「ビジネスにおける振り返りのやり方を知りたい」「ビジネスで振り返りを行うコツを知りたい」このような悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか?
ビジネス環境は絶えず変化しており、企業やチームはそれに適応し、成長を続けるためには、定期的な「振り返り」が不可欠です。
この記事では、ビジネスにおける振り返りの必要性を説明し、その効果を最大化するためのフレームワークを多数紹介します。これらのフレームワークは、過去の活動から学び、未来の成功に活かすための効果的なツールとなっています。
「この記事を読んだら、すぐに振り返りができた」と思って頂けるような記事になっていますので、ぜひビジネスの振り返りに役立ててください。
ビジネスでの振り返りの必要性とは
はじめに、ビジネスにおける振り返りの必要性を解説します。
- ビジネスを向上させることができる
- ビジネスで次にやるべきことが明確になる
- チーム内でのコミュニケーションが活性化する
どのような仕事においても「振り返る」ことは大切です。仕事の振りは単に出来事や結果を思い出すだけではありません。体験や取り組みの意味を理解し、同様の状況に遭遇した時に最適な対応を行うために欠かせない行動です。この章でビジネスにおける振り返りのメリットや、それが企業成長にどのように貢献するかを確認しましょう。
ビジネスを向上させることができる
振り返りの必要性には、ビジネスを向上させることができる点が挙げられます。振り返りを怠ると、市場や顧客のニーズが変化していても、古い戦略や方法に固執してしまい、競合他社に後れを取る恐れがあります。
また、過去の失敗を放置したままでいると、同じ過ちを繰り返してしまい、費用や時間の浪費につながります。振り返りを行えば、過去の成功体験や失敗から学び、それを新たな戦略の策定や業務改善に活かすことができます。
例えば、過去のプロジェクトでの成功ポイントを分析することで、その要因を今後のプロジェクトにも適用することができるでしょう。このように、継続的な改善プロセスが、ビジネス全体のパフォーマンスを向上させる鍵となるのです。
ビジネスで次にやるべきことが明確になる
ビジネスにおける振り返りは、目標設定や戦略策定において「次にやるべきこと」を明確にします。過去のデータや経験を分析(振り返り)することで、どの戦略で成功を収めたか、またはそうではなかったのかを把握できます。
振り返りを怠ると、企業は目指すべき方向性を見失い、資源の無駄遣いをしてしまうリスクが高まります。例えば、レストランが市場調査をせずに新メニューを開発した場合、顧客の好みに合わない料理を提供し、売上げの機会を逃すことになるでしょう。そのため、効果的なビジネス戦略を立てるためには、振り返りが不可欠です。
チーム内でのコミュニケーションが活性化する
ビジネスでの振り返りは、チーム内でのコミュニケーションが活性化します。振り返りを行えば、各メンバーが自身の意見やアイデアを共有し、他のメンバーの視点を理解する機会が増えます。この相互理解は、新たなアイデアの創出やビジネスの革新につながります。
一方コミュニケーションが不足すると、チーム間の誤解や不信感が生じ、プロジェクトの進行に支障をきたす恐れがあります。例えば、開発チームが進捗状況や課題を共有しなければ、プロジェクトの遅延や品質の低下が発生する恐れがあります。チームの協力関係と効率を高めるためには、振り返りによるコミュニケーションの機会が重要です。
効果的に振り返りを行うにはフレームワークを活用しよう
ビジネスの振り返りにフレームワークを取り入れることで、複雑なデータや出来事を体系的に理解することが可能です。フレームワークを活用しない場合、ビジネスの振り返りは表面的な分析にとどまります。具体的な原因や改善点の特定が難しくなり、結果として同じ問題を繰り返すことになるかもしれません。
フレームワークは、業務の成果を整理し、それらの背後にある原因や傾向を明らかにすることに役立ちます。このアプローチを用いることで、単に結果を振り返るだけでなく、それがなぜ起こったのか、どのように改善できるのかという深い洞察まで行うことができるのです。
ただし、フレームワーク活用時には、チームの特性や振り返りの目的に合わせたものを選ぶことが重要です。
次の章で、ビジネスでの振り返りに効果的なフレームワークを紹介します。
ビジネスでの振り返りに効果的なフレームワーク14選
ここからは、仕事の振り返りを行う際に役立つ代表的なフレームワークをご紹介します。
YWT
YWTフレームワークは、以下3つの要素から構成されます。
- Y:やったこと
- 実施した活動や成果
- W:わかったこと
- 活動から得た学びや気づき
- T:次にやること
- その経験から学んだこと
このフレームワークは、単に成果を振り返るだけでなく、得られた教訓や次のステップを明確にします。YWTの項目は直感的に理解しやすく、後で説明するKPTと並んで多くの企業・チームで活用されています。とくに評価や小規模チームのプロジェクトの振り返りに有効です。
KPT
KPTフレームワークは次の3つの要素で構成されています。
- K:Keep
- 継続すべき良い点
- P:Problem
- プロジェクトや業務で直面した障害や課題
- T:Try
- 改善のために次に試すべきアイデアや方法
このフレームワークは、業務の振り返りやプロジェクトの評価を行う際に適しています。具体的な問題を特定し、それに対する解決策の探求に重点を置いているため、チームが共同で成長し、問題解決能力を高めるために役立ちます。定期的なプロジェクトレビューやチームミーティングを行う必要のある企業・チームに効果を発揮します。
PDCA
PDCAフレームワークは以下4つの流れに沿って継続的に改善を繰り返します。
- P:Plan
- 目標を設定し、達成するための戦略やアクションプランを立案
- D:Do
- 計画した目標に到達できるように実行
- C:Check
- 実行の結果を分析し、良し悪しを含めた評価を実施
- A:Act
- 評価結果に基づいて計画を見直し、次の行動につなげる
PDCAは、長期的な戦略計画の立案や実行、業務プロセスの改善に効果を発揮し、組織の全体的な成果向上に貢献します。とくに品質管理や業務改善に有効で、戦略的かつ体系的なアプローチを求める組織に適しています。
経験学習モデル
経験学習モデルはアメリカの教育学者コルブ氏によって定義された、経験に基づいた学習プロセスです。以下4つのステップから構成されます。
- 経験:具体的な経験をする
- 内省:行動の振り返り・フィードバック
- 教訓:経験を多面的にとらえ教訓にする
- 実践:行動を修正し、挑戦する
経験学習モデルを有効に回すためには、とくに振り返り(内省)の習慣を身につけることが必要です。このモデルは、自身の経験から学び、成長したいと願うビジネスパーソンや、実践的な経験を通じて能力を高めたい人に適しています。
Start – Stop – Continue – Change
このフレームワークは、以下4つのステップで構成されています。
- Start: 新しく取り組むべき事項
- Stop: 現在行っているが、効果が低いまたは不要な活動
- Continue : 効果的で継続すべき現在の活動
- Change: 改善や変更を加えるべき現在の活動
このフレームワークは、チームや組織が自己評価を行い、現在の活動を効果的に改善するための方法を提供します。それぞれのステップは、効率化、生産性の向上などを促進し、組織の目標達成に役立ちます。特に習慣、ルーティンで取り組んでいる業務の見直しを行いたい企業やチームに適しています。
KPTA
このフレームワークは、以下4つのステップで構成されています。
- Keep:継続すべき良い点や成功要因
- Problem:問題、課題
- Try:新たに試みるべきアイデアや戦略
- Action:実施する具体的な行動計画
KPTAは、KPTにA(Action: 具体的な行動)の要素を追加したものです。KPTのフレームワークを活用すると、Tryの段階での提案が抽象的な着地になってしまい、成果に結びつかないことがあります。しかし、KPTAのActionのステップを加えることで適切な行動計画を策定することができます。
タイムライン
タイムラインは、プロジェクトやタスクの進行を時系列で整理し、可視化する手法です。このアプローチにより、重要なイベントやマイルストーンが明確になり、タスクの開始日と終了日が容易に把握できます。
目標達成に向けた進捗管理が容易になり、リソース配分や優先順位付けが明確化されます。プロジェクト管理を重視する企業や、複数のタスクを並行して進める必要があるチームに適しています。
ジョハリの窓
ジョハリの窓は、相互理解を深めることで個人やチームの可能性を広げるビジネスフレームワークです。このモデルは、心理学者ジョセフ・ルフトとハリー・インガムによって開発されました。
ジョハリの窓には4つの「窓」があり、それぞれが自己認識の異なる側面を表しています。
- 開放の窓 (Open)
- 自分と他者の双方が認識している領域。これは日常コミュニケーションでの自分を表します。
- 秘密の窓 (Hidden)
- 自分は認識しているが、他者は認識していない領域。これには、本音や本性が含まれます。
- 盲点の窓 (Blind)
- 自分は認識していないが、他者は認識している領域。これは自分では気づいていない素の自分を表します。
- 未知の窓 (Unknown)
- 自分も他者も認識していない領域。まだ未開拓の可能性を示します。
ジョハリの窓のフレームワークは、自己認識を「自分が認識しているか・していないか」と「他者が認識しているか・していないか」という二つの視点に情報を切り分けて分析します。このアプローチにより、自分の特性や性格は「開放」「秘密」「盲点」「未知」という四つのカテゴリーに区分されます。
FDL
「Fun Done Learn」(FDL)は、スクラムやアジャイルでのチーム活動の振り返りに使用されるフレームワークです。この手法は「Fun」(楽しかったこと)、「Done」(達成したこと)、「Learn」(学んだこと)の3つの要素を基に活動を評価します。
FDLのプロセスはシンプルで、ボードにこれらの要素を記載し、チームメンバーが付箋を使ってそれぞれの要素に関連する活動を振り返ります。このプロセスを通じて、チームは達成感を共有し、学びや改善点を識別できます。
またKPT とは異なり、何を書いても構いません。Try を出さないため、制約なく自由に書くことができます。 ただし「Try」のステップがない分、具体的なアクションが起こりにくい傾向があるため注意しましょう。
ワールドカフェ
ワールドカフェは、カフェのようにリラックスした雰囲気で行う対話形式のフレームワークです。これは、少人数のグループに分かれて自由に話し合い、定期的にメンバーをシャッフルすることで様々な意見や知識を共有します。またこの手法は、結論を出す必要がなく、会議室で行われる会議以上に活発な意見交換が可能なため、参加者全員の意見や知識を共有することに役立ちます。
ワールドカフェの基本的な進め方は次の通りです。
- 各ラウンドは15〜20分程度とし、ラウンドごとに別テーブルに移動してメンバーをシャッフルします。
- 模造紙やペンを使い、思いついたことやアイデアを自由に書き残します。
- 話し合うテーマは、全ラウンドを通して1つに設定するのが一般的ですが、ラウンドごとに異なるテーマを設定する場合もあります。
Star fish
Star fishフレームワークは、次の5つの項目から成り立っています。
- Keep Doing:続けること
- 効果的であり継続すべき活動
- More of:増やすこと
- 注力すべき活動
- Less of:減らすこと
- 効果が低い活動
- Stop Doing:やめること
- 効果がないため中止すべき活動
- Start Doing:始めること
- 新たに取り入れるべき活動
このフレームワークは、振り返りをより細分化し、具体的な改善点を明確にすることが特徴です。各項目について個人で考え、チームで共有し、最も重要な課題を議論します。これにより、チームは効果的な改善策を特定し、実行に移すことができます。
PDS
PDSサイクルは、「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「See(評価・見直し)」の3つのステップからなるフレームワークです。PDCAサイクルと似ていますが、PDCAの「Check(評価)」と「Act(改善)」を「See(評価・見直し)」に集約しています。
具体的な手順は以下の通りです。
- Plan(計画): 目標を明確にし、必要なステップやリソースを洗い出し、スケジュールや予算を作成します。
- Do(実行): 計画に基づいて行動を実行します。
- See(評価・見直し): 行動を目標と照らし合わせて評価し、目標達成の場合は次のステップに進みます。達成できない場合は原因分析と改善を行います。
PDSサイクルの特徴は、PDCAサイクルよりも短いスパンでサイクルを回すことができ、計画と実行の間のフィードバックが容易で、目標達成に向けた行動を継続的に改善できる点です。これにより、業務の効率化や改善に効果的で、より高い成果を上げることができます。
LAMDA
LAMDAフレームワークは、PDCAサイクルを発展させたもので、次の5つのステップから成り立っています。
- Look:現状確認
- 現在の状況を確認する。
- Ask:背景確認
- 問いを立てて背景を確認する。
- Model:体系化
- 理解した内容を整理し体系化する。
- Discuss:議論
- 今後の行動や解決策を議論する。
- Act:行動
- 決定した内容に基づいて行動する。
LAMDAフレームワークは、PDCAサイクルをさらに詳細化し、より高精度な振り返りが期待できます。ただし、LAMDAの各ステップは観点や考え方の難易度も高いため、既に振り返りの習慣が根付いているチームや、より先進的なプランニングと分析に取り組みたい組織に適しています。
4行日記
4行日記とは、自分の日々の経験や感じたことを振り返るためのシンプルなフレームワークです。
この日記は、以下の4つの項目から成り立っています。
- 事実:その日に実際に起きた客観的な出来事を記述します。
- 気づき:その出来事から得たひらめきや気づきを書きます。
- 教訓:気づきから得た教訓を明確にします。
- 宣言:将来の自分がありたい姿を宣言します。
このフレームワークは、短い文で自己の考えや強み、目標を明確にし、目標達成に近づくことができる点にあります。また、毎日継続することで、自分では意識していない潜在的な癖や論理的思考力などが身につきます。4行日記は、自己成長や自己認識を深める手段として効果的であり、日々の振り返りを通じて個人の成長を促進することが期待されています。
まとめ
ビジネスにおける振り返りは、組織の成長と効率性を高めるために欠かせないプロセスです。
本記事で紹介した14種類のフレームワークは、ビジネスの振り返りを実践する上で有効です。これらのフレームワークを適切に活用することで、ビジネスの成果を向上させ、目標設定を明確にし、チーム内のコミュニケーションを活性化させることができます。
各フレームワークは、ビジネスの成功体験や失敗から学び、それを次のステップに生かすための明確な指針を提供します。今後のビジネス活動において、これらのフレームワークを活用し、継続的な成長と改善を目指していきましょう。