郊外に買いに行くのが大変、量が多い、会員費が高い……これらコストコ商品購入のハードルを取り除くサービスが2月下旬、スタートする。「小分け」や「詰め合わせ」など客のニーズに合わせて商品をカスタムし、指定の時間に自宅まで届けるという。スタートアップ創業者に話を聞いた。
コストコ商品を「小分け」や「詰め合わせ」に
コストコ専門のネットスーパー「SocToc(ソックトック)」を立ち上げたのは、大里健祐さん(32歳)だ。運営は、ネット注文専用の倉庫型店舗「ダークストア」形式で行う。
客からネットで注文を受けた商品を、スタッフがコストコで購入。トラックで店舗兼倉庫である東京都内の拠点に運び、仕分けなど必要な作業をした上で、客が指定した時間に届ける仕組みだ。
サービスのポイントはこの「仕分け」にある。36個入りのパン、1キロ超のチキンなど、コストコのウリであるボリュームたっぷりの商品は、1人暮らしやカップル、少人数の家族には、多すぎるとの声もある。
そこでソックトックでは客の注文に合わせて、「ディナーロールを半袋だけ」という「小分け」や、「ピザをハーフ&ハーフで」など「詰め合わせ」に対応する。
郊外の店舗に赴くことが難しいユーザーに向けた「買い物代行」や、大容量の商品を小分けやバラ売りにして店舗で販売する「再販店」はこれまでもあったが、ソックトックは両者の「いいとこ取り」サービスとも言える。
コストコ「専業」でも、コストコ「非公認」
ソックトックは上記サービスの多くと同じく、コストコ「非公認」。
こうした小分けや詰め合わせの作業をするために、食品衛生法の「そうざい製造業」の許可を取得した。
小分けや詰め合わせた結果として余ったものは、「スタッフが美味しくいただく」(大里さん)つもりだという。
注文を受けてから仕入れるため、一般的なスーパーよりは廃棄量は少ないと考えているそうだが、将来的には余った商品を販売することも検討する。
値段は本家より「3割高」
気になる商品価格だが、コストコと違い年間4840円(税込)の会員費はかからない一方で、小分け作業などの人件費や梱包する箱などの費用を上乗せするため、コストコより25%から30%ほど割高になる見込みだ。
まずは東京都内にダークストアを1店舗構えて、杉並・練馬・中野の3区からサービスを始める。近いうちに東京全域をカバーするのが目標だ。
商品ラインナップは生鮮食品から日用品まで幅広い。
サービス開始は2月下旬を予定しており、現在1万人近くの会員登録があるという。ユーザーの内訳は、1人暮らしやカップルが半数、残り半数は子どもがいる3〜4人家族だ。
首都圏の潜在的なユーザーを掘り起こす
大里さんが起業したのは2022年9月。翌月にEast Venturesや個人投資家から、第三者割当増資で3500万円を資金調達した。これまで複数の企業でCTOを務めていたが、
「20代前半から漠然とですが、起業したいと思っていました。自分が誰よりも情熱を持っている領域は何か考えたときに、コストコだ!と。当時から月2回は通っていましたから」(大里さん)
コストコの日本国内の店舗数は31にのぼる(2022年6月時点)。ソックトックが狙うのは、首都圏の潜在的なユーザーだ。
「日本のコストコ1店舗あたりの売り上げは200億円ほどだと試算しています。すでに利用している人だけでこの規模なので、移動やボリューム、会費などで尻込みしていた人たちを取り込むことができれば、年間100億円超の売り上げが立つはずです」(大里さん)
100億円というのはこの市場においてどの程度の規模にあたるのか。
ダークストアはネットスーパーの業態の1種と見ることができる。例えばスーパー大手のイオンの場合、2022年2月期にはネットスーパー売上高が750億円に達した。この10分の1程度の規模、ということになる。
富士経済の調べによると、イオン決算と同期の調査にあたる2021年の国内ネットスーパー市場規模は2470億円。仮に100億円の売り上げとなると、国内市場の4%を占めることになる。1%の規模であれば25億円程度にとどまり、「年間100億円超の売り上げ」自体は相当高いハードルであるのもまた事実だ。
リスクのおかげで大手競合がいない
もちろん、ライバルも多い。前出の買い物代行業者や再販店に加え、デリバリーの「Uber Eats」や「Wolt」でも購入できる。生鮮食品を扱っていない、配送地域が限定的などの縛りはあるものの、「コストコに特化したEC」もすでに複数ある。
何より一番の競合は“本家”だろう。コストコが同様のサービスを開始する可能性についてたずねると、こんな答えが返ってきた。
「コストコは日本に上陸して20年超、『卸し』のスタンスを貫き続けている。やるならもっと早くにやっているんじゃないかなと。
もちろん同様のサービスを提供する可能性もありますし、それは大きなリスクの1つです。一方で、そのリスクのせいで大手企業が参入しないというのはメリットでもある。コストコ1本足打法というクレイジーな事業は、スタートアップだからこそできたことです」(大里さん)
厳しい市場、生き残れるか
取材当日、飲料や乾麺、日用品が並び始めたダークストア店内は、商品写真の撮影をするスタッフや、ガスの契約をする作業員で慌ただしかった。
デリバリーはfoodpandaやDiDi Foodの撤退からも分かるように、厳しい市場だ。加えて、配達トラブルも少なくない。
まずは1万人近い登録者に、満足のいくサービスができるか。大里さんの挑戦が始まる。
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