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【夏物語】“師弟”対決に感謝 かつての監督・コーチ


対戦後、熱い握手を交わす武蔵越生の泉名智紀監督(右)と浦和麗明の佐藤隼人監督=17日、UDトラックス上尾スタジアム
 「教え子が躍動する姿を間近で見られることが、監督として何よりも幸せ」。武蔵越生の泉名智紀監督(54)は試合後、晴れやかな表情でグラウンドを去った。17日にUDトラックス上尾スタジアムで行われた全国高校野球選手権埼玉大会の3回戦、武蔵越生対浦和麗明は、監督同士の師弟対決でもあった。勝利した浦和麗明の佐藤隼人監督(40)は試合後、師匠である泉名監督の元に駆け寄り、熱い握手で次戦の健闘を誓った。「いつになっても師弟関係は変わらない。対戦相手をとことん分析し、勝利へ導く戦術をもっともっと学ばせてもらいたい」。師匠に深々と頭を下げた。

 泉名さんと佐藤さんは、東京成徳大深谷高校野球部の元監督と選手。佐藤さんは主将と捕手で活躍した後、国学院大に進学し、野球を続けた。「責任感が強く、チームをまとめる力が優れているので、指導者に向いている」と、泉名さんは佐藤さんの人間性に目をつけ、大学卒業後の佐藤さんを同部のコーチに招聘(しょうへい)した。「いずれは、私の後任の監督になってくれれば」と約8年間、同校で一緒に部員を指導した。

 2014年4月、学校が借りていた野球部のグラウンドを地主に返還することが決まり、同部の休部が急きょ決まった。「こんなことがあるのか」。泉名さんは心を打ち砕かれそうになったが、すぐに現実を受け止め、佐藤さんにこう告げた。「私は残された部員たちと一緒に、最後の夏を戦う。おまえは次の舞台で指導者を続けろ」。佐藤さんは同年、泉名さんの紹介を受けて、叡明高校野球部(旧小松原)の指導者に就いた。泉名さんは、最後の野球部員3年17人を率いて、15年の夏に臨み、3回戦で敗退。東京成徳大深谷野球部の最後の一ページを閉じて、翌年に武蔵越生の指導者になった。

 佐藤さんは浦和麗明(旧小松原女子)の野球部が創部した18年に監督に就任。以来、武蔵越生とは練習試合で何度も対戦してきたが、両校が公式戦で顔を合わせるのは初めて。「お互い手の内を知っているので、やりづらかった面もあったが、今までに経験したことがない『正々堂々』の野球ができた」と試合後、佐藤さんは楽しそうに振り返った。

 「大勢の観客に見守られながら、今の教え子と、昔の教え子の活躍を同時に見られるのはぜいたくな経験。おまえ(佐藤さん)なら、浦和麗明をもっと勝ちに導くことができる」。泉名さんは、佐藤さんの肩をポンとたたいて、次戦に送り出した。
2024/07/18 13:00:00
記事提供:埼玉新聞

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