下関市が進める火の山地区の観光施設再編整備計画「光の山プロジェクト」の最初の工事として、山頂にあるあずまや付き木製展望台の解体が22日から始まる。下関出身の映画監督、佐々部清さん(1958~2020年)の代表作「チルソクの夏」のロケ地にもなった木製展望台で、21日までは利用できることから、市は「残り少ない期間だが、せっかくの機会なのでいま一度見に来てほしい」と呼びかけている。
木製展望台は高さ約3・6メートルのあずまやなどを含めた広さ約150平方メートルのウッドデッキで、2001年に設置。「火の山ロープウェイ」の上駅と山頂を結ぶコースの途中に位置し、関門海峡や関門橋が一望できることから、市民に長年親しまれてきた。04年公開の青春映画「チルソクの夏」では、韓国・釜山で開催された陸上競技の大会で出会った下関の女子高校生と釜山の男子高校生が1年後に下関で再会した際、2人で花火を見るシーンで登場している。
再編整備計画では現木製展望台跡地そばに、新たに「ヒノヤマリング展望台」を建設。これに伴い現木製展望台の利用は21日までとなり、22日から9月下旬ごろにかけて解体工事が行われる。新しい展望台は来年度中の供用開始予定。
現木製展望台の下にある明治期築造の下関要塞(ようさい)の指令室跡は同展望台解体後もそのまま残され、近代日本や関門の歴史を物語る遺構として保存されるという。
市公園緑地課の永冨晋一課長は「現木製展望台を残してほしいという声もあるだろうが、全体をリニューアルする中で思い切って整備することにした。新しい火の山を楽しみにしていてほしい」と話した。
火の山の再編整備を巡っては、火の山ロープウェイが11月で66年間にわたる営業を終了し、その後解体されてパルスゴンドラ(固定循環式ゴンドラ)として生まれ変わることになっている。
(石田晋作)