慣れてきている。自分では予測しなかったようなサウンドだとしても、空間の中で聴けばまるで自然と同じように、それが心地よくさえ感じる。プログラムによって変化し続ける音楽というのは、自動車のBGMでは決して得られなかった過激な体験。こうした試みが、ものづくりの発展にもつながると良いと思います」と渋谷は語る。

来場者は美しい水平線と空が織りなす心地よい空間の中で、二度と同じ瞬間が訪れない音楽を聴き、スカルプチャーが表現する光を感じる。何が心に残るのか、それは個人にゆだねられた自由だが、その体験が唯一無二の時間となるのだ。

屋外エリアに展示された「8 Minutes and 20 Seconds」は、マーヤン・ファン・オーベルの作品。作品名は太陽から地球上へと光が届く時間を意味し、太陽光を利用した作品となっている。

屋外エリアに展示された「8分20秒」は、マーヤン・ファン・オーベルの作品。作品名は太陽から地球上へと光が届く時間を意味し、太陽光を利用した作品となっている。


会場となるスーパースタジオは、先鋭的な展示が行われる。

会場となるスーパースタジオは、先鋭的な展示が行われる。


左/吉本英樹◎Tangentチーフデザイナー。

左/吉本英樹◎Tangentチーフデザイナー。1985年、和歌山県生まれ。2010年、東京大学大学院修士課程修了。同年に渡英し、2016年、英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート博士課程修了。2015年にデザインエンジニアリングスタジオ「Tangent」設立。中/須賀厚一◎レクサスインターナショナル レクサスデザイン部 部長。右/渋谷慶一郎◎音楽家。1973年、東京都生まれ、東京藝術大学作曲科卒業。2002年に音楽レーベル ATAKを設立。作品は先鋭的な電子音楽作品から、ピアノソロ、オペラ、映画音楽まで多岐にわたる。


レクサス
https://lexus.jp/

Promoted by レクサス / photographs by Massi Ninni / report by Minako Shimada / text and edited by Tetsuo Shinoda

サイエンス

2024.05.04 18:00

インドの謎化石、ティラノサウルスよりでかい新種の巨大ヘビと判明

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Shutterstock.com

インドで見つかった化石が、文字どおり怪物のような巨大なヘビの新種だったことがわかった。ヘビが苦手な方にとっては今すぐ車の中にでも逃げ込みたくなるような話かもしれない。

4月に学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表された研究によると、およそ4700万年前に生息していたこのヘビは体長が推定11〜15メートルもあった。大型肉食恐竜のティラノサウルス・レックスを上回る長さということになる。ジャンボ機の中で毒ヘビの大群が暴れまわる『スネーク・フライト』というパニック映画があるが、大昔にはジャンボ機の5分の1ほどの長さのヘビがうねうねと這いずり回っていたということだ。

このヘビは、すでに絶滅したマッツォイア(madtsoiidae)科という陸生ヘビの系統に属する。マッツォイア科のヘビは、現在の南米、アフリカ、オーストラリア、南欧、インドにまたがる広い地域に生息していた。およそ1億年存続し、平均気温が28度前後だった地質年代に繁栄したとされる。

新たに確認された新種は、これまでに知られているマッツォイア科のヘビのなかで最大であるばかりか、これまでに生息したあらゆるヘビのなかでも最大級だった。

研究成果を論文にまとめたインド工科大学ルールキー校のデバジット・ダッタ博士研究員とスニル・バジパイ教授は、このヘビの学名を、ヒンドゥー教のシヴァ神の首に巻き付いている神話上のヘビの王と発見国のインドにちなんで「ヴァースキ・インディクス(Vasuki Indicus)」と名づけた。

化石は以前にインド西部グジャラート州の炭鉱で見つかっていた。ダッタとバジパイは椎骨(ついこつ)27点を含む脊柱(せきちゅう)の一部から、これが新種のヘビのものだと特定した。大半の椎骨は保存状態が良く、太古に地を這っていたときと同じ位置にあるものも数点あったという。

各椎骨は長さ約3.8〜6.3センチ、幅約6.2〜11センチと異様に大きく、大きな円筒形の体をしていたことを示唆する。脊柱は完全に成長した爬虫(はちゅう)類のものと推定され、椎骨はもともとは少なくとも800個はあったと考えられるという。
次ページ > 待ち伏せし、獲物を締め上げて仕留めていたと推測される

翻訳・編集=江戸伸禎

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2024.03.08 15:00

伊アルプスで発見された最古の爬虫類化石、「捏造」と判明

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1931年にイタリアのアルプス山脈で発見された「トリデンティノサウルス・アンティカス」の化石。初期爬虫類の進化を理解するための重要な標本と考えられていたが、部分的に捏造されていることが判明した(Dr Valentina Rossi)

1931年、イタリア北部トレンティーノ地方で、極めて珍しい化石が発見された。この化石は後に「トリデンティノサウルス・アンティカス(Tridentinosaurus antiquus)」と命名された。小型のトカゲに似たこの動物は、2億8000万年前の火山噴火で発生した火砕サージ(空気と火山灰が混じった高熱の爆風)に巻き込まれて死んだ結果、軟組織が炭素質の膜として保存されたことで、これまでにアルプス山脈で見つかった最古の体化石(生物の体の化石)となったと、過去研究の一部で示唆されていた。

だが、最新の分析装置を用いた今回の研究では、化石の軟組織と考えられていた部分が本物ではなく、捏造された可能性が高いことが明らかになった。

今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者で、アイルランド・コーク大学生物学・地球環境科学部のバレンティナ・ロッシは「化石の軟組織は希少だが、化石に含まれていた場合は、外見の色、体内の解剖学的構造や生理機能などの重要な生体情報を明らかにする手がかりとなる可能性がある。すべての疑問に対する答えが、まさに目の前にあった。そのため、この化石標本を詳細に調査し、秘密を明らかにしなければならなかった。たとえそれが、知りたくなかったかもしれないことでもだ」と説明している。

紫外線を用いた最初の調査では、紫外線に反応するある種の塗料で標本全体が処理されていることが判明した。化石にニスやラッカーを塗布するのは、かつては普通に行われていたことで、今でも博物館の保管庫や展示で化石標本を保護するために必要となる場合もある。この場合は、粗粒岩の表面にある化石の見た目を良くする試みである可能性が高かった。塗料の層の下で、本物の軟組織が依然として良好な状態にあり、古生物学的に意味のある情報を引き出せることを、研究チームは期待していた。だが、X線を用いた化学分析では、有機物の痕跡がまったくないことがわかった。

イタリア・南チロル地方ボルツァーノにある自然史博物館に常設展示されている「トリデンティノサウルス・アンティカス」化石の複製(D.Bressan)

イタリア・南チロル地方ボルツァーノにある自然史博物館に常設展示されている「トリデンティノサウルス・アンティカス」化石の複製(D.Bressan)

しかしながら、まだ望みはある。化石は完全な捏造品というわけではないのだ。後肢の骨、特に大腿骨が、保存状態は悪いものの本物と思われる。さらには、この動物の背中だったと見られるところに、ワニ類の鱗に似た皮骨板と呼ばれる、微小な骨質の鱗があることが、今回の最新分析で明らかになった。

また、トカゲに似た動物が当時生息していたのは、爬虫類の足跡や柔らかい泥に残された尾を引きずった跡などの生痕化石が見つかっていることで裏付けられている。

二畳紀のドロマイト堆積物に生痕(移動した跡)を残したと考えられるトカゲに似た動物の復元模型(D.Bressan)

二畳紀のドロマイト堆積物に生痕(移動した跡)を残したと考えられるトカゲに似た動物の復元模型(D.Bressan)

今回の研究をまとめた論文「Forged soft tissues revealed in the oldest fossil reptile from the early Permian of the Alps」は、専門誌Palaeontologyに掲載された。論文はここで閲覧できる。追加情報とインタビューはコーク大学より提供された。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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