「数学ミュージアム」に展示されている作品
そのような例のなかで秀逸な作品として、テセレーション作家の一人、中村誠による「サル」を紹介しておきます。
このサルはニューヨークの「数学ミュージアム(MOMATH)」で展示されています。
平面充填可能な五角形の「15タイプ」
五角形のテセレーションにも触れておきましょう。
正五角形のみでは隙間なく敷き詰めることはできませんが、他の五角形では可能なものが多く知られています。特に、すべての内角が180度未満である「凸五角形」については、辺と内角の条件によって、現在までに「15タイプ」の平面充填可能な形状が知られています。
『ペンローズの幾何学』では全15タイプを紹介していますが、そのうちのいくつかを以下に掲載しましょう。
上記のうちタイプ9、11、12などは、高等教育を受けた経歴のない主婦、アメリカのマージョリー・ライスという人が発見しています。ちなみに2023年は、ライスの生誕100周年でした。
「凸五角形」敷き詰めの名作
凸五角形はフレーム自体が難しいため、テセレーションとして凹凸をつけられないタイプもあります。凸五角形の敷き詰め例のうち、テセレーションにより向いているのはタイプ1~6、それにタイプ8、11のようです(本稿では、タイプ1~4とタイプ11を示しました)。
タイプ11などは1種類の図形ではなく、2種類一組の図形でのテセレーションが可能です。
ここでは、凸五角形の敷き詰めに詳しい杉本晃久の作品をお目にかけましょう。2021年の年賀状で使用されたものです。
本記事で取り上げたトピックをはじめ、『ペンローズの幾何学』では、平面図形に現れる対称性や黄金比などのふしぎな性質、最新の発見である「アインシュタイン・タイル(非周期モノ・タイル)」に関する詳しい解説等を紹介しています。
ペンローズの幾何学
対称性から黄金比、アインシュタイン・タイルまで
「存在しない」と考えられてきた図形「アインシュタイン・タイル」が、2023年、ついに発見されました。 非周期モノ・タイルとよばれるこの図形は、いったいどんな形状で、どこがどうすごいのか?
数学者だけでなく、アマチュア愛好家によっても偉大な発見が続々となされてきた平面幾何の世界。 パズル感覚で楽しむことができ、しかも奥行きの深いこの分野で、「次の大発見」をもたらすのは、あなたかもしれない!