幼少期の影響で自分に自信が持てないみたいな話を聞くと「もういいよ」と思う。いつまでその話をしてるんだよと思う。そう言うと「あなたに私の気持ちはわからない」みたいなことを言われるが、分かるわけがないだろう。甘ったれるな馬鹿野郎と思う。彼らは一様に、被害者の会みたいな集まりに行って、涙を流しながら身の上を語り、一時的なカタルシスを得てスッキリする。そして再び、被害者に戻る。弱さは武器になる。被害者ビジネスは金になる。トラウマは、自分に酔うための最高の道具になる。

よろしく浸ってんじゃねえよと思う。自分に酔ってるだけじゃねえかと思う。生きていれば人間色々なことがある。大変な目に遭ったのはわかる。だが、自分に酔うのは傲慢だ。「自分だけ」と思っている感じが気に食わない。傷ついた傷ついたと言う人ほど、その弱さが、その陰気さが、そのよそよそしさが、周囲を傷つけていることに気づかない。お前が被害者でいる限り、お前は永遠の加害者になる。自分がされて嫌だったことを、周囲の人間にやり続ける。嫌われたくないとか言う人は、人を愛することができない。自分が嫌いだとか、自分は愛されないとか言いながら、自己愛の沼に嵌って死ぬ。

愛は地球を救うとか言われると「まずは自分を救え」と思う。誰かを救おうとする人間特有の嘘臭さに救われなさを感じる。祈りではなく呪いを感じる。苦しむ人を見て「泣いてもいいんだよ」と言う人がいるが、泣いてもいいんだよってなんだよ。そんなことを言う奴の前で泣きたくはないよ。そんなことより蹴りたいよ。そんなことを言う奴をボコボコに蹴り上げて、ベソをかかせたところで「泣いてもいいんだよ」って言いたいよ。俺は。情けないったりゃありゃしない。トラウマの大安売りじゃねえか。インナーチャイルドだかなんだか知らないが、踊れ。インナーチャイルドごと踊らせるんだよ。

芸術なんて高尚なものじゃない。芸術を高尚なもの、誰かを救うための道具だと思っている人を、私は信用しない。その辺の石ころと同じ。誰かを救おうとすることは祈りではない。呪いだ。誰かの力になろうとすることは優しさではない。マウントだ。救いたいとか傲慢。自分が救われたいだけ。まずはお前が救われろ。映画も小説も人生も娯楽。面白くなければ話にならない。芸術は高尚の真逆。ある種のセラピー。自分は芸術家だと名乗ることは、自分は社会不適合者だと名乗ることと同じ。芸人と同じ。人権はない。人権を差し出す代わりに自由に生きる。くだらない絵画より、一輪の花の説得力。

ローズマリーを乾燥させて、ドライハーブを作ろうとしたが面倒臭くなって途中で燃やした。乾燥させたローズマリーは想像を絶して燃えまくり、セージのような香りがした。だが、セージの五百倍くらい燃え盛り、そのまま焚き火がはじまった。ドライハーブを使って保存の効く軟膏を作ろうと思ったのだが、その逆をやっている自分を見て「いいな」と思った。焚き火は心を浄化させる。何もかも、この手で終わらせることができる。生かそうと思わなくていい。生かそうと考えるから、いつまでも体験を捨てられなくなる。生かすのではなく、生きる。インナーチャイルドだかなんだか知らないが、燃えろ。インナーチャイルドごと燃やすんだよ。