ティンカーベルの子   作:宵月颯

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ザイレム探索・真相篇


洋上・7

前回、メインタワーの居住区エリアにて五花海によって発見された資料。

 

その中に「コーラルコネクター」と記載された計画書を知る事となった。

 

それが差し示すモノは…

 

 

******

 

 

「コーラルコネクターって?」

「?」

「私の予測になりますが、これがラークとフェアリーに関係しているのではないでしょうか?」

「僕達の?」

「そうなの?」

「そうと決まった訳ではないですが…コーラルを感知する能力に関連していると思いますよ?」

 

 

まだ確証は無いと五花海はラークとフェアリーに説明し続けて資料捜索を提案した。

 

 

「此処に記載されているのはあくまで計画書…恐らくこの研究資料が何処かに残っている筈です。」

 

 

五花海の予測通りならメインタワーの何処かに研究結果を収めたライブラリーがある筈である。

 

だが、上層区画へのエレベーターは止まったまま…

 

向かうにしても別の入り口を探す必要がある。

 

 

「もしかして隠し部屋でもあるのかしら?」

「これだけ広いメインタワーだ、あっても可笑しくはないだろう。」

「ただでさえ広い場所をどうやって…」

「…」

 

 

ローズネイルらもライブラリーが隠し部屋の様な場所に秘匿されていると推測。

 

だが、この広いメインタワーをくまなく探すにも人員不足。

 

ECMフォグを解除後、この都市自体が突如通信遮断を起こしていた。

 

定期連絡が出来ない為、今頃…同盟部隊から追加の調査部隊が送られているだろう。

 

 

『レイヴン、先程インフォメーションよりメインタワー内部の見取り図を発見しました。』

「…」

『ええ、他の皆さんの言う通り…タワー内部の見取り図以外の区画が隠されていました。』

「…」

『はい、その秘匿された区画があるのはこの部屋の様です。』

 

 

メインシステムへの接触を続けていたエアから交信が入ったレイヴン。

 

接触と同時進行でメインタワー内部の見取り図を発見し秘匿された区画があると説明。

 

更にその区画が現在居る部屋に隠されていると話していた。

 

 

「…」

「そうね、レイヴンちゃんの言う通り…怪しそうなこの部屋から探しましょうか。」

 

 

レイヴンはローズネイルらに「資料が見つかった部屋から探してみては?」と提案。

 

 

「その前に散らばった資料をどかす必要があるな…」

 

 

オキーフの言う通り、室内は先程のラークの突撃で無造作に置かれた資料の束が飛び散っていた。

 

手分けして室内の探索を行う為に資料を片付ける事から始まった。

 

 

「それにしてもすっごい量だね。」

「うん。」

「書類に刻まれたマーク…恐らくはルビコン技研からの調査結果だろう。」

「またその技研?」

「ザイレムも研究機関の管轄として利用されていたのなら経過報告が入って来てもおかしくない。」

「だからこんなにいっぱい書類があるんだ。」

「うん、難しい事が書いてあって分からない。」

 

 

専門用語やら研究結果やらでチンプンカンプンなラークとフェアリー。

 

その多くはお子様に解読は少々無理がある内容であった。

 

 

「そこは後追いの専門家達に任せましょう、アタシ達の目的は隠し部屋があるか探す事でしょ?」

「これで全部の様です。」

「しっかし、どんだけ山積みにされてたんだ?」

 

 

先程の室内から運び出された資料の山。

 

ある程度は仕分けして置いてあるが、電子化されていない書類を含めると膨大な量なので何とも言えない。

 

一行は捜索の邪魔になるものを一度撤去した室内を再度捜索。

 

だが、デスクに置かれた電子端末に日誌が遺されているだけでめぼしいモノは発見で出来なかった。

 

オキーフが電子端末にアクセスし内容を確認していくと…

 

 

「どうやらこれは…ナガイ教授の助手とやらが記述した日誌らしいな。」

 

 

研究内容までは書かれていないが、行ったとされる計画の一覧表が記載されていた。

 

 

“強化人間計画”

 

“コーラルコネクター計画”

 

“C兵器製造計画”

 

“独立型戦闘AI開発計画”

 

“バスキュラープラント”

 

“中央氷原における地下施設建造”

 

 

気になる文面はそれだけで他にめぼしいモノは無かった。

 

だが、気になる文面が最後に残されていた…

 

 

“コーラルは意思を持つと同時に過去の幻影である。”

 

 

「過去の幻影だと?」

「俄かに謎過ぎる文面ね。」

「ですが、コーラルが意思を持つと言うのは?」

「正直訳解らん。」

 

 

レイヴンにラークとフェアリーを除いた四人の意見は最もだ。

 

何せ、C型変異波形であるエアと交信しているレイヴン達はこの事を秘匿していた。

 

立証出来る証拠も手段もないので今まで有耶無耶にしている。

 

 

『レイヴン、過去の幻影…私は。』

「…」

『そうですね、ここには私の様な存在に関しても調査していた可能性がありそうですね。』

 

 

エアも過去の幻影に反応していたが、詳しい内容が知れていないので何とも言えない。

 

 

「何だかな…」

「うん、きゃっ!?」

「!?」

 

 

丁度、本棚が寄りかかった拍子にスライドし倒れかけそうになったフェアリー。

 

とっさにレイヴンが庇った事で難を逃れた。

 

 

「レイヴン、ありがとう。」

「…」

「ねえ、これって…エレベーター?」

 

 

フェアリーが倒れそうになった本棚の奥には隠しエレベーターが設置されていた。

 

 

「ここから移動出来るらしいな。」

「でも、用心は必要ね。」

 

 

オキーフとローズネイルの言う通り、ギリギリ全員が乗れる広さのエレベーターだ。

 

狭いのは致し方ない。

 

全員乗り込んだ後、エレベーターは上層ではなく下層へと移動。

 

暫くすると地下施設と思われる区画でエレベーターは停止した。

 

エレベーターが開閉され、見えたのは一直線の通路のみ。

 

 

「…」

「どうやら迷う心配はなさそうですね。」

 

 

五花海もこれには手間が省けた様な表情で答えた。

 

一行はエレベーターから降りて通路の先を目指した。

 

暫く進むとドアを発見するも電子ロックが掛かっており、開く事が出来ない。

 

エアが密かに開錠した後、ラークに一芝居して貰った。

 

 

「んー殴ってもダメかな?」

 

 

と、言いながらドアロックを殴る振りをするラーク。

 

すると自然に開いたような形でドアロックが外れる音が響いた。

 

 

「うっそ…?」

「ラークの強運もこう言う時に光りますね。」

「今度、ラークを賭けバトルに連れて行ってみるか?」

「アハハ…五兄、ハー兄、きっと偶々だよ。」

『ラーク、ごめんなさい。』

 

 

苦笑いで誤魔化すラークにエアはひっそりと謝罪して置いた。

 

ドアを開閉し室内に入ると複数の電子端末が置かれた書斎らしき部屋に入出した。

 

 

「じゃ、手分けして本題の調査を始めましょうか?」

 

 

各自、電子端末にアクセスし情報を確認。

 

ハークラー、ラーク、フェアリーは応接のテーブルに置かれた資料を調査。

 

暫く経過すると…

 

 

「…」

「ここ、随分と最低な研究をしていた様ね。」

「これが人が出来る所業ですか?」

「うっ…おぇえ。」

 

 

発見した情報や資料には悍ましい研究結果が記載されていた。

 

ルビコン技研で行われた非人道的な実験の数々…

 

中でも第一世代強化人間の被験者達が軒並み死亡している事だ。

 

リストに記載された被験者達は映像記録付きで被験者の末路が遺されていた。

 

これにはオキーフ達も良い顔はしない。

 

ハークラーに至っては部屋の隅で吐き気を催していた。

 

映像記録にはコーラル注入によって即死した者や発狂した者。

 

使い物にならなくなった臓器を切除し機械化する工程。

 

標本にされた被験者の一部とされる物体。

 

最悪な映像は年端もいかない子供までもが被験者として施術を受けているシーンだ。

 

映像記録から流れる泣き叫ぶ声に耳を塞ぐラークとフェアリー。

 

これ以上見せるのは危険と判断しレイヴンが見せない様に二人に寄り添っていた。

 

 

「…何でこんな事を。」

「酷い、レイヴンもスッラも……皆もあんな目にあったの?」

「…」

 

 

異常すぎる光景に研究者や施術を行った者達の声も入っており…

 

使い物にならない、次の被験者を、被験者は投げ捨てる位にある。

 

目処前に居たら殴り飛ばしていた位に胸糞悪いシーンが続いた。

 

 

『そう言えば、最初の強化人間の施術を受けた女性はどうなったんだ?』

『とっくの昔に死んだよ。』

『よくやるねぇ…実の奥さんを、お子さんもいたんでしょ?』

『さて、教授に引き取られたって話だし…関係ないんだろうさ。』

 

 

研究者達の会話中でもグチャリと肉体が切り裂かれる音が響く。

 

その被験者は声を発する事も出来ずにピクピクと痙攣しているらしい。

 

研究者達がある話をし始めた。

 

 

『そう言えば、コネクター計画はどうなったんだ?』

『ああ、立案者の娘が該当していたらしくて検体に回されたってさ。』

『ふーん、本当に謎だね…』

 

 

“ルビコン3で生まれた子供からコーラルの声が聞こえる奴が出たなんてさ。”

 

 

『その立案者の娘の適合率が一番高かったんだろ?』

『そうそう、監視にあの強化人間を付けたらしいぜ?』

『それって…娘さんの恋人だった奴だろ?』

『この前、その娘さんを連れて逃げようとして捕まった上に強化人間の再施術をされたらしい。』

『勿体ねぇな、成功例だったんだろ?』

『それな。』

『確か…C1-246って言ってたか?』

『ああ、しかし不憫だねぇ…娘さんが双子を妊娠してたんだってさ。』

『もしかしてその強化兵士との?』

『それっぽい、コーラルを入れた兵士とコーラルの声を聴く娘の子って事で期待度が高いって話。』

『その子供らはどうなるんだ?』

『出産したら培養槽に入替えしてコネクターの調整する話で決まった。』

『となると娘さんは?』

『サンプルが必要だって話で他の成功した強化人間と…』

『えげつねぇな……まあ、あの容姿だし文句を言う奴はいないだろうな。』

『何言ってんだよ、こんな事をしている俺らだって似た様なもんさ。』

 

 

ゲラゲラと話す研究者達の会話。

 

耳を塞いでいても聞こえるものは聞こえてしまう。

 

ラークとフェアリーは同時に叫んだ。

 

 

「いやだ、聞きたくないっ!!」

「もう止めて!!」

 

 

二人は悟ってしまったのだ。

 

自分達の両親の末路とこの世に存在しない事。

 

そして…

 

 

「あのスッラが僕達の…」

「パパなの?」

 

 

ウォッチポイントで敵として遭遇したスッラはもう存在しない。

 

ザイレムに両親の情報があると期待した二人の希望は見事に打ち砕かれた。

 

真相は闇の中のまま…

 

その後、一行は後追いの部隊と合流しメインタワー内部を再捜索。

 

そこで出会ったメインタワーを管理する独立型AIの導きの元。

 

更なる情報を得る事となった。

 

 

=続=




次回、ミサイル防衛。


アンケート集計の結果のミサイル防衛となりました。
今回のシーンがシリアスなので次のギャグで落ち着きます。

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