弁護士の中川勝之です。

 

 9月20日、京王新労雇用延長差別事件(事案の概要は、2018年6月1日のブログ記事参照)の東京地裁判決の言渡しがありました。原告ら3名の全ての請求が却下・棄却されました。

 

建交労京王新労働組合支援共闘会議と京王新労差別事件弁護団は声明を発表しました。

 

弁護士ドットコムが「定年後再雇用 勤続30年のバス運転手が清掃業務に、会社の裁量認める判決…東京地裁」と報じています。

 

京王新労のブログにも写真が掲載されています。

 

 判断の誤りは多数ありますが、雇用延長差別の本質は京王新労及びその組合員に対する不当労働行為ですので、その点にかかわって指摘します。

 

 特に2018年6月1日のブログ記事でも紹介した、

 

「許されるなら中央線の線路に突き落としてください。」

 

についてです。

 

 判決は、

さらに、「許されるなら中央線の線路に突き落としてください。」との記載は、山田元副所長の京王新労に対する強い敵意をうかがわせるものではあるが、前判示のとおり、原告らの低評価には肉声マイク放送や増務に対して消極的であったという根拠事実が存在するのであるから、この記載によっても、原告らがこれらの根拠事実の存否にかかわらず京王新労の組合員であることを理由として低い評価を受けたことが直ちに裏付けられるということはできない。

と判断しています。

 

 長文で誤魔化そうとする、不当判決にありがちな判断です。原告らが主張を根拠付けるために複数の事実を挙げても、裁判所はその一つの事実だけを取り出して「直ちに」原告らの主張は認められないと判断するものです。「許されるなら中央線の線路に突き落としてください。」との記載だけが不当労働行為意思の根拠であると原告らは主張していません。他にも様々な事実を主張しているのですが、裁判所は無視しました。「京王新労に対する強い敵意」はどこに行ってしまったのでしょうか。

 

 ところで、判決の言渡しをした裁判所は、東京地方裁判所民事第19部(春名茂裁判長裁判官、西村康一郎裁判官及び関泰士裁判官)です。春名茂裁判官については、2018年8月16日の今泉義竜弁護士のブログ記事、西村康一郎裁判官については、今泉義竜の同ブログ記事及び2016年11月1日のブログ記事にそれぞれコメントがなされていますので、それらも是非ご一読下さい。

 

京王新労は、東京地裁の不当判決を乗り越えて闘っていきます!

 

 また、京王新労は、中央労働委員会においては賃金・昇進差別事件を争っています(鎌田耕一公益委員(会長代理、東洋大学法学部教授)の忌避申立については、2017年10月1日同年12月1日のブログ記事参照)。10月1日10時から調査期日が開催されます。

 

 京王新労及び弁護団は、雇用延長差別事件、賃金・昇進差別事件に勝利すべく奮闘していきます。

 

京王電鉄らによる雇用延長差別の違法を免罪した不当判決に対する声明

 

2018年9月20日

 

 本日、東京地方裁判所民事第19部(春名茂裁判長)は、定年後の原告ら3名に対する雇用延長差別を容認し、原告らのバス運転士としての労働契約上の地位を認めないばかりか、損害賠償請求も認めない判決を下した。労働者の働く権利をないがしろにする不当判決であり、断固として抗議する。

 本件は、入社以来30年前後にわたってバス運転士として働いてきた原告ら3名について、定年後、希望するバス運転士の仕事を取り上げ、ひたすらバス車両の清掃業務に従事させ、賃金も生活扶助以下の著しい低額で定年前の年収の30%以下とする酷い扱いに対して、原告らがバスの運転手(継匠社員)としての地位の確認と損害賠償の支払いを求めて提訴した事件である。

 このような原告ら3名に対する扱いについて、本日の判決は、「高年齢者等の職業の安定をその他福祉の増進を図る」ことをかかげた高年齢者雇用安定法の趣旨に反する不合理な差別であることを看過し、その違法性を否定した。

 しかも、本件の雇用延長差別は、京王新労働組合(以下「京王新労」)の現職の執行委員長のほか中心的な活動を担ってきた原告ら3名に対する不当労働行為であり、組合としては、労働委員会に救済を申し立てて係争中であるが、原告らは、本訴においても不当労働行為による違法行為として争ってきた。京王新労は、2001年に京王電鉄と連合労組が合意した大幅な労働条件変更を伴うバス部門分社化に反対して結成された労働組合であり、会社から様々な組織破壊、差別攻撃を受けている。職制により作成された会社文書において組合員に対する差別的な査定が指示されたり、組合員について「許されるなら中央線の線路に突き落としてください」とまで記載されるなど、会社から徹底して敵視されている。しかるに、判決は、本件の雇用延長差別について、不当労働行為と認めず、地位確認はもとより、慰謝料の支払いも退けた。原判決は、この点においても、到底容認できるものでない。

 我々は、本判決の見直しを求めて、控訴するとともに、原告らをバス運転士として復職させ、京王新労に対する不当労働行為をやめさせるためにたたかうものであり、会社に対して、争議を全面解決するよう強く求めるものである。

 

                    建交労京王新労働組合支援共闘会議

                             京王新労差別事件弁護団

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<不当判決に屈しない佐々木仁委員長>