ドナルド・トランプ暗殺未遂事件

2024年7月13日土曜日、現地時間午後6時11分に2024年アメリカ合衆国大統領選挙のためにペンシルベニア州バトラーで開かれた選挙集会において、大統領選の候補者として見込まれている元大統領のドナルド・トランプが演説をしている最中、突如複数回の発砲音が響き、トランプは右耳上部を押さえながらその場にしゃがみ込んだ。その後、シークレットサービスが即座に壇上に上がりトランプを囲みつつ、車まで退避した。トランプは拳を掲げながら会場から退避した。なお、右耳付近から出血をしていた^[10]。会場からは悲鳴が上がり辺りは騒然となったが、その後トランプの報道担当者は「彼は元気で、地元の医療機関で手当てを受けている」と発表した^[11][12]。

トランプの警護を担当していたシークレットサービスの広報担当はXに「7月13日夜、ペンシルベニア州のトランプの集会で事件が発生した。シークレットサービスは保護措置を実施し、前大統領は無事だ。シークレットサービスが調査中で、さらなる情報が入手でき次第、発表する」と投稿した^[13]。

AP通信は、地元の司法当局者の話として「銃を発砲した疑いがある人物は死亡した」と報道している。

また、集会の参加者コリー・コンペラトーレが死亡した。ペンシルベニア州知事のジョシュ・シャピロ（英語版）によって、コリーは銃撃時、妻子をかばい死亡したと報道され、シャピロ州知事に“英雄”と称賛された。^[14]

一命を取り留めたトランプは、自身のSNSに「ヒューヒューという音と銃声が聞こえ、すぐに弾丸が皮膚を突き破るのを感じた」「多くの出血があり、何が起きたか理解した」などとつづった^[15]。また、トランプの陣営は11月の大統領選に向けた選挙運動を継続する方針を明らかにした^[16]。

CNNの報道によれば、犯人は集会会場のすぐ外にいて、建物の屋上から何発も発砲したという。なお犯人はシークレットサービスのカウンタースナイパー部隊及び対襲撃部隊によって殺害されたと報道した^[17]。

ABCニュースは警察当局筋の話として、犯人はAR型ライフルで8発の弾丸を発射したと報じている^[18]。また、FBIの声明によると、「容疑者の身元が判明したと考えているが、「捜査上の非常に微妙な点」であるため名前はまだ公表していない。なお現時点では、犯人は「一匹狼（ローンオフェンダー）だと考えている」と報じている。さらに犯人はトランプが演説していたステージから200〜300ヤード（約180〜280m）離れたビルの屋上からライフルで発砲したが、シークレットサービスの隊員が犯人を即座に射殺したとも報じている^[19]。

BBCはFBIが14日未明、容疑者の名前をペンシルヴェニア州ベセル・パーク在住の20歳男性、「トーマス・マシュー・クルックス」と発表したと報道した^[1][2]。ベセル・パークは、事件現場のバトラーから約70キロ離れている^[1]。なお、クルックスは共和党員として有権者登録されているという^[1]。

トランプは、2024年アメリカ合衆国大統領選挙の共和党候補と目されている。この集会は、激戦州であるペンシルベニア州での票を集めるため、大統領選挙に向けた選挙運動の一環として行われた^[20]。

BBCは、バイデン陣営の選対関係者の話として、選挙運動のすべての発信を一時停止し、テレビ広告の取り下げも早急に進めているとと報じた^[21]。

東部夏時間（EDT）午後6時11分頃、ペンシルベニア州のバトラーで、ドナルド・トランプの集会で銃声が聞かれた^[24][25]。少なくとも3人の集会参加者が銃撃され、1人が死亡、2人が重体となった^[26]。会場の左側の観客席には血痕が確認された。銃撃犯は集会の警備境界線の外にいたため、セキュリティ検査を受けず、銃撃直後に米国シークレットサービスの狙撃兵によって射殺された^[27]。

シークレットサービスの職員がトランプを取り囲み、彼を守った。トランプは数秒間地面に倒れた後、頭部右側面（右耳）から血を流しながら立ち上がり、群衆に向かって拳を振り上げ「Fight! Fight!」と繰り返し叫び、その後シークレットサービスに保護されながら車まで移動した^[28]。シークレットサービスの広報担当者は「事件が発生した」ことを認め、トランプは「安全」であると断言した^[29]。選挙陣営のスポークスマン、スティーブン・チャンによると、トランプはその後すぐに地元の医療施設で診察を受け、スティーブンも「大丈夫」であることを確認した^[30] 。トランプはその後、トゥルース・ソーシャルで「銃弾が右耳の上部を貫通した」と述べた^[31]。

バトラー郡地方検事リチャード・ゴールディンガーによれば、容疑者と観客1人が死亡したという^[32]。少なくとももう1人が危篤状態である^[33][34] 。

シークレットサービスによれば、暗殺未遂に使用されたのはAR15型のライフル銃だったという^[35]。

シークレットサービスの広報担当者は「事件が発生した」ことを認め、トランプは「無事」であると断言した^[36][37]。選挙陣営のスポークスマン、スティーブン・チャンによると、トランプはその後すぐに地元の医療施設で診察を受け、同人は「元気」だったと断言した^[38]。

アメリカ合衆国シークレットサービスは司法省、連邦捜査局、アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局と共同で捜査を主導している^[39]。この事件は暗殺未遂事件として捜査されている^[40][41]。アメリカの元大統領や大統領候補が銃撃されるのは、1981年の大統領だったロナルド・レーガン以来である（レーガン大統領暗殺未遂事件）^[40]。

米CBSテレビは、事件を受けて、ニューヨーク市警が、マンハッタン中心部にある「トランプタワー」などの警備を強化していると報じた^[42]。

襲撃直後、ソーシャルメディア上では、証拠もなく銃撃はディープステート、連邦捜査局、疾病対策センター、ANTIFA、トランスジェンダーの権利活動家によって実行されたという誤った情報が広まった^[43]。バイデンが攻撃を命じたと主張する者もいた^[44]。

大統領のジョー・バイデンはこの事件についての説明を受け^[45]、事件後すぐの緊急会見で次のように述べ、事件を非難した。

わたしの知るかぎり、トランプ氏は元気だ。まもなく彼と話をする予定だ。現在、徹底的に捜査が行われている。アメリカにはこのような暴力はふさわしくなく、不快だ。このようなことを許してはならない。トランプ氏の集会は何の問題が起きることもなく平和裏に行われるべきだった。アメリカにおいてこのような政治的な暴力は前代未聞であり、不適切だ^[46]

—ジョー・バイデン

第44代大統領のバラク・オバマは、みずからのSNSに次のように投稿した。

われわれの民主主義に政治的な暴力の余地はない。何が起きたのか、正確にはまだわからないが、トランプ前大統領が大きなけがをしなかったことにみな安どしていて、この瞬間をわたしたちの政治における礼節や敬意を再び確認するために使うべきだ。ミシェルと私は彼の早期の回復を願っている^[47][46]

—バラク・オバマ

第43代大統領のジョージ・W・ブッシュは声明で次のように述べた。

妻のローラとともに、卑劣な襲撃を受けたトランプ氏が無事だったことに感謝する。そして、シークレットサービスの迅速な対応を称賛する^[46]

—ジョージ・W・ブッシュ

ルーベン・ガジェゴ議員^[48]、 ミシガン州知事グレッチェン・ホイットマー^[49]、 ペンシルベニア州知事ジョシュ・シャピロ^[50]は、政治的暴力を非難する声明を発表した。

イーロン・マスクは銃撃事件後、トランプへの支持を表明した^[51]。

イギリス

首相のキア・スターマーは自身のXに、次のように投稿した。

トランプ氏の集会での衝撃的な光景にがく然としており、トランプ氏とその家族に心よりお見舞い申し上げる。どのような形であれ、政治的暴力はわれわれの社会に入る余地はない^[52]

—キア・スターマー、イギリス首相

イスラエル

首相のベンヤミン・ネタニヤフはSNSに次のように投稿した。

トランプ氏への明らかな攻撃にショックを受けている。彼の安全と、早い回復を祈っている^[46]

—ベンヤミン・ネタニヤフ、イスラエル首相

日本

内閣総理大臣の岸田文雄は自身のXにて、次のように投稿した。

We must stand firm against any form of violence that challenges democracy. I pray for former President Trump’s speedy recovery.
民主主義に挑戦する暴力には毅然と立ち向かわなければなりません。トランプ前大統領の一刻も早い回復をお祈りしています。^[53]

—岸田文雄、日本国内閣総理大臣

中国

中国外務省は14日午後、ホームページで報道官のコメントを発表し、次のように習近平国家主席が述べたとしている^[54]。

中国はトランプ前大統領の銃撃事件を注視している。習近平国家主席がトランプ前大統領にお見舞いの意を伝えた

—中国外務省、習近平

フランス

フランスのマクロン大統領はSNSで以下のように投稿した^[54]。

観客の1人が死亡し、複数人が負傷した。これは私たちの民主主義にとって悲劇だ。フランスはアメリカ国民の衝撃と憤りを共有している。

—エマニュエル・マクロン

 ウクライナ

ウクライナのゼレンスキ―大統領はSNSで以下のように投稿した^[54]。

ドナルド・トランプ元大統領が銃撃されたと聞いて、がく然とした。このような暴力は正当化されるものではなく世界中のどこでもあってはならない。早期の回復を祈ります。

—ウォロディミル・ゼレンスキー

ロシア

ロシア大統領府のペスコフ報道官がテレビ放送にて以下のようにコメントを行った^[54]。

バイデン政権は政治闘争の過程で、トランプ氏を取り巻く雰囲気を作り出し、それが、こんにち、アメリカが直面している事態を誘発した。政治の舞台からトランプ氏を排除しようと、裁判所や検察などを使い、政治的にトランプ氏の信用を失墜させようとする試みが何度も行われた結果として、彼の命が危険にさらされていることは誰の目にも明らかだ。ロシアは政治闘争の過程における暴力を断固として非難する。

—ドミトリー・ペスコフ

国際連合

グテーレス事務総長は国連報道官を通じて以下のようにコメントしている^[54]。

この政治的な暴力行為を明確に非難し、トランプ氏の一刻も早い回復を願っている

—アントニオ・グテーレス

Xでは、トランプ支持者たちはトランプを取り巻く暴力的な言説を指摘した^[55]。