東京スカイツリーを仰ぐ下町の商店街に夕方、けん玉を手にした小学生が集まる。目の前のカフェには多彩な50本のけん玉が並ぶ。子どもに手ほどきするのはそのオーナーだ。毎夏、廿日市市を訪れる▲けん玉ワールドカップの季節がことしも巡り来た。新たなけん玉文化が始まる―。初回の大会で廿日市市長がそう宣言して10年。今回は27、28日、16カ国・地域の700人余が集結する▲大会の運営団体によると、一度でも選手を出した国・地域は30を超える。海外で練習を積む競技者からは「廿日市行きが夢」との声も届くという。わずかな期間で国内外にしっかり根付いた。その浸透ぶりに驚く▲行政のはやり言葉なら「シビックプライド」か。チーム名の由来や練習拠点が廿日市にある広島ドラゴンフライズも、10年前に国内リーグに加わった。ことしは初めての日本一に沸いた。市民の誇りが一つ、また一つ▲飽きられて地元で作られなくなった時期もあるけん玉だが、競技として人気を盛り返した。大会の会場をのぞくと、剣と玉を空中で回すようなすご技はもちろん、観客の熱狂ぶりにも圧倒される。参加者と観客が生み出す一体感こそ、何とも誇らしい。