チューリング株式会社 |チューリポ <社員インタビュー Vol.1> 自動運転は人生を賭けるに値するテーマだと感じチューリングに入社した 読み込まれました

<社員インタビュー Vol.1> 自動運転は人生を賭けるに値するテーマだと感じチューリングに入社した 

2024/7/1

  • 社員インタビュー

 大学院を卒業後、東芝に入社。クライアントへのAI活用の提案や全社的な機械学習の共通プラットフォーム開発に携わる。大学院時代から機械学習コンペ「Kaggle」に参加し、最上位の「Kaggle Grandmaster」の称号を持つ。2024年4月にチューリングに入社。

Kaggle Grandmasterの称号をもち、東芝でAI領域の開発に取り組んできた加藤さん。チューリングを選んだのは「人生を賭けるにふさわしいテーマを仕事にしたかったから」だと語ります。自動運転ドメインの知見を貪欲に吸収し、社内のML開発をリードしている彼に、前職での経験やKaggleから得られたもの、チューリングを選んだ理由、今後の展望について聞きました。

東芝の研究開発部門で、クライアントへのAI活用や共通化学習モデルの開発に携わる

ーーチューリングに入社するまでの加藤さんのキャリアについて教えてください。

学生時代から機械学習を学び、その技術を活かせる会社に就職したいと考えていました。当時は「ビッグデータ」がバズワードとなりAIが流行りはじめていた頃です。ただ、まだ機械学習のアルゴリズムに詳しい人はそこまで求められていませんでした。そんな中で、東芝は昔から画像認識に取り組んでおり、機械学習に携わるチャンスだと思って大学院卒業後は東芝のIT系子会社である東芝ソリューションに入社しました。

東芝には9年ほど在籍し、キャリアの前半は東芝グループ外のクライアントにAI活用の提案を行ってきました。後半は、個別プロジェクトの知見から共通化できる全社的な機械学習の共通プラットフォーム開発に携わりました。機械学習のプロジェクトは扱っているデータが違っていても、モデルを学習する仕組み自体は共有できるため、MLOpsやAutoMLの開発を行っていました。最後の1年は生成AIの活用推進にも携わっています。

ーー東芝での仕事を振り返って、今の加藤さんの考え方やスタンスに活きている点を教えてください。

仕事の進め方やステークホルダーの巻き込み方、大きなプロジェクトの動かし方を階段を登るように学べていけたのは幸運でした。大企業でさまざまな先輩やクライアントと接することができ、そこからいいエッセンスを学ばせてもらえました。

また、東芝でさまざまなクライアントの課題と向き合えたことは貴重な経験でしたね。例えば、製造業界のお客さまから異常検知関連の開発依頼があった時は、データを提供してもらい私たちがモデルを開発することがありました。その際、データの質によって提供できるモデルの精度が変わったり、顧客の課題をそもそも解決できなかったりすることがあったのです。さまざまなユースケースに対応したことで、顧客の業務内容やバリューチェーンでなぜ課題が生まれ、それをどう解決するかを俯瞰して見られるようになりました。

大きな組織においてはコンセンサスを取る、エビデンスを残すなどの社内手続きが重要です。大規模なプロジェクトが動く背景や、どんなパワーバランスで成り立っているかを理解できたことで、人やお金の流れが想像できるようになり、社会課題をある種身近に感じられるようになりました。

ソロゴールドとシンプルなアプローチにこだわり、Kaggle Grandmasterになった

ーー加藤さんはいつ頃からKaggleを始めたんですか?

大学院の修士課程1年生の頃から、Kaggleのコンペティションに参加しはじめました。Kaggleにはリーダーボードという順位表があり、上位に日本人が時おり入っているのを眺めながら、「自分もあんな風になりたい」という憧れをもちました。

ーー GrandmasterになるまでKaggleを頑張り続けられたのはなぜですか?

Kaggleを始めたときは Grandmasterという称号はなく、Kaggle Masterが最上位でした。私は社会人1年目のときにKaggle Masterになり、憧れていた人たちと肩を並べられたのですが、途中で Grandmasterという称号ができたんです。当時、日本人のKaggle Masterは20名くらいで、そのうち5名ほどはすぐに Grandmasterに昇格しました。私は称号が変わらなかったので最高位を目指すことにしたんです。

その後、 Grandmasterになるまでは4〜5年かかりました。私は「ソロゴールド」といって、チームを組まずに上位に入ることにこだわっていたので、けっこう時間がかかったんです。ただ、当時大事にしていたのは称号を得ることだけを目標にするのではなく、それにふさわしい実力をつけることでした。

そのため、問題の解き方やアプローチ、勝ち方にこだわりましたね。その過程でさまざまな機械学習の技術に触れることができ、学びも多かったです。

ーー加藤さんが考える「Kaggle Grandmasterのあり方」について教えてください。

私が憧れていた方々は、少ないチャレンジ回数で上位に入ることにこだわったり、自分がどんなテクニックを使ったかを公開したりするなど、周囲にリスペクトされる取り組みをしていました。Kaggleはコミュニティとしての側面もあるので、場に貢献することやそのスタンスは素敵だなと思いましたし、私自身も積極的に情報を共有していました。

また、できるだけシンプルなアプローチでいいスコアを目指していました。もちろんKaggleはあくまでも競技なので、やり方にこだわらずとにかくいいスコアを出したいというスタンスの人もいますし、自分が楽しいと思える取り組み方が大事だと思います。私の場合はやり方にこだわったことで独自の難易度設定ができ、その経験が自分を成長させてくれた気がします。

ーーなぜシンプルなアプローチにこだわっていたんですか?

シンプルなアプローチには汎用性があるからです。さまざまな工夫を組み合わせて複雑なものを作った方が精度は高くなりますが、後から振り返ったときに本質的に何がよかったのかがわかりづらくなってしまいます。シンプルにすることで、「このデータセットの特徴がよかった」など、勝負の決め手がわかるようにしておきたいと考えていました。

その上で大事なのは、データの力を引き出すことです。ヒューリスティックな工夫を場当たり的に実装するのではなく、データの中にある大事な特徴を自動的に生かすモデリングを心がけていました。

ーーKaggleを通してどんなことが身につきましたか?

機械学習やAI系の開発の実装力、アルゴリズムの改善などですかね。狭い範囲ではあるものの自分がグローバルな場でも戦えることが示されたことが大きな収穫でした。Kaggleで上位に行くのはとても大変なことですが、全力を尽くして頑張ればそれなりにいけることがわかりました。この経験は、Kaggleにおいても仕事においても生きていると思います。

チューリングは『We Overtake Tesla』というミッションを掲げていますが、もしチューリングとTeslaのエンジニアがKaggleで対決したら、どちらが勝つかはわからないと思うんです。自動運転を実現するには乗り越えるべきことが多くありますが、頑張りや工夫次第で逆転のチャンスはあります。そういった意味ではKaggleで上位を目指すことと、今チューリングが自動運転の開発に取り組むことには共通点があると感じます。

自動運転は、残りの人生を賭けるに値するテーマだと感じた

ーーチューリングに入社した経緯を教えてください。

チューリングの存在自体は2〜3年前から知っていました。私がTwitter(現X)のスペースでKagglerと話していたときに、CEOの山本一成さんが入ってきて「これから自動運転をやろうと思っている」と話していたからです。その後、DMでチューリングに誘っていただいたこともあったのですが、タイミングがあまり合いませんでした。

東芝には入社1~3年の社員にメンターがつく仕組みがあり、社会人6〜9年目のときにメンターを担当していました。ちょうど、その期間が終わった頃に東芝での仕事に一区切りついたなと感じたんです。

そんなときに、Kaggleのイベントでチューリングの岩政さんと話し、その後チューリングの「オープンオフィス」というイベントに参加しました。そこからAI開発を主導している山口さんがどんなことを考えているかを聞いたり、Kaggle Grandmasterの井ノ上さんにチューリングで働いた印象なども聞いたりしました。

ーー入社式の時に「自動運転は、自分の残りの人生を賭けるに値するテーマだと思った」と話していたのが印象的でした。

前職でも上司やお客さまに評価してもらえていたと思います。ただ、幅広い業種のクライアントの仕事をしていましたし、私の仕事の成果によって会社全体が変わったり、世の中のあり方が変わったりというほどの実感はなかったんです。

一方で、同期には特定のドメインに特化し続けたことでお客さまより詳しい知識をもって、大規模案件の提案をしているような人もいました。ドメインを絞ることで存在感を高めていく人たちが自分と近い世代でも目立ち始めていたんです。彼らを横目に見る中で自分も大きな仕事をしたいという気持ちをもっていました。

それに私がこのまま独身だったら、うちの家系は私の代で最後になるかもしれません。何か大義をもって生きていないと、ご先祖さまに申し訳ないような気がしているんです。少し大げさですが、年に一度の墓参りで「自動運転の実現に向けて頑張っています」と報告できたらいいなと思っています。

ーー入社して少し経ちましたが、会社に対してどんな印象をもっていますか?

一つのイシューに集中できる時間がとても多いと実感しています。前職では常時複数のプロジェクトにアサインされていて、それぞれに定例会議がありプロジェクトメンバーも違っていました。今はチームで一緒に働いていて、朝会をしたらそれ以外の時間はほぼ作業時間なので、ひとつのことに集中できる良さを実感しています。

ーーKaggleのコンペで経験してきたことと、チューリングのEnd-to-Endの自動運転の開発は、どのような違いがありますか?

似ているところもありますが、違う点はデータを作るところから携われることです。Kaggleの場合はデータセットが悪くても、競技なのでそのデータを使うしかありません。一方、チューリングではデータをうまく取れているか、どのようにデータを取得すべきなのかから考えられますし、それが大変なところでもあります。

Kaggleにも一生懸命取り組んできましたが、仕事以外の時間だけで取り組もうと思うと先端的なアルゴリズムを自分で実装したり、使いこなしたりするのは難しいです。しかし、チューリングでは自動運転の開発にリソースを傾けられるので、Kaggleでは実現できなかった大がかりな実装やアルゴリズムの検討もやっていけそうだと思っています。

ーー自動運転開発の難しさについてどう考えていますか?

私自身も勉強のために色んな車を運転したり、自動運転機能を体験したりしています。各社の違いや自動運転の難しさを日々実感しています。自動運転タスク特有の難しさはあるものの、機械学習では品質のいいデータセットを用意して、こういう入力の時にこのアウトプット出すという基本さえ整っていれば、データ次第でうまくいくと考えています。End-to-Endの自動運転の可能性を信じて入社しているので、実現までやり抜きたいと思っています。

ーー現在担当している仕事について教えてください。

現在取り組んでいるのは、Human-in-the-Loopの仕組みづくりです。学習モデルの開発に使う教師データのラベリングを行うとき、これまでのアプローチでは人がすべて行う形でした。ただ、それでは時間とコストがかかりすぎます。そのため、まずは人がアノテーションをし、それを学習したオートラベリングモデルを作ろうとしています。

具体的には、映像の中に車がいる、歩行者がいるなど物体検出をしてラベリングをする仕組みです。そして、オートラベリングモデルで別のデータセットに対して予測を立て、その検出結果が悪かったり、何かズレがあったりしたら、モデルを修正していきます。エッジに搭載する自動運転のモデルと異なり、オートラベリング用のモデルはリアルタイムで動く必要はないので、精度はとにかく高い方がいいです。過去や現在の情報だけでなく未来の情報を使ってもいいので、精度の高いモデルを作ろうとしています。このオートラベリングモデルをしっかり作りこんだら、次は車に搭載するモデルの開発に移っていく予定です。

ーーご自身の展望についても教えてください。

完全自動運転の実現にとことん貢献したいです。私はキャリアアップやいわゆる役職を上げることに対して、これまで積極的ではありませんでした。チューリングでポジションを上げることにも、今はあまり興味がありません。

ただ、チューリングの中では年齢が高い方です。そのため、一時的にリーダーをやるフェーズはあるかもしれません。その時に意識したいなと思っているのは、将来、優秀な20代の若手が重要なポジションについていく流れをつくることです。

チューリングは大きな挑戦をする組織です。そのため、組織として大きな挑戦をすること、そしてそれを長い期間行う仕組みを作ることを意識していきたいと思っています。

HR立石の編集後記

休日は会社の制度(※)を使っていろんな車を運転したり、グルメ活動を楽しんだりとプライベートも全力で楽しむ加藤さん。「実は前職よりもプライベートを楽しむ時間が増えた」と言っており意外でした。

よくカジュアル面談で「自動運転開発の経験がないけど大丈夫ですか?」と聞かれることがあります。ただ、加藤さんを見ているとエンジニアリングの本質やドメインに真摯に向き合うスタンスさえあれば問題ないのだと実感させられます。

一緒に人生を賭けて、このグランドチャレンジを達成していきましょう!

※チューリングではさまざまな車の試乗をサポートする制度があります。休日休暇にいろんな車や自動運転を体験する社員が多いです。

ライター:久保

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