量子ビットの誤り(エラー)を訂正できる「誤り耐性量子コンピューター(FTQC、Fault-Tolerant Quantum Computer)」の有望株として、「冷却原子方式」の量子コンピューターが一気に浮上している。既存方式との違いなどを解説しよう。
冷却原子量子方式では、レーザー光によって絶対零度付近である約10マイクロケルビンに冷却した原子(冷却原子)を量子ビットとして使用する。任意の量子ビット間で量子ゲート操作を行うための重要技術が2016年に確立したことから、冷却原子量子方式はここ数年で急速に台頭した。
冷却原子方式は「中性原子方式」とも呼ばれる。中性原子方式という呼び方には、原子から電子を1個取り去ったイオンを量子ビットに使用する「イオントラップ方式」と区別する意図がある。本特集では冷却原子方式の呼称を使用する。
日本でも冷却原子方式への注目度が急上昇
日本では、分子科学研究所(以下、分子研)の大森賢治教授が主導する研究グループが、富士通や日立製作所、NECなどの10社と共同で、冷却原子方式の量子コンピューターの事業化を進めている。また産業技術総合研究所は2024年4月、米QuEra Computing(クエラ・コンピューティング)から64億9999万9999円で冷却原子量子コンピューターを導入すると発表した。これらにより、日本でも冷却原子量子コンピューターへの関心が急速に高まっている。
まずは分子研の手法に基づいて、冷却原子量子コンピューターの仕組みを説明しよう。分子研やクエラのハードウエアでは、真空中に浮かぶルビジウム原子を量子ビットとして使用する。
ルビジウム原子は、レーザー冷却によって約10マイクロケルビンに冷却する(図の〔1〕)。レーザー冷却とは、レーザー光によって真空中にある原子の運動エネルギーを奪う手法だ。レーザー光が当てられたルビジウム原子は絶対零度付近にまで冷やされるが、超電導方式の量子コンピューターで使われる希釈冷凍機のような大型の冷凍設備は必要ない。
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