作品情報 完結済(全3エピソード) 16,491文字純文学〔文芸〕
最終更新日:2024/03/16 18:10
――金曜日はフライデー、つまり揚げ物の日である。 私がそう宣言すると、当時付き合っていた男が「ダジャレかよ」と鼻で笑ってきた。 あんなのとは早々に別れて正解だったと思うけれど、それから四年、私はすっかり恋愛とは無縁のまま二十七まですくすくと育ってしまった。最近は誕生日になっても両親が「おめでとう」と言ってくれない。いいんだぞ、祝ってくれて。 そんな感じで淡々としたシングルライフを送っていたのだが。 とある金曜日、私がいつものようにトンカツを揚げていると、親友の桜子から電話があった。 『……実は彼にプロポーズされて』 なんと、それはめでたい。 桜子は絵本のお姫様がそのまま飛び出して来たような小顔美人なのだが、恋人である斎藤氏もそれに負けないくらいの色男である。二人とも顔だけでなく性格もめちゃくちゃ良いので、私の口から漏れ出るのはただ祝福の言葉のみである。結ばれるべくして結ばれた、まさに運命の二人だ。 だから……捨ててしまうべきなのだ。絶対に報われない、一方通行の横恋慕など。斎藤氏のような素敵な王子様の隣には、桜子みたいな素敵なお姫様が一番良く似合うのである。