岡部エツ『怖いトモダチ』 amzn.to/4cUR4EY ふと見かけたウェブ記事で気になって購入。自己愛性パーソナリティ障害をテーマにした小説で、剽窃事件がストーリーに絡むので研究資料として読んだんですが、いやなんというかすごい小説でした。いまだに頭がぐるぐるしている

サイコパス的な主人公？のエッセイストが周囲の人々の感情をコントロールする様を、芥川龍之介の「藪の中」のように周りの人々の語り（と本人のブログ記事）により描くのだけど、俯瞰視点が存在せずオープンエンドの結末で「誰がまともなのか」が宙吊りにされる感触がある

主人公の中井ルミンはその自己愛に基づく他者操作により周囲の賞賛とその裏での憎悪を同時に集めるのだけど、賞賛の声も憎悪の声もどこかしら何かが「変」で、読むうち明らかに異常であるはずのルミンが下手したら「まとも」にすら見えてくる。読んでて自分の「正常」が揺らぐ感覚が怖い