2024年6月17日に不動産小口投資商品「みんなで大家さん」運営元に東京都、大阪府から行政処分が下され、大きな話題になった。
日経不動産マーケットの6月21日付の情報によると同日午後5時からの24時間で投資家470人あまりから解約の申し入れがあり、解約請求の総額は28億円以上にも及んだという。
この処分を受けて6月28日には不動産特定共同事業法(不特法)に詳しい日本橋くるみ行政書士事務所の石井くるみさんが緊急セミナーを開催した。不特法に関わる事業者向けの内容だが、投資家にも大きな影響のある内容である。内容を簡単にご紹介しよう。
なぜ、行政処分を受けたのか
くるみさんによるとセミナーの目的は3つ。ひとつはなぜ、今回行政処分を受けたのかを推測や憶測ではなく、正確に理解するということ。
2つ目は今回の行政処分を受けて監督官庁、業界にどのような影響が考えられるのか、そして3つ目は今後、事業者はどうすればよいのかという点だという。
まず、今回の行政処分について。ご存じの通り、「みんなで大家さん」は不動産特定共同事業法(不特法)に基づいて組成された、個人投資家向けの不動産ファンドである。
事業者が不動産を取得する資金を一般投資家から募り、それを運用して上がった利益を投資家に分配していくというものである。
「みんなで大家さん」は100万円からの小口商品となっており、100万円を出資するとそれに対しての配当が年6回。配当は年に7%と非常に高利回り。くるみさんは広告を見て、ブランディング、マーケティングの巧みな会社だなという印象を受けたという。
「預金とは言っていませんが、投資する側からすると預金感覚で始められ、しかも年に6回の配当があると広告しています。年金を頼りにするシニア世代からすれば、年6回の配当が奇数月に支払われる商品を選択すれば、偶数月に支給される年金と合わせて、毎月、何かしらの入金があることになります。テレビCMも行っており、高齢者向きのマーケティングに熱心な会社だなと以前から思っていました」
運営に当たっているのは共生バンクグループに属する複数の会社。共生バンクの100%子会社にあたる都市綜研インベストバンク株式会社の、さらに100パーセント子会社にあたる都市綜研インベストファンド株式会社 (以下、都市綜研ファンド)が不特事業のいわゆる1号事業者で、「みんなで大家さん」シリーズのファンドの営業者、ファンドを組成して運用している会社に当たる。
それとは別に「みんなで大家さん」の販売だけを行っている会社が別にあり、それがみんなで大家さん販売 株式会社。いわゆる2号事業者になり、こちらは東京都から許可を得ている事業者。前者は大阪府になり、それぞれに行政処分を受けたことになる。
ちなみに都市綜研ファンドは2012年には60日間の業務の全部の停止、2013年にもまた60日間の業務の一部の停止という行政処分を受けており、2013年にも処分の取り消し訴訟を行っている。
過去に行政処分を受けはしたものの、事業は継続、2017年からは「みんなで大家さん」伊勢シリーズの運用を始めている。今回処分を受けた成田シリーズの運用が開始されたのは2021年。現在18号まで組成が行われており、今回の処分で指摘を受けたのは2023年秋に運用を開始した成田16号だ。
成田シリーズは成田空港近くで計画される複合開発プロジェクト「GATEWAY NARITA」の用地、45万m2強の一部を対象とするもので、想定利回り年7.0%、運用期間5年、出資金1口あたり100万円という条件で募集されている。
こうした説明に続き、くるみさんは「みんなで大家さん」の数字的な分析をしてくださったのだが、そこには公表されている数字からでは分からない謎があった。
たとえば2023年3月末の都市綜研ファンドの賃借対照表をみると、資産として約2000億円相当の土地を保有していることになっており、その多くが成田の土地と思われる。
同社はそれらの土地を1㎡あたり171万円前後で購入しているのだが、開発地に近い場所の公示地価は1㎡あたり2470円。同社の購入価格は公示地価の692倍にも及んでいる。
「私の事務所が東京都中央区日本橋、徒歩圏内に 日本橋三越、日本橋高島屋、日銀などがある地域なのですが、このあたりの公示地価がちょうど1㎡あたり170万円。それよりも高い金額で成田の土地、14万㎡を取得していることになります。
投資期間の満了後、1号事業者である都市綜研ファンドは土地を売却して得た金額をもって、投資家に元本を返還します。土地の売却価格が1㎡あたり171万円を下回ると損失が生じて元本割れとなるリスクがありますので、果たしてこの土地が最終的に1㎡あたり171万円で売却できるかどうか、投資家の方々は非常に心配されていると思います」
また、同社らが大阪府と東京都に対して業務停止処分の取り消し請求を行っており、それに対して東京地裁、大阪地裁がいったん行政処分を停止するという判断を下しているのだが、その決定書からもいくつか謎な点が読み取れるとくるみさん。
「そもそも土地の仕入れ価格がいくらだったのかがとても気になる部分になります。成田16号の土地は、都市綜研インベストバンクとみんなで大家さん販売が買って、都市綜研ファンドに363億円で売却していますが、そもそもの土地の仕入れ価格はどれぐらいだったのか。
おそらく、都市綜研インベストバンクとみんなで大家さん販売の2社に莫大な売却益が出ていると思いますが、そうすると法人税等は適切に納付されたか、税引後の売却益はどこに留保されているかという2つ目の謎が出てきます」
聞いている間に5つもの謎が噴出した。決定書は公開されているので誰でも読めるが、素人が読んでも問題がどこにあるのかは分からない。なるほどと思いながら聞いた。
さて、本題の行政処分だが、理由は不特法違反。具体的には、
① 建設計画の大幅な変更に伴う資産価値や収益性への影響を投資家に十分説明をしなか
った、
② 本来は開発許可の対象ではない土地を誤って書類に記載し、この情報を基に勧誘や契
約の締結を実施した、
③ 造成工事完了後の形状や構造を記載すべきところ、完了前の形状を記載していた、
などが理由になっている。
率直なところ、これでは軽微な書き間違いと主張されそうな内容で、実際、都市綜研ファンドとみんなで大家さん販売は大阪府と東京都に対して業務停止処分の取り消し請求を行っている。
これについてはくるみさんは前述の決定書などから想定される悪いシナリオに言及しながらも「今回の行政処分は説明書類の誤記載といった表面的な指摘にとどまっており、土地の取得価格や賃料の妥当性といった、投資家保護の観点から重要となる本質的な視点が欠けている」とした。
つまり、不動産ファンドへの投資においては、運用期間終了後の不動産の売却価格が、もともとの取得価格を下回ると元本割れとなるリスクがあるところ、成田シリーズでは1㎡あたり171万円と近隣相場よりも高く設定された取得価格や賃料が、元本割れのリスクを高める本質的な問題だということである。
だとすると、こうした商品を利用する側は何を目安に事業者を選べばよいのだろうか。くるみさんは事業者に向けてコンプライアンス面で遵守すべき3点を示した。ひとつは契約前書面には正確を期すこと、分別管理を徹底すること、そして不動産の取得価額、賃料などファンドを構成する各価額の妥当性を検証する体制の整備である。
投資家サイドとして自ら調べられるのは最後の各価額の妥当性だろう。国が公表する地価公示などの情報と比較すれば、今回の成田の土地の取得価額には実勢と大きな差があることは個人でも調べられるし、実際にインターネットでは価格の妥当性に疑問を呈する情報もあった。
儲け話と聞くと利回りに目が行くが、そのベースとなる土地の取引価格や賃料が妥当なものであるかどうかは、分かる範囲で確認してみても良いのかもしれない。
また、行政処分自体はいつのものであっても検索は可能である。それを考えると、儲け話、特に美味しい話については注意をすべきということだろう。