話は再びレイヴンの視点へと戻る。
惑星閉鎖機構の監視が敷かれたウォッチポイントの施設。
強風と雨の中、レイヴンは奇襲をかけた。
目処前の敵部隊から砲台全てを破壊していく。
ウォルターの指示通り目撃者を全て殲滅する。
『ACだと何処から!?』
『各機、相手は一機だけだ!』
『まさか…がぁ!?』
夜に紛れての奇襲。
夜間であった事とこの日の悪天候がレイヴンの勝敗率を上げていた。
展開していた全ての監視部隊を殲滅しウォッチポイントの施設へと移動するレイヴンだったが…
そこにはウォルターと因縁のあるACが待ち構えていた。
『ウォッチポイントを襲撃するとは…』
待ち構えていたのは一体のAC。
『相変わらずだな、ハンドラー・ウォルター。』
『貴様は…スッラか!?』
『また犬を飼った様だが、何度も殺してやろう。』
どうやらスッラと呼ばれた人物と面識のあるウォルター。
話を聞く限り、いい関係ではないが…
『そこの犬、お前には同情するぞ?』
『…』
『飼い主が違えば、もう少し長生き出来ただろうに。』
スッラの会話の後に別のACが乱入し話を遮った。
『そうそう、付く場所が違うだけで生存率って変わるよね?』
『…』
新手として現れた重量型二脚ACと高機動型二脚AC。
新手に関してはウォルターも知り様がないらしい。
『今回のレイヴンも随分と無口だね?』
『奴は第四世代型の強化人間だ、感情の起伏がろくにない戦うだけのガラクタだ。』
『…戦場に置いては理想の傭兵ではある、感情など不要だ。』
重量型AC乗りに説明するスッラ。
その説明に高機動型AC乗りも納得する。
『621、奴はC1-246独立傭兵スッラ…第一世代型強化人間の生き残りだ。』
『…』
『621、何としても生き残れ。』
危機的状態でもウォルターは621に命令を下した。
『スッラ、予定通り奴を殺せ。』
『判っている。』
『無事に出来たら、君も僕らの同志って事を認めるよ。』
スッラのACの他に出現した二機の謎のAC。
二機もスッラ同様に手練れである事はその場の空気で理解した。
ウォッチポイントへの潜入に踏み切ったウォルターだったが、621の危機的状況に焦った。
かつての617達と同じ末路を辿るのではないのかと…?
だが、621の元へ集う者達が存在した。
『そこまでだ!』
戦場で聞き慣れた声と現れたのは…
人間らしさを呼び戻してくれた五番目の赤き弾丸と夕暮色の不死鳥。
『よぉ、野良犬…苦戦している様だな?』
『レイヴン、助けに来たよ!』
共に壁越えを果たした蒼き狼と翡翠の妖精。
『無事か、戦友?』
『もう、大丈夫。』
変異した繋がりは奇跡を呼んだ。
スッラは内心驚いた。
ここに来る筈のない存在達が現れたのだから…
『隊長の予想通り…来て正解だったな?』
『戦友、レッドガンの彼らとは此方へ到着後に合流し一時休戦した。』
『ま、イグ兄が先にフェアリーの兄ちゃんと喧嘩しそうだったから止めたけどね。』
『うん、喧嘩は、駄目。』
レイヴンの元へ合流したイグアス、ラスティ、ラーク、フェアリーの四名。
完全な敗北に至る形勢は再び逆転しつつあった。
『あらら?援軍来ちゃったよ~それにお楽しみが増えたね?』
『ふん、目的達成の為にもまとめて倒すまでだ。』
スッラの他に出現した謎のAC乗り達は答えた。
『なら、可愛いフェアりんとそのナイト様は僕が相手をするよ。』
『そうか、私はラークと言う小娘とあの口の悪い奴を担当する。』
対戦カードは切られた。
『戦友、あの下品な輩は私とフェアリーで相手をする!』
『うん!』
『野良犬、俺とラークはエリート風情の奴の相手をするぜ!』
『イグ兄と僕のコンビネーションを見せてやる!』
『…』
レイヴンは引き続きスッラと戦闘。
ラスティとフェアリーは重量型二脚AC乗りと戦闘。
イグアスとラークは高機動型二脚AC乗りと戦闘。
『始めるぞ、死の決闘をな?』
ウォッチポイントで繰り広げられる戦いは更なる役者を加えて激化する。
=続=
※謎のAC(公式本編には存在しません。)
独特な話し方や感性を持つパイロットが搭乗している謎の二機のAC。
スッラ同様にウォッチポイントを襲撃したレイヴンらの抹殺を目論む。
スッラに対して『奴らを倒せば、貴様も我らの同志だ。』と告げてるのでレイヴンの抹殺で彼らの組織入りを認める会話をしていた。
他にもラークとフェアリーの捕縛若しくは抹殺を目的としているので彼女達の事を知っているような様子を見せている。
砲撃武装の重量型二脚ACは『吊るされた男』、近接武装の高機動型二脚ACは『死神』とタロットカードの名称を持つ。
ACE3の深紅が621の嫁のイメージに合うのは気の所為じゃないと思いたい。