選挙運動ネット解禁11年の番狂わせ 東京都知事選で「石丸旋風」

任期満了に伴う東京都知事選は7日、投開票され、事前予想の通り現職の小池百合子氏(71)が3選を果たした。注目の2位争いでは、ネットを最大限に駆使した前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)が予想外の旋風を巻き起こし、蓮舫前参院議員(56)を上回り2位になった。インターネットを使った選挙活動(ネット選挙)が2013年に解禁されて11年が経(た)ち、今後の選挙ではネットをどう利用するかが戦いを左右することになりそうだ。(豊田 剛)
プラカードを掲げて・蓮舫候補者演説を聞く有権者=6日・東京都、新宿駅南口で
プラカードを掲げて・蓮舫候補者演説を聞く有権者=6日・東京都、新宿駅南口で

小池氏を巡っては、4月28日投開票の衆院補欠選挙(東京15区)で支援した候補が惨敗。さらに、学歴詐称疑惑や神宮外苑再開発の問題で批判の矢面に立つなど、苦戦も想定されたが、自公と都民ファーストの会が支援する盤石な組織戦で、現職の強みを生かした。

都知事選に出馬するに当たり6月に立憲民主党を離党した蓮舫氏は、共産との共闘で「立憲共産党」とも揶揄(やゆ)され、勝機を逸した形だ。選挙演説では自民党批判を強めたが、与党批判を前面に出したものの街頭演説に共産党系支持者を組織動員する選挙戦は有権者に支持されなかった。結果は石丸氏に次ぐ3位と惨敗だった。

この結果に身内の立民からも厳しい批判が上がる。小沢一郎衆院議員は9日、記者団を前に今の党執行部を一新しなければ「国民民主党や日本維新の会と話ができない」と、泉健太代表の退陣を要求。また、衆院議員時代に立民に在籍した弁護士の菅野志桜里氏は、自身のX(旧ツイッター)で「『何が原因(敗因)か分からない』幹部たちが、立憲民主党の時代感覚を圧倒的にズレさせている」と書き込んだ。

失敗の具体例として、「民主党政権の失敗を象徴する議員が次々にマイクを握」ったことや、「共産党の存在をベースにした独特のフェス感が一般市民への浸透を明らかに妨げていた」と指摘。その上で、「立憲民主党は、本気で①実質を伴う世代交代②実現可能な対案提起③共産党への選挙依存脱却を果たしてほしい」と訴えた。

小池百合子氏対蓮舫氏の国政における与野党対決構図に割って入ったのが、石丸氏だった。石丸氏の選対事務局長で、選挙プランナーとして多くの選挙を手掛けてきた藤川晋之助氏は、6日の最終街頭演説後、「ネット選挙解禁から10年余り。ニューメディアの申し子が降臨した」と喜んだ。

演説をする石丸伸二氏 =20日午前、東京都新宿区

石丸氏は市長時代から、議員やマスコミを論破するユーチューブ映像が注目を集めたことで、若者を中心としたSNSの世界では知られた存在だ。11日現在のユーチューブのチャンネル登録者は約31万人。小池氏(約3800人)や蓮舫氏(約1万人)を圧倒した。

「選挙戦では最終的に全国から5000人超のボランティアが集まり、演説会場はどこも熱狂的な雰囲気に包まれた。2週間で200回以上の街頭演説を行い、ネットで話題の人物に会ってハイタッチできるということで、人が集まり、それに呼応してメディアも注目した」

こう話す政治評論家の田村重信氏は選挙初日、依頼を受けて石丸氏の応援に入った。田村氏は「テレビ時代のスターが小池、蓮舫両氏だとすれば、インターネットが生んだスターが石丸氏であると実感した」という。この応援は田村氏のXまでも“炎上”(論争の過熱)させる飛び火となり、インプレッション数(ポストを見られた回数)が激増。最大で1300万件を超えた。炎上しても注目数が増えれば、その中に一定数の共感が生まれる。石丸氏は舌鋒(ぜっぽう)鋭い発言がネットに拡散され数々の炎上を起こした。

今回の都知事選結果に戦々恐々としているのが既存政党だ。立民、共産による革新共闘は有権者に支持されなかった。自民関係者も、「表立って小池氏を応援できなかった自公にとっては敗北したも同然だ」と話す。

知事選と同時投開票された都議会補選(9選挙区)は、自民が擁立した8人のうち2人しか勝てず惨敗を喫した。これについて田村氏は、「派閥裏金問題が響き、本来なら勝てるところで負けた」と分析。「どちらの選挙も既成政党にとっては厳しい結果。時代が(ネット主流に)変化したから、政党も変わらないといけない」と指摘する。

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