ティンカーベルの子   作:宵月颯

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スマートクリーナー戦。


侵入・4

 

RaDのMTを撃墜しつつ、道中でノーザークを捕まえたラークとフェアリー。

 

エアが指定する待ち合わせポイントへと急行した。

 

 

******

 

 

『おせぇぞ!何やってたんだ!?』

『イグ兄ゴメン!変なACがいたから捕まえてた。』

 

 

RaDのMTと砲台型MTの残骸の山を築き上げていたレイヴン達。

 

どうやら引き分けで終わった様子だった。

 

ラーク達のACが待ち合わせ場所に着くや否や、ラークはイグアスよりお叱りを受けた。

 

 

『変なAC?』

『このACに、乗っている人、気絶してる、縛ってある。』

 

 

ラスティの疑問にフェアリーが答える。

 

 

『エアに調べて貰ったら、この人独立傭兵なのに報奨金付のお尋ね者だったんだ。』

『はい、現在の相場はこうなっています。』

 

 

エアが各ACにノーザークに掛けられた報奨金を提示する。

 

お値段はバランス重視の二脚型AC一機とマシンガン系武器付きで購入出来ると言う大金だった。

 

 

『でかした!ラーク!』

『イグ兄ならそう言うと思ったよ!』

 

 

イグアスとラークはハイタッチする勢いだったが…

 

 

『ちょっと待ってくれ。』

 

 

それにストップを掛けたのはラスティの注意である。

 

 

『そのACはラークとフェアリーが二人で捕まえたのだろう?』

『勿論。』

『それなら報奨金は仲良く二人で分ける事を提案する。』

『…そうだね、それならフェアリーとハーフ&ハーフにしよっか?』

『うん。』

『決まり!』

『…(アイツ、余計な事を。』

 

 

ラークの手に入れた報奨金の一部を懐に入れようと考えたイグアスだったが…

 

それを見通したラスティの横槍で案の定、防がれていた。

 

 

『ラーク、その報奨金でドアの修理代だけは返せよな?』

『判ってるって。』

 

 

先行調査前にウォルターの拠点にある通信室のドアを破壊しているラーク。

 

監督不行き届きと言う事でイグアスの給与から差っ引かれていた。

 

壊した本人がその分を分割で返す様にとラークと約束をして置いたイグアスであった。

 

 

『お話の所すみませんが、余興の主催者が待ってますよ?』

 

 

エアの言う通り、シンダー・カーラが待ちくたびれた様に広域放送で話し始めた。

 

 

『どいつもこいつも不甲斐ないね。』

 

 

カーラは盛大に溜息を付いた。

 

相手がベイラムとアーキバスのナンバーズが居る以上はどうしようもない。

 

 

『アンタらを雇った方が安く付くんじゃないかと思えて来たよ。』

『そう言うのはうちの総長と話せよ。』

『此方もだ。』

 

 

レイヴンは兎も角イグアス達は企業に所属するAC乗りである。

 

現在も任務中である以上はおいそれと別の依頼をする訳にはいかない。

 

 

『歓迎の花火がまだだったね?』

 

 

合図を送って次のMT集団に指示を出すカーラであったが…

 

全く反応がない。

 

 

『あーそう言えば、そこらへんに隠れていたの…僕達で倒しちゃったよ?』

『うん、このACを、運ぶのに、邪魔、だったの。』

 

 

さり気無く言われたラークとフェアリーの言葉。

 

これにはカーラも頭を抱えた。

 

 

『成程…今夜のビジター共は一筋縄ではいかない様だね?』

 

 

これ以上、部下を倒されると拠点の防衛に差し支える。

 

カーラは切り札を出す事にした。

 

 

『判った、アンタらの実力は判ったよ…但し。』

 

 

とある一件でカーラは怒りの声を上げた。

 

 

『そこの野郎三人っ!アタシがウォルターに貸した試作武装を全部壊してくれたね?』

『…』

『恐らく、あのバルテウス戦で破損したDソードブレイカーの事では?』

 

 

何の事かさっぱりのレイヴンだったが、エアの発言で納得した。

 

 

『成程、あの武装を造ったのは貴方だったのか…失礼な事をした。』

『あの武器、取り回しが良くて扱いやすかったぜ?』

 

 

続けてラスティは謝罪しイグアスは扱い易さの感想を告げた。

 

 

『とりあえずこの先を通りな…ケジメは付けて貰うけどね?』

 

 

カーラは遠隔操作でRaDのエンブレムが刻まれた巨大な隔壁を開放した。

 

どうやらこの先を進めと言う事らしい。

 

 

『次はどういう魂胆かは判りません、手前の区画に補給シェルパを手配しますので補給を…』

『エア、頼みがある。』

『ラスティ、何でしょうか?』

『手持ちの武装を換えたい…出来ればグレネードや炸裂系の武装が良い。』

『判りました、手配します。』

 

 

ラスティの指示で手配する武装を入れ替えたエア。

 

 

『ねえ、どうして武器を換えるの?』

『問題、あるの?』

 

 

ラーク達の質問にラスティらが説明する。

 

 

『ここのMTは見た目の割に装甲が固い。先程まで相手をしていたMTの中にはエネルギー系の攻撃を弾くタイプも存在した。』

『実弾系もな、装甲が固すぎて至近距離で撃たねえと貫通しねぇ。』

『だが、レイヴンの持っていた炸裂系の武装でなら対応が可能だった。』

『…』

 

 

つまり、この先に出て来るだろう相手にも先の武装で対応した方がいいと判断したらしい。

 

 

『そう言う訳だ…ラーク、さっきのチェンソーも貸せ。』

『うん、分かった。』

 

 

~各ACの補給後~

 

 

補給と武器交換を終えた一行は隔壁の更に奥にある区画へと移動を開始。

 

所が…

 

レイヴン、イグアス、ラスティのACが通り過ぎると隔壁が閉鎖。

 

後追いしていたラークとフェアリーが分断されてしまった。

 

 

『あっ!?』

『閉まっちゃった?』

 

 

ノーザークの入った破損ACをそのままに出来ず、二人で運搬していたのがまずかったらしい。

 

 

『安心しな、アタシがケジメを付けろって言ったのはあの三人だ。』

 

 

広域放送で二人の疑問に答えるカーラ。

 

 

『それまではお互い見物と行こうじゃないか?』

 

 

閉鎖された区画に閉じ込められたラークとフェアリー。

 

カーラは二人のモニターにある映像を表示させた。

 

それはレイヴン達が進んだ先での出来事だった。

 

待ち受けていたのは無人重機スマートクリーナー。

 

RaDの解体兼掃除役である。

 

 

『…』

『随分とデケェな?』

『油断はしない方が良い…あのアームに捕まったら元も子もない。』

『そうだな?クソデカいアームには掘削ドリルと高温の切断刃付きかよ…』

『戦友、G5、私が奴を攪乱する…その隙を狙ってくれ。』

『折角の戦利品だ、有効に使わせて貰うぜ?』

『…』

『各機、私がサポートします。』

 

 

各機はそれぞれの役割を割り振ると攻撃を開始した。

 

 

ラスティのスティールヘイズが攪乱。

 

レイヴンのACがグレネードガンとキャノンを交互に発射しスタッガーを狙う。

 

イグアスのへッドブリンガーがチェンソーで切り裂き、パイルバンカーで撃ち抜いた。

 

 

『やるじゃないか?でも…奥の手はまだある!』

 

 

カーラはスマートクリーナーに区画内へ溶鉱炉で溶けた鉄を周囲にばら撒かせた。

 

当たれば、ACの動きが鈍ってしまう。

 

特にスピード重視の軽量ACであるスティールヘイズなら猶更だ。

 

攻撃が止むまでは回避に呈するしかない。

 

 

『各機、敵の大型重機の溶鉱炉の鉄がそろそろ底を尽きそうです!』

『戦友!攻撃が止まるぞ!!』

『…!』

 

 

奥の手である溶解鉄の攻撃が収まったのと同時にレイヴンは手持ちのグレネードを撃ち尽くす。

 

極度の損傷で所々の装甲が使い物にならなくなったスマートクリーナー。

 

 

『野良犬っ!トリは貰ったぜ!』

 

 

イグアスのへッドブリンガーの両腕には凶悪な武装が装備されていた。

 

左腕にチェンソー、右腕にパイルバンカー。

 

本来なら左腕装備であるパイルバンカーであるが右腕に無理やり持ち替えていた。。

 

チェンソーの切断とパイルバンカーの撃ち込みによる攻撃でスマートクリーナーは停止。

 

 

『本当に容赦ないね…ビジター共。』

 

 

少し諦めに近い声でもあったが、続けてやり切った感の声でカーラは宣言した。

 

 

『アンタら実力は判った。協力してやるさ…この灰かぶりのカーラがね?』

 

 

グリット086での先行調査を終えた一行。

 

大陸横断の為の施設に向かおうとしたものの外は既に夜を迎えていた。

 

カーラの提案で一行はRaDの拠点で一晩を過ごす事となった。

 

だが、闇夜に紛れながらグリット086へ謎のACが行動を開始し始めていた…

 

 

=続=




※スマートクリーナー

カーラの拠点にある解体用の無人重機。
文字通りMTからACすら解体する粉砕アームと高温の溶解物が入った溶鉱炉を持つ。

レイヴンらに容赦なく鉄屑にされた。

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