トランス女性の性別変更「手術なし」で認める 高裁、外観要件満たす
出生時の性別は男性で、女性として生活するトランスジェンダー(トランス女性)が、戸籍上の性別変更を求めた家事審判の差し戻し審で、広島高裁(倉地真寿美裁判長)が10日、性別変更を認める決定を出した。手術なしで男性から女性への性別変更が認められるのは極めて異例で、トランス女性に手術なしで性別を変更する道を開く司法判断となった。 今回の家事審判では、2004年施行の性同一性障害特例法が定める性別変更の5要件のうち、「変更する性別の性器に似た外観を備えている」(外観要件)の解釈が焦点となった。 高裁決定はまず外観要件の目的について、公衆浴場など性器が他人の目に触れる場所で生じる「社会生活上の混乱の回避」にあるとして、正当性があると指摘した。 だが特例法の施行後、医学的な検討を経て、手術が必要かは人によって異なるとされている点などを重視。性別変更には常に手術が必要と解釈すれば、意思に反して体を傷つけられる手術を受けるか、性別変更を断念するかという二者択一を迫ることになり、「過剰な制約で違憲の疑いがある」との判断を示した。 その上で外観要件について「他人が見て特段の疑問を感じない状態であれば足りる」との解釈を示した。申立人は手術を受けていないが、ホルモン投与で女性的な体になっているとして外観要件を満たすとし、女性への変更を認めた。
朝日新聞社