ティンカーベルの子   作:宵月颯

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ヨルゲン燃料基地編


反抗・4

前回、エンゲブレト坑道に近い氷原で陽動作戦を行ったレッドガン部隊。

 

レイヴンの命がけの点火によってそれは成功を収めた。

 

陽動の為に足止めをしていたイグアスとヴォルタ。

 

足止めのエリアから脱出後にレイヴンの輸送ヘリと合流しヨルゲン燃料基地へと移動。

 

先の陽動によってヨルゲン燃料基地へ襲撃を仕掛けたレッドガン部隊と合流する為である。

 

陽動によってヨルゲン燃料基地に回される筈だった強襲艦を数隻失った執行部隊。

 

相手にも奥の手がまだ残っている可能性がある以上…

 

部隊壊滅を防ぐ為にやるべき事をしなければならない。

 

 

******

 

 

「くそっ…さっきのでタンクに無理させすぎちまった。」

「ヴォルタ、どうした?」

「さっきの脱出でモーターが逝った、足がねぇ。」

 

 

輸送ヘリのハンガー内で各ACの応急処置と弾薬補充を行っていたレイヴン達。

 

だが、ヴォルタのACキャノンヘッドは先の脱出の際についに駆動用のモーターが焼き切れた様だ。

 

現時点でレッドガン部隊は企業本社に打診していた補給物資が滞っている状態。

 

何度もリペアし騙し騙し使っていた消耗品もいずれはガタが来る。

 

それが今訪れたのだ。

 

 

「不味ったな、猟犬…何か足の代わりはあるか?」

「…」

 

 

今回のミッションの関係でAC一機に加えてAC二機を搭載する代わりに換装パーツの一部を別の輸送ヘリに移動させていた。

 

この輸送ヘリで持ってきているのは多脚型と軽量タンクであるとレイヴンは答えた。

 

 

「多脚型か軽量タンクか、ヴォルタいけるか?」

「軽量タンクを貸してくれ、癖はあるが同じタンクだ…やるだけやるしかねぇ。」

「…」

 

 

ヨルゲン燃料基地の到着まで時間はない。

 

急ぎ、キャノンヘッドのタンク交換を急いだ。

 

 

~レイヴンらの輸送ヘリ移動の最中~

 

 

一方その頃。

 

レッドガン部隊は陽動によって守りが手薄となったヨルゲン燃料基地へ強襲を仕掛けていた。

 

相手は空戦が可能なMT部隊に例のLC型も数体陣取っていた。

 

陽動で出払った強襲艦がない以上、今が好機である。

 

 

『役立たず共!敵の守りは手薄…この好機を逃すな!突撃しろっ!!』

 

 

レッドガンの各MT部隊、AC乗りに響くミシガンの怒号。

 

 

『GB、お前は例のLCを引き付けろ!』

『判ったよ、親父!』

『任務中は総長と呼べ!!いつも言っているだろうがっ!!?』

『いちいち細かい!また血圧上がるよ!』

『余計な世話だっ!!!!』

 

 

何時もながらのミシガンとラークのやり取り。

 

保護者になると言った手前、ラークの悪態を許している傾向が見受けられた。

 

戦闘行動に移ったMT部隊の隊員達やナンバーズのレッド達も「素直じゃないな」と認識し何時もの事と割り切っていた。

 

 

『総長とラークのやり取り、いつ見ても微笑ましいなぁ?』

『全く、いつになったら戦闘時と通常時を言い分けられるのか…気が遠くなる。』

『いいじゃねぇかよ、アイツはまだ子供だぜ?』

『それはそうだが…』

 

 

出撃したハークラーとレッドのやり取り。

 

陽動に出ていたイグアスとヴォルタを除くとナンバーズ持ちは彼らしかいない。

 

先程のミシガンとラークのやり取りを聞いており、それぞれが感想を告げた。

 

 

『…総長がラークの世話係をレッドにやらせなかった理由が何となく解ったぜ。』

『どういう意味だ?』

『そりゃ、お前が故郷の妹を思い出した上にシスコンこじらせてラークが更に我儘になるからだよ。』

『うっ!?』

『だから、イグアスに預けたんだろうさ……イグアスなら相性がいいって総長も見抜いていたんだろう。』

『自分が情けない…』

『G6!G7!だべってないで手を動かせ!!死にたいのか!!!?』

 

 

ミシガンの怒りを受けている二人であるが…

 

やる事はやりながら話をしている。

 

伊達にナンバーズを名乗っていない。

 

やるべき事はやっていた。

 

 

『よし、各機!エネルギー生成プラントに駐屯中の部隊を叩くぞ!!』

 

 

ヨルゲン燃料基地の橋周辺を制圧したレッドガン部隊は最奥にあるエネルギー生成プラントを目指した。

 

 

『親父!!』

『GB、どうした!?』

『敵のLCを倒したら見た事ない機体が出て来たよ!』

 

 

敵のLC型の相手をしていたラークだったが…

 

敵の増援が行われたらしく未確認の機体が二機程戦場に出現。

 

ラークは既にエネルギー生成プラント周辺で戦闘を行っていた。

 

部隊の進軍が来るまで持ちこたえなければならない。

 

 

『こいつは…封鎖機構の特務機体だ!!ラーク!油断するな!!』

『!?』

 

 

相手は惑星封鎖機構の特務部隊が使用するエクドロモイ。

 

近接型と遠距離型のペア機である。

 

特務部隊を名乗る手練れである以上、油断は出来ない。

 

 

『コード23、例の可変機を発見。』

『了解、捕獲を最優先とする。』

 

 

特務部隊はラークの機体を捕獲する為に行動を開始。

 

空戦に慣れている相手の為にラークも苦戦を強いられた。

 

 

『二機同時はキツイ!』

『ラーク、G6とG7を向かわせた!兎に角持ちこたえろ!!』

『もち!逃げるので手一杯!しゃれになんないよ!』 

 

 

息の合ったコンビネーションで徐々にラークのACを追い込む特務部隊。

 

 

『…(アイツら、動きが早すぎてレッド兄とハー兄のACじゃ持たないよ。』

 

 

自身のACがやっと追いつける早さなのだ。

 

陸戦型のレッドとハークラーのACでは荷が重い。

 

このままでは的になってしまうだろう。

 

 

『どうしたら…!』

 

 

この時、フェニックスのモニターに二桁の文字が記された。

 

 

“パイロットの生命危機を感知、フェニックスの機能を一部開放。”

 

 

“高機動モードを起動します。”

 

 

音声で復唱が終わるとフェニックスの機体が一部変形し高機動モードへと移行。

 

 

『え?えええええええ!?』

 

 

点火した追加ブースターでエクドロモイの早さを追い抜いた。

 

 

『な、ななな何コレぇ!!!?』

 

 

一瞬の事で驚くラークだったが…

 

 

『でも!行けそう!!』

 

 

臨機応変に機体を制御し近接型エクドロモイにシールドアタックを仕掛けた。

 

高機動が生み出す速さとシールドを展開し相手にアタックを行う攻撃。

 

それは『弾丸の不死鳥』に相応しい攻撃だった。

 

 

『さっきはよくもやってくれたな!!』

『早い!?』

 

 

フェニックスの翼が近接型エクドロモイの装甲を切り裂き、機体は真っ二つに分かれて爆発四散した。

 

 

『まさか…こんな!?』

『余所見してんじゃねぇよ!』

 

 

遠距離型エクドロモイに攻撃を仕掛ける機影。

 

イグアスのヘッドブリンガーと軽量タンクに交換したヴォルタのキャノンヘッドである。

 

 

『ヴォルタ、一発お見舞いしてやれ!』

『おう!さっさとくたばりやがれ!!』

『!?』

 

 

二機の息の合ったコンビネーションによって遠距離型エクドロモイも撃墜。

 

 

『イグ兄!ヴォル兄!無事だったんだね!!』

『そう簡単にくたばってたまるかよ。』

『ギリギリだったのは正解だよな?』

『あれ?レイヴンは?』

『アイツは周辺の雑魚を蹴散らしてるぜ。』

 

 

レイヴンはデータを収集しようとしたデリーターACと交戦し全て破壊していた。

 

 

『とりあえず、こっちの制圧は完了かな?』

 

 

通信でラークの無事を確認するミシガン。

 

コールサインで呼ばないと見ると素で話していたのだろう。

 

 

『ラーク、無事か!?』

『うん、平気!』

『G5達の救援が間に合ったようだな…』

『親父、後で僕のフェニックスを見て!何か増えた!』

『増えた?』

 

 

レッドガン部隊によるヨルゲン燃料基地の制圧は完了した。

 

レイヴンらの救援も間に合い、ラークのACに搭載されていたらしい機能で難を逃れた。

 

だが、その秘密はまだ明かされない。

 

妖精が目醒めを迎えない限りは…

 

 

=続=




次回はバートラム旧宇宙港編。


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