全国最年少町長28歳は元オリエンタルランド社員 町議経験ナシでも立候補を決意させた「今しかない」町の事情

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高齢者だらけの町から最年少町長

 対話を重ねた町民からは、公共交通手段の充実を求める声が多かったという。町内に鉄道路線がなく、路線バスや予約制のデマンドタクシーなどが整備されているものの、デマンドタクシーは町外へは行けず、「町外の病院や商業施設には行きにくい」といった声が各所で聞かれたという。

 公共交通の不備はいきおい、高齢者の自動車運転免許保有率の高さにも直結する。小川氏によると「埼玉県全体では75歳以上の免許保有率は平均8%程度ですが、鳩山町に限れば50%超という高い数字になっている」という。つまり、自分で運転しない限り、どこにも行きにくいという町の実態が数字に表れている。高齢者による自動車事故がニュースをにぎわす昨今において、この後期高齢者の免許保有率の高さを、公共交通機関の充実でいかに変えていくかは喫緊の課題だ。

 町の人口の多くを占める「鳩山ニュータウン」は開発開始から50年以上が経過。他のニュータウンの例にもれず、高齢化の波にさらされており、埼玉県内では東秩父村と並んで、高齢化率の県内トップを争っている。2025年には高齢化率が48.8%にまで進むとされる。

 加えて「生産年齢人口もこの5年で約1000人減少している」といい、そんな自治体から全国最年少の町長が誕生したというニュースは皮肉に聞こえなくもないが、「全国最年少」といううたい文句が付いて回る限り、対外的な発信のチャンスは増えそうだ。

トップセールスも

「全国最年少の町長になったというのは、選挙の結果を受けてから知った」という小川氏だが、その肩書を最大限に生かすために、トップセールスや発信することに尽力したい覚悟だ。

「もともと鳩山町に住んでいた方や若年層に移住してもらうためには、都心へ通いやすくすること、公共交通機関を充実させることが必要。また町は都心から50キロ圏内にあるが、緑は豊かで静かな町であり、都心からの移住を進める長野県や山梨県などの自治体と環境は変わらない。今やリモートで仕事ができる人が増えたことから週1回程度の通勤で済むような人、家族をターゲティングして移住政策を発信していきたい」

 子育て世代に対しては、「魅力的な学校教育が現状でもすでにある。農業と教育、地域文化と教育、地域コミュニティと教育が掛け合わさり、地域と一体となった教育が町内の小学校の一つで展開されており、他の小学校にも広げていきたい。そのことも発信していきたい」と同様に鼻息を荒くする。

 若年世代だけに、SNSの駆使などはお手の物。現在も町公式のX(旧Twitter)やInstagramなどのSNSがあり、柔軟に対応していくことを考えているという。

 また企業版ふるさと納税などを活用した寄付についても「SNSだけでなく、対面、フェイストゥーフェイスで営業する町長となっていきたい」とトップセールスへの意欲も強い。

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