ティンカーベルの子   作:宵月颯

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観測

前回、アルカナより送信されたべリウス地方の殲滅行動の映像を視聴した同盟部隊。

 

その様子にウォルターは戻れない所まで追い込まれた事を理解し重い口を開けた。

 

話すべき事とアルカナの狙い…

 

コーラルに纏わる秘匿された真実を語ろうとしていた。

 

 

******

 

 

掌握したバートラム旧宇宙港で拿捕した強襲艦でヨルゲン燃料基地から燃料を輸送し次の交戦に備えていた最中の事。

 

ハンドラーはこの場におらず、別の拠点から通信を送っていた。

 

どうやらハーロフ通信基地を経由しているらしい…

 

封鎖機構によってある程度の改修作業がバートラム旧宇宙港内の施設。

 

その一室でウォルターからの話を聞く事となった。

 

 

『まず、フェアリー…ハウンズ達を救ってくれた事に感謝する。』

「ハウンズ?」

『レイヴンが加入する前に俺が指揮していた傭兵団の名だ。』

 

 

前回の戦闘でタロット3より救助したAC乗り達。

 

彼らの肉体に刻まれた識別番号でかつてのウォルターの仲間である事が判明した。

 

その組織名で納得するラスティ。

 

 

「ハウンズ…成程、彼らもハンドラーの猟犬達だったのか。」

『レイヴンが加入する前の戦闘で全滅したと思われたが、例のアルカナに回収されていたとは…』

「タロット3は再調整したと話していましたが…まさか彼らも?」

『彼らも第四世代型強化人間…レイヴンと同じ者達だ。』

 

 

第七世代以降はコーラルによって改造を受けた旧世代型。

 

コーラルを介してフェアリーが彼らの意思を読み取れたのも頷ける。

 

 

『彼らの帰還をただ喜ぶ事は出来ない、アルカナの調整が加えられている以上は経過観察が必要だ。』

 

 

アルカナによって再調整を受けたハウンズ達。

 

何かしらのバックドアを仕掛けている可能性がある。

 

これに対してスネイルはウォルターに尋ねた。

 

 

「では、彼らの管理を…どうされるおつもりで?」

『彼らを確保したのはヴェスパー部隊だ、此方で預かると言う出過ぎた真似はしない。』

「…でしょうね、此方の強化人間用の技術を使用すればある程度の治療は可能です。」

『…』

「彼らからアルカナの情報を引き出す為にも此方で治療は継続しましょう。」

 

 

建前は情報を引き出す為の治療と答えるスネイル。

 

その様子にホーキンスは内心答えた。

 

 

「…(彼も随分と丸くなった。」

 

 

ウォルターはフェアリーに対しての礼とハウンズの今後を話し合った後…

 

本題へと移って行った。

 

 

『では、本題に入らせて貰う。』

 

 

ウォルターが語ったのは友人からの情報。

 

 

『私の…古くからの友人の情報だ。』

 

 

前回の話し合いの通り。

 

封鎖機構とアルカナは繋がっている事。

 

彼らの目的が殲滅へと切り替わった事。

 

その理由は企業も解放戦線も誰一人としてコーラルへ近づけさせない為。

 

この事から奴らは集積コーラルの場所を知り、隠蔽している可能性が高い。

 

それに比例して中央氷原のいくつかの場所が調査妨害を受けていた。

 

そのいずれかに集積コーラルへのルートが隠されていると思われる。

 

中央氷原全域の調査データを調べる為にある場所への調査に赴きたい。

 

 

『その場所が無人と化した洋上都市ザイレムだ。』

 

 

ウォルターの音声通信の横に表示された場所の映像。

 

人気は無く、霧に包まれた都市の姿が映し出されていた。

 

 

『ここは半世紀前のアイビスの火からも逃れられた場所の一つ…友人の話では都市の機能は失われておらず今も停止状態で放棄されている。』

 

 

ここに残された地形データを得られれば、集積コーラルのルートを発見出来ると思われる。

 

同時に封鎖機構とアルカナ対策の拠点としての利用を視野に入れるべきだろう。

 

 

『フェアリーとラークのACに表示された場所も恐らくザイレムを指している。』

「何故、そうだと判る?」

『かつてルビコン3へ入植する者達を乗せた移民船…それがザイレムの正体だ。』

 

 

ミシガンの疑問に対してウォルターは答えた。

 

主無き方舟がザイレムを指しているのなら…

 

フェアリーとラークのACを生み出した存在に会える可能性がある。

 

二人が生み出された理由が解明出来る事とアルカナの真の目的も判明する可能性も高い。

 

 

「そのザイレムって僕らが生まれた場所なのかな?」

「それは判らない。」

『だが、赴く価値はある。』

 

 

ラークのフェニックスとフェアリーのティンカーベルが訪れる事でザイレムに何かの変化が起こる。

 

二人のACの制作者がここまでして仕掛けを施した理由も判明するだろう。

 

 

「総長殿、調査人員を編成しましょう。」

「判った、レッドガンからG3とG7を出す。」

「では、ヴェスパーからはヴェスパー3とヴェスパー9を派遣します。」

『レイヴン、お前も洋上都市に向かえ。』

「…」

 

 

スネイルとミシガンの編成に異議を唱える者がいた。

 

ラークとフェアリーに寄り添っていたラスティとイグアスである。

 

 

「あの我々は?」

「第四隊長は調査とは別の任務を任せます。」

「G5、お前もその任務に行ってもらう。」

「はぁ?」

『悪いね、ビジター達…こっちでちょいと厄介事が起こったんだよ。』

 

 

ウォルターの音声通信に割り込んできたカーラ。

 

 

『あのコヨーテスの奴らが封鎖機構とアルカナの連中に尻尾を振りやがったのさ。』

 

 

ドーザー一派のジャンカー・コヨーテスがReDの拠点を封鎖機構とアルカナの手を借りて強襲。

 

連中に屈する訳にも行かず、奴らに反撃を仕掛ける構えを見せていたカーラ。

 

 

『で、奴らにちょっとした特大花火をプレゼントしたくてねぇ…その護衛を頼みたいのさ。』

 

 

特大花火と言っているが、絶対物騒なモノであると察したラスティとイグアス。

 

 

『アタシらの事を判っているアンタらを派遣して欲しかったんだけど…ザイレムの件もあるし贅沢は言わないよ。』

 

 

この事から白羽の矢がラスティとイグアスに立った訳である。

 

話し合いの結果…

 

ザイレムの調査にレイヴン、ラーク、フェアリー、G3五花海、G7ハークラー、ヴェスパー3オキーフ、ヴェスパー9ローズネイルの七名が調査任務へ。

 

カーラの指定したべリウス地方のウォッチポイント跡地にG5イグアス、ヴェスパー4ラスティ。

 

他の拠点防衛に残りの各ナンバーズが割り振られた。

 

封鎖機構とアルカナが次の攻撃を行う前に成すべき事をする為に動き出した。

 

 

=続=




次回、無人洋上都市ザイレム編。

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