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マイナカード、普及率100%でなくても「ほぼ全員」
知っ得・お金のトリセツ(92)

2022/8/23 5:00
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日本経済新聞 電子版

間もなく8月が終わり、巡り来る9月。9月末には重要な締め切りがあるので心にとめておこう。2万円分のマイナポイントがもらえるマイナンバーカードの申込期限がそれ。9月30日(金)までに申請受け付けを済ませる必要がある。2万円をもらう手続き自体は来年2月末まで続くが、現状のルールでは10月に入ってから作ったカードはポイント付与の対象外。思想信条など、思うところがあって作らない人は別だが「作っても使い道ないんでしょ? 普及率低いっていうし」という人は認識を改めた方がいい。

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■変わる「低普及率」という景色

2016年の制度開始以降長らく「低普及率」が枕ことばだったマイナカードを取り巻く景色は変わりつつある。起爆剤が、国がなりふり構わずお金をばらまいてカード作りへと誘導するマイナポイント事業だ。20年に第1弾が始まる前、カード普及率はわずか17%と「6人に1人しか持っていない」状況だった。それが約1年半の第1弾期間中にカード交付数は3000万枚近く増加し、普及率は40%を超えた。

仮に今回のマイナポイント第2弾でも同じくらいの上乗せ効果があるとする。すると今年6月頭の数字は交付枚数5660万枚(普及率45%)なので3000万枚分が加わると8660万枚という数字になる。普及率は68%だ。

■100歳以上の男性は99%が保有?

ちなみに当然だが普及率の分母は日本の人口約1億2660万人、分子は交付枚数で計算する。総務省も毎月、同じ基準の計算結果の数字を発表している。ただし言葉使いは微妙に異なる。「人口に対する交付枚数率」だ。

それが何か?という感じだが、お役所が律義に使い分けたがる以上、そこには理由があるもの。手掛かりのヒントが年齢別の普及率にある。総務省は5歳刻みの年齢層別、男女別の交付実績も発表しているが、「100歳以上男性」の欄を見てみると、その数字なんと「99.1%」。普通に考えると「100歳以上の男性はほとんどの人がマイナカードを持っているのか!」と驚いてしまうが、さにあらず。分子の交付枚数は死亡者の分も含んだ累計枚数である一方、分母の人口は生存者数。もともと少ない「男性の百寿者」を分母にすると比率が高くでてしまう計算上のトリックだ。

■普及率100%でなくても「ほぼ全員」扱いされる日が来る

何が言いたいかというと、我々マスコミも含め今まで指標にしてきたマイナカードの普及率が意味を持たないフェーズが近づきつつある事実だ。政府はかねて今年度末までのマイナカード普及を目標とし、閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」でも「令和4年度末までにマイナンバーカードがほぼ全国民に行き渡ることを目指す」と書く。ここでいう「ほぼ全国民」は「ほぼ普及率100%」を意味していないわけだ。

では何%なのか? マイナンバー制度に詳しい野村総合研究所の梅屋真一郎制度戦略研究室長が挙げるのが運転免許証だ。「マイナカードも『成人のうちかなりの人が持つ』免許証と同等程度に浸透すれば十分意味ある普及率」とみる。16歳以上人口に占める免許証の普及率は約7割。マイナポイント第2弾が終了するころにはそのレベルが見えてきつつある。

つまり来年には「ほぼほぼ国民全員に浸透した」前提で物事が加速することが予想される。当面の焦点が健康保険証の機能。今はマイナカードを保険証化することもできるが、病院や薬局で従来型の健康保険証を利用する自由も認められている。一方、重点計画では「保険証の原則廃止を目指す」と明記されており、来年以降「マイナカードがほぼ浸透したから保険証は廃止ね」の動きが進みかねない。しかし保険証を命綱に暮らす高齢者が「保険証はマイナカードと一体化しました」というファクトをすんなり受け入れられるだろうか……自分の親に鑑み、不安しかない。

山本由里(やまもと・ゆり)

1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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