「男女格差」146カ国中125位と過去最低…「日本は本当に変える気あるのか」とG7諮問機関メンバー

2023年6月27日 06時00分
 男女平等の度合いを指数化した世界経済フォーラム(WEF)の今年のジェンダー・ギャップ(男女格差)報告で、日本は146カ国中125位と過去最低の順位となり、世界からの遅れが際立った。先進7カ国(G7)首脳に対し、ジェンダー平等に関して提言する外部諮問機関「ジェンダー平等アドバイザリー評議会(GEAC)」委員の黒田玲子・中部大特任教授(75)は、日本ではジェンダー・ギャップが少子化に深刻な影響を及ぼしていると指摘する。(坂田奈央)

ジェンダー平等アドバイザリー評議会(GEAC) 2018年にG7議長国だったカナダが発足させた。以来、G7議長国によって毎年招集され、議長国首脳にジェンダー平等の推進に向けて提言している。今年は国連大学上級副学長である白波瀬佐和子氏を議長とし、G7各国や国際機関から計14人が委員に選ばれ、5月に岸田文雄首相に提言書を提出した。

◆コロナ一斉休校の混乱は「男女の偏り」が招いた

日本のジェンダー問題について話す中部大の黒田玲子特任教授

日本のジェンダー問題について話す中部大の黒田玲子特任教授

 —日本の男女格差は一向に改善しない。
 「統計は毎年出ているのに、本当に変える気があるのかと思う。日本は女性を『かわいそうな立場』にとどめていないか。女性は世界的にもドメスティックバイオレンス(DV)などの被害を受けやすく、そこからは守らなければいけないが、同時にリーダーとなって社会を変えていくことが重要。そうすれば、また違う社会ができる。この二つの軸が不可欠だ」
 —女性がリーダーになることの重要性は。
 「例えば新型コロナで政府が小学校の一斉休校を決めた際、子どもが家にいるため多くの親が仕事に行けなくなり、負担は結果的に母親たちが負うことになった。母親がストレスを抱えると、子どもにも敏感に伝わる。そこまで考えて対策を取れなかったのは、意思決定の場で男女の偏りが大きく、女性がいなかったからともいえる。海外にも共通しているが、政策決定に女性が関わることは重要だ」
 —男女格差は日本社会にどう影響しているのか。
 「少子化にも大きく関係している」
 —なぜか
 「GEACの報告書では、日本では1日の家事、育児、介護時間が女性は3時間44分なのに対し、男性は40分と世界で飛び抜けて短い。これでは結婚もしたくなくなる。結婚したらすごく幸せになって、子どもができたら本当にうれしいということが伝わらない。経済的支援も大事だが、それだけでは少子化は解消しない。根は深い」
 —意識は変えられるか。
 「女性がリーダーになり、女性を育てるとこうなるという世界の好事例を広く共有すべきだ。SDGs(持続可能な開発目標)の推進を掲げる企業も多いが、教育も気候変動も多様性も17目標すべてがジェンダー問題に関わる。あらゆる分野で女性の参画が必要だ」

黒田玲子(くろだ・れいこ) 東京大教授などを経て、現在は中部大特任教授、東京大名誉教授。生物物理学者。2021年からGEAC委員。



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