前回、メインタワー上層部に位置する管理区画へ移動する一行。
道中でラーク達はウォルターに居住区エリアの一室で発見した写真を見せた。
この写真を見たウォルターはルビコン3へ訪れた理由を話す決断をする。
一行は上層部へと繋がるエレベーターを経由し管理AIが設置された部屋へ入出した。
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メインタワー上層部の管理区画…
ザイレムを管理する独立型AIが設置された室内。
室内は一見すると司令室に近い造りになっている様だ。
「ここが管理区画?」
「ああ、あの頃と変わっていない。」
「ウォルターはここも知っているの?」
「子供だった俺にとっては遊び場の一つだ。」
「…」
ラークとフェアリーに説明するウォルター。
その様子にレイヴンも不思議な感じを感じ取っていた。
「俺が居たのは管理AIが導入されて少し経った頃までだ。設置予定場所が変わっていなければこの部屋の筈だが…」
ウォルターが知る情報の後に室内の電源が自動で入った。
同時に管理AIより話しかけられた一行。
『お待ちしていました。』
「久しぶりだな、マナ。」
『ええ、半世紀ぶりでしょうか…ウォルター。』
ウォルターは管理AIことマナに再会の挨拶を交わした。
その様子からウォルターとマナは友人らしい。
「早速だが、我々をここへ呼び寄せた理由を話して貰いたい。」
『既に察しているでしょうが、コーラルとアルカナに関する事です。』
「コーラルとアルカナだと?」
「その接点とは一体?」
『順を追って話します。』
ミシガンとスネイルの質問を含めて管理AIのマナは語った。
『まず、各所で発生しているコーラル奔流は知っていますね。』
これはルビコン3に内包された集積コーラルが惑星内に留められなくなっている状態。
この状態が続けば…アイビスの火以上の大災害が引き起こされます。
そこで我々観測者はコーラルの流れを観測し被害を防いでいました。
ですが、それも付け焼き刃…いずれ始まる崩壊を止める手段に至っていません。
手段としてコーラルを全て焼き払うと言う提案を観測者内で話し合っていました。
理由としてコーラルは企業も封鎖機構もアルカナも狙っているからです。
企業は純粋なエネルギーとしてですが、封鎖機構とアルカナは違います。
封鎖機構はコーラルを監視すると言う名目であるAIの管理の元でルビコン3を封鎖していました。
ここで、そのAIとアルカナの目的が繋がっていきます。
彼らの目的はコーラルリリース。
それはバスキュラープラントを経由しルビコン3のコーラルを開放し全宇宙にばら撒く事。
コーラルは人の意思を伝達する事は勿論。
その特性からACと言う機械に憑依する事で肉体を手に入れる事が可能なのです。
彼らは全宇宙にコーラルを広める事で全宇宙を管理する目的だと判明しました。
これに同調するアルカナですが、彼らはその武力によって永遠の闘争を望んでいます。
コーラルリリースによって全宇宙にばら撒かれれば現存する人類の全滅は免れません。
我々はコーラルを全て焼却する方法しかないと判断を迫られていました。
ですが、兆しはあります。
『私はコーラルを知覚する子供達の協力の元、コーラルを鎮静化出来ないか模索しました。』
アイビスの火以降の半世紀の間に情報を集めた結果。
私はある結論へと辿り着きました。
『現在のコーラルは機械で言う熱暴走状態ではないかと…?』
それを立証する情報も集めています。
私は秘密裏にコーラルコネクターとなった子供達が冷凍保存されていた施設を無人ACとMT部隊で襲撃。
子供達を救出する事に成功しましたが、アルカナの追撃を避ける為に航行艦で宇宙へ逃がしました。
この時に希望となるACの建造も並行で行われる様にセットして…
ですが、この事をアルカナが見逃す程…甘くはありませんでした。
彼らは子供達の眠った調整槽に自壊プログラムと言う仕掛けを施していたのです。
これにより多くの子供達が死亡し航行艦も進路を失い彷徨う事となりました。
私達の希望は潰えたと思われました。
『その絶望の中でも貴方達は生き残りました。』
それがラークとフェアリーです。
貴方達に集積コーラルとの対話をお願いしたいのです。
二人のACは熱暴走に陥ったコーラルを爆発エネルギーだけを抜き取り鎮静化させるドライブを内蔵しています。
『最後の希望…コーラルドライブを起動させる鍵は貴方達なのです。』
マナは静かに告げた。
=続=
次回、引き続き管理AIとの対話。