ペンローズも驚いた図形
ここで「正六角形をさらに分割したフレーム」をあえて紹介しておきます。といいますのは、この形状が2023年に発見された非周期モノ・タイル(アインシュタイン・タイル)の形状を構成するパーツとなっているからです。
この形状は「ポリカイト(polykite)」、パーツは「カイト(kite)」とよばれています。このフレームは正三角形と正六角形を重ねて作ったものです。
このモノ・タイルと、それが非周期であることの証明を見た何人かの研究者(たとえばロジャー・ペンローズ本人)がこう言っているのを、筆者の一人である荒木が聞いています。
「非周期モノ・タイルがありうるとしても、まさかこんな単純なフレームやパーツで可能だとは思わなかった。まさしく盲点だ(オレが見つけることもできたはずだ!)」と。
今回発見された非周期モノ・タイルについては、この補助線付きの図を見るとわかるように、カイトのパーツが8個ある単純な形状にすぎません。のちに、8個以外にも非周期モノ・タイルになる場合がありえることが判明したのですが、それに関しては『ペンローズの幾何学』の第5章、第6章で解説します。
エッシャーも使った手法
正六角形は、辺の中心点で180度回転しても同じ形なら、その辺どうしを合わせられます。6辺すべて同じなら、どんな向きでも敷き詰めることができますが、おもしろさには欠けるかもしれません。中心点で回転対称になっていない辺については、それとピッタリ合う辺が必要です。
仮に、ある形状で出っ張ったりへこんだりしている辺があると、それとは逆の形状で出っ張ったりへこんだりしている辺が必要になります。ただし、合わせ方によって、凹凸をつける辺の方向/向きが変わりますので注意が必要です。
錯視を利用した“騙し絵”的な作品で有名なマウリッツ・エッシャーは、トカゲのデザインをこの手法でおこなっています。
正六角形は正三角形6個で成り立っていますから、正六角形のテセレーションは、場合によって正三角形やひし形、あるいは台形の変形形状のテセレーションで成り立つことがありえます。
上の図に示すように、正三角形、ひし形、台形が、同時に正六角形の変形を組み立てることもありえるでしょう。