エンゲブレト坑道での罠を境に…
ヨルゲン燃料基地とバートラム旧宇宙港を掌握した同盟部隊。
これに関して双方の企業本社からも対応困難の苦情が殺到した。
だが…
『目処前の成果ばかり気にして…追加の戦力や物資供給を怠ったのは其方達でしょう?』
『現地調達だ!貴様らは火消しにでも精を出すんだな!!!』
と、コーラル発見の進駐を命じたのは紛れもなく企業本社である。
進駐する部隊に戦力も物資も支給しなければ進駐どころか部隊の維持が困難となる。
自らの食料すら確保出来ず…
物資供給に乏しいルビコン解放戦線から奪えと言う甘い考えは現場を知らぬ馬鹿の考えである。
双方の部隊の代表であるスネイルとミシガンも最もな意見を主張した。
実際、企業の総戦力である部隊をルビコン3に送り込んでいる以上…
物資供給も無しにそれ以上の戦火を上げろと言うのも無謀である。
結果的に彼らは同盟部隊としてそれなりの戦火を上げており、更に封鎖機構と渡り合ってしまっている。
封鎖機構と渡り合える脅威と認識された以上は企業としても大事なのは変わらない。
この通信を期に企業は切り捨てを行うか経過観察をするだろう。
…集積コーラルを発見した時、同盟部隊の行く末が決定するのだ。
例え、どちらに成ろうとも企業を見限った同盟部隊には関係ない。
鎖に繋がれた自分達の自由を得る為には必要な事だ。
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同盟部隊が中央氷原で大暴れをした頃、べリウス地方で大きな動きがあった。
注視していたアルカナが動き始めたのである。
グリット086を経由し脱出した双方の待機部隊。
合流後の彼らから語られたのは途轍もない行為だった。
「アルカナの総攻撃によってべリウス地方の各組織は壊滅状態に追いやられた。」
ヴェスパー3ことオキーフの開口一番から始まり…
「あれは…再教育センターすら生温い光景でしたよ。」
「…」
ヴェスパー7のスウィンバーンとヴェスパー6のメーテルリンクも表情を曇らせた。
同じく合流したG2ナイルとG3五花海に尋ねるミシガン。
「ナイル、五花海、何が遭った!?」
「ミシガン、俺が言える事はアルカナは人を人とも思わん屑の連中だ。」
「副長の言う通りです、奴らによってべリウス地方に居る人々は老若男女問わず…皆殺しにされました。」
封鎖機構を伴い、総攻撃を仕掛けたアルカナ。
戦えない者や負傷した者達の命乞いは届かない。
降伏の意思を示しても彼らには届かない。
アルカナの答えは殲滅…
一部のルビコン解放戦線の民間人達は見せしめとして殲滅された。
飛び交うMT部隊の機銃掃射。
ヒトだったモノは赤い何かの物体に様変わりした。
戦う事すら知らない小さな子供までもだ。
細切れになった肉片と臓物によって…
べリウス地方の雪原は瞬く間に赤に染まった。
各組織にその映像がモザイク無しで送られてきた。
アルカナのナンバーの一人、タロット12の高笑いが添えられて…
『俺達に逆らうとこうなっちゃうよ!こんな感じに~真っ赤なポップコーンが出来上がりってね!!』
狂人を超えた発言。
封鎖機構と繋がるアルカナのやり方が見えた瞬間だった。
「何、それ…」
「酷い。」
話を聞いたラークとフェアリーも言葉を失った。
流石に子供に聞かせられるレベルを超えた惨劇。
「フェアリーちゃん、ラークちゃん。」
二人の怯えた表情にローズネイルが傍によって落ち着かせていた。
ローズネイルだけではなく他のナンバーズも何とも言えない表情をしている。
アルカナが言葉の通じない相手であり、本格的に殲滅行動を開始した。
…後戻りは出来ない。
「どうやら俺達はとんでもねぇ事に首を突っ込んだらしい…」
「企業も独立傭兵も解放戦線もやり過ぎた結果でしょうね。」
ミシガンもスネイルとある意味で悟っていた。
企業、独立傭兵、解放戦線。
全てをルビコンに封じ込め口封じの為に殲滅する。
アルカナと封鎖機構がそこまでして隠蔽したいモノ。
理由はコーラル。
話を聞いていたウォルターは重い口を開いた。
『この場の全員に話したい事がある。』
=続=
次回、引き続き同盟部隊会議。