ティンカーベルの子   作:宵月颯

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レッドガンによる陽動作戦編。


反抗・3

前回、エンゲブレト坑道でのミッションを行ったレイヴン。

 

今回は少し時間を遡る…

 

レイヴンの輸送ヘリがエンゲブレト坑道へ向かい、内部へ侵入した直後の事。

 

 

******

 

 

ヒアルマー観測所からヨルゲン燃料基地へ移動を開始したレッドガン部隊。

 

その最中でミシガンは告げる。

 

 

『G13が導火線に火を点けに行った…モタモタしている時間はないぞ!』

 

 

放棄されたエンゲブレト坑道は人の手が入っていないとはいえ、地下にはコーラル採掘の為の穴が張り巡らされていた。

 

それは蟻の巣の様に…

 

これを利用し陽動作戦を決行。

 

ラークのソナー能力を駆使し間欠泉に成り得るコーラルの位置を測定。

 

そこへ惑星封鎖機構の執行部隊を陽動し罠に掛ける作戦だ。

 

上手く行けば、執行部隊の戦力を削り燃料基地の掌握を阻止出来る。

 

逆にバートラム旧宇宙港に停泊している強襲艦を無力化若しくは拿捕するのがヴェスパー部隊の作戦。

 

陽動で守りが手薄となった旧宇宙港へ強襲をかける。

 

この陽動作戦を成功させ掌握した強襲艦と制圧した燃料基地…

 

二か所を同時に手に入れる為の作戦にエンゲブレト坑道のコーラル爆発を利用したのである。

 

 

『ラーク、コーラルの流れはどうなっている。』

『爆発したらこうやってここら辺を通るよ。』

 

 

ラークは地図を見比べてコーラルの流れを感じ取る。

 

そこから導き出された答えを伝えた。

 

 

『良し!各自作業に取り掛かれ!』

 

 

ミシガンは部下達に指示を出し準備を進める。

 

行ったのは指定した部分を爆発させ、地下空洞を崩落させる事。

 

無数に枝分かれした空洞が多すぎると折角のコーラル爆発も威力が弱まってしまう。

 

なので、数カ所だけに爆発を集中させる為に余分な空洞を埋めているのである。

 

現在のエンゲブレト坑道はコーラル爆発の関係で坑道内のコーラル濃度が上昇しつつある。

 

これをラークのソナー能力で感知。

 

より精密な坑道と自然に作られた空洞を調べる事が出来たのだ。

 

何処を塞げば効率よく爆発を利用出来るかは…

 

部隊の専門家達の仕事である。

 

 

『総長、A地点の準備完了です!』

『ご苦労!』

『続けて、B、C、D地点の作業も終了するとの事です!』

『後はG13の連絡待ちか…』

『総長…自分が連絡を取りましょうか?』

『G6、邪魔にならん程度にエールを送ってやれ!』

『はっ!了解!』

 

 

ミシガンとのやり取りの後、G6レッドがレイヴンに連絡を送ろうとした時。

 

事態は一変した。

 

 

『連中、もう来やがったぜ!』

『おい、こいつはマズいぞ!?』

『G5、G4何があった!?』

 

 

偵察に出ていたG5イグアスとG4ヴォルタ。

 

二人の様子からどうやら執行部隊の展開が早まったらしい。

 

 

『G5、G4、予定変更だ!そのまま奴らを誘い込め!』

 

 

本来であれば、ある程度の陽動を行って撤退する予定だったが…

 

導火線の火はまだ点かない。

 

足止めをしなければならなくなった。

 

 

『けっ!猟犬の奴…さっさとしやがれってんだ!』

『野良犬呼びは止めたのかよ、イグアス。』

『まあな、色々とあったんだよ。』

 

 

レイヴンの悪口を言いつつも野良犬呼びを止めたイグアス。

 

ヴォルタも理由を聞くが、はぐらかされる始末。

 

そもそもイグアスはイグアスでエアからお小言の真っ最中であり、それ所ではないのだ。

 

 

『イグアス、いくら貴方でも言って良い事と悪い事があります。』

『あーうるせぇ!ピーピー言うな!』

『いいえ!絶対に言わせて貰います!』

『つか、戦闘中だぞ!?さっさとサポートしやがれ!』

『はぁ、もう…執行部隊が展開を始めました。』

『どうするよ?』

『レイヴンが導火線にたどり着いていません。』

『時間稼ぎ…どの位だ?』

『せめて五分は持たせてください。』

 

 

五分経過後にエアが脱出ルートを案内する手配となった。

 

 

『敵の強襲艦よりMT部隊の投下を確認、例のLC型も含まれています。』

『足止めにしちゃ豪華だな。』

『敵LCは飛行用ブースターを狙い、墜落させる事を推奨します。』

『要は飛べなくさせればいいんだろう?』

『その通りです。』

 

 

敵はMTとはいえ飛行形態を兼ね備えている。

 

弾薬も限りがある。

 

油断は出来ないだろう。

 

 

『ヴォルタ、うっとうしい虫を落とすぜ?』

『おうよ、その為のアセンだからな?』

 

 

今回の二人のACは対空装備での出撃。

 

ミサイル兵装は勿論、アーキバスから借りたレーザーライフルにプラズマキャノンと言うエネルギー兵装である。

 

実弾系が届かない相手には致し方ない。

 

 

『敵対企業の兵装で出撃ってのも悪くねぇな!』

『相手が相手だ!仕方がねぇよ!』

 

イグアスが前衛、ヴォルタが後衛をし、敵MT部隊と交戦。

 

指定された場所まで惹きつけた。

 

 

『イグアス、レイヴンが導火線に火を点けました。』

『待ってたぜ。』

『急いで撤退を!』

 

 

エアからの警告でヴォルタと共に撤退を開始したイグアス。

 

 

『ヴォルタ、そろそろトンズラするぞ!』

『だな、エネルギーも残り少ねぇし。』

『例の爆発もそろそろだろうしな。』

 

 

イグアスの話の後に振動を始める氷原。

 

二機はエアの指定した避難ルートを目指した。

 

 

『次は奴らの出鼻をへし折ってやるぜ。』

 

 

導火線に火は付けられた。

 

レッドガンが罠を張ったエリアでコーラル爆発の影響による奔流が間欠泉の様に所々から吹き出始めた。

 

急な事で強襲艦も直撃を喰らって墜落。

 

同時に各所の地盤が緩み崩落。

 

敵MT部隊とLCもそれに飲み込まれていった。

 

陽動作戦は成功。

 

次は狩りの時間だ。

 

=続=




次回はヨルゲン燃料基地編。

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