翻訳集 - Office Tsukasa Kuwabara

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翻訳集

・J. M. Charon, 1979, Symbolic Interactionism, Prentice-Hall, ch. 1- ch. 3
 参考文献:https://archive.is/B4NHM#selection-1759.0-1759.51
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The Nature of Perspective
教師たちも、著述家たちも、私の教員生活を通じて、警告し続けてきた。真実を見つけることは全く以て難しい、と。自分の理解が進めば進むほどに、彼らの言うことが正しいということが、よりはっきりと理解できた。しかしながら、パースペクティブという概念に出会ったとき〔~に誘われたとき〕、真理という問題に対する新しい次元(尺度)が目の前に開けたのである。しかしながら、(それを)額面通りに受け取ってしまうと、パースペクティブという概念は、人びとを次のような結論に導くに違いない。すなわち、人間にとって、物的なリアリティ(現実)に関する真理というものは、絶対的な意味においてはどのようにしても成り立ち得ないものである、と。
 何年も前に、私はA. Averchenkoによる以下の物語(文章)を読んだ。この文章は、「外的領域において〔人間の頭の外側で(人間に外在する客観的な領域において)〕」本当に起こっていることは何なのか、それを知る際に人間が持つ困難を強調したものである。私はこの話を人間の知覚におけるバイアスを例証したものとして解釈した。私はこの話をさまざまな人びとに説明し紹介した。人びとが如何に一つの状況を取り上げ、それを自分にとって都合の良いようにねじ曲げるか(歪曲するか)、それを示した好例がある、と。私によるこの物語の解釈の根底にあるのは次のことである。すなわち、人間とは、心が狭く、視野が狭くなりがちであり、真理に対して誠実になる、ということは決してない性向(傾性〔←果たしてこの用語を比喩として用いることが出来るだろうか?〕)を持つ存在である、と。

The Point of View
 「男って本当に滑稽よね」


<第1章第2節:新しいパースペクティブの出現は、新しいリアリティの出現を意味する
 https://archive.is/DcpzU#selection-1207.0-1207.32


1章第3節:「最も良い」パースペクティブというものは果たして存在するのか
どのパースペクティブも、すべて等しく「良いもの」である、ということが果たしてあり得るだろうか。若しくは、あるパースペクティブは、別のパースペクティブと比べて「より良いもの」である、と主張することは果たして可能であろうか。例えば、息子のパースペクティブは、その父親のパースペクティブと比べて「より良いもの」なのだろうか。芸術家のパースペクティブは、科学者のそれと比べて「より良いもの」なのだろうか。二つの事柄が比較されるときにはいつでも(パースペクティブについても同じことが言えるが)、比較のための種々の基準に関する同意ないしは合意がなければならない。だから例えば、マーサはマーシャに比べて「優れている」という状態が存在するには、その基準がIQであり、そのIQをどのように測定するのかについて、皆が同意していなければならない。また、比較の基準として、「物的リアリティを捉えている〔か否か〕」というものを採用し、その「捉え」方を測定するやり方について同意が可能ならば、ある絵画が別の絵画と比べて「優れている」ことになる。
 というわけで、あるパースペクティブは、別のパースペクティブと比べて「より良いもの」として存在している。すべてが等しく良い、ということはあり得ない。しかしながら、どちらのパースペクティブが「より良いか」を判断するためには、比較のための基準というものが確立されていなければならない。例えば、『聖書』に最も即したものが、最良のパースペクティブである、と主張する人もいるだろう。また、「合宿国の信条」〔米国のアイデンティティを構成する諸要素に関する声明であり、トーマス・ジェファーソンが最初に定式化したもので、その後数多くの人々によって推敲が重ねられた。それは、自由、平等、個人主義、大衆主義(ポピュリズム)、自由放任主義(レッセフェール)などから構成される。〕に最も近いものが最良のパースペクティブだと主張する人もいるだろう。そうなると、無神論は前者の場合には良くないパースペクティブだ、ということになり、人種差別主義的なパースペクティブは後者の場合には(そして、我々の多くにとって)良くないものだ、ということになる。

 我々を取り巻く世界において何が「本当に」起きているのか、それを正確に記述する〔=描写する〕パースペクティブを用いることに関心を抱いている。もちろん、学問の世界においては、正確な記述能力というものが、「良いパースペクティブ」を評価する最も重要な基準となっている。良いパースペクティブは、我々に洞察能力を与え、リアリティを正確に記述し、我々の真理の探求に役立つ。多くの科学者たちは、自然科学者も社会科学者も次のように主張する〔のが常である〕。我々のパースペクティブは、素人の〔←常識的な〕パースペクティブよりも、より優れたものである。というのも、我々のパースペクティブには、個人的なバイアスに対する厳格な統制が働いているからである、と。実際のところ、科学の成果は確かに、次の事実を裏付けている。すなわち、科学的パースペクティブは、自然界や社会的世界を取り扱う〔他の〕大部分のパースペクティブよりも優れている、と。もし、全く同じ問題を検討している、科学的パースペクティブと非科学的パースペクティブの二つがあり、何れかを選べといわれれば、私が後者を選ぶことはまず無いだろう〔←普通ではない〕(→仮定法)。というのも、自然界や社会的世界に関する問題に正確に答える、という点からするならば、たいていの場合には、前者の方が後者よりも信頼性が高いことは、私にとって明らかなことだからである。しかしながら、この信頼性の問題は〔←上記のことは〕、かなりの部分(多分に)、そこで問われている問題の性格に依存する〔~に因る〕。
数多くの重要な問題に対して、科学が正確に答えているかといえば、とてもそうであるとは言えない。加えて科学者たちには、他の諸々のパースペクティブも取り扱っているリアリティの全層を取り扱う能力はない。科学者がまさにその検討の対象としてる自然界や社会的世界においてさえ、まだ注意が向けられておらず探求(look for)すらされていない、〔あるいは〕科学的に検討することがあまりに困難な、種々のリアリティが存在する。より正確であるという理由から、科学のパースペクティブは他のどのパースペクティブよりも優れている、という主張は、あらゆる問題に関して正しいとは言えないのである。
「最も優れた」パースペクティブとは何かという問題は、最も正確な科学的パースペクティブは何かを決めようとするとき、非常にやっかいなものとなる。確かに科学者たちは科学的パースペクティブを共有している。だが、リアリティにおいて何に焦点を当てるかにおいて互いに異なっており、どのパースペクティブが現実を最も良く捉えているか、その基準を確立しようとすることは困難きわまりないことだと言えよう。またもしそれが可能になったとしても、おそらくは何の役にもたたないだろう。科学的パースペクティブは、次のように捉えるのがベストである。すなわち、各々の科学的パースペクティブは、自然界や社会的世界のそれぞれ異なった側面に焦点を当てており、我々がその各々の側面をより明瞭に理解することを促進するものである。種々の科学的パースペクティブを比較することは(あらゆるパースペクティブを比較することに至っては、実に)困難な課題である。しかし不可能ではない。慎重にそのための基準を確立すればのことであるが。

 <結論>
  ここで、基本的な論点とパースペクティブの具体例をいくつかリストアップすることで、本章の内容をまとめておいた方が良いと思われる。
 1.パースペクティブとは観点のことである。換言するならば、メガネないしは感光[http://gyo.tc/RDzS]薬のようなものである。それは、我々のリアリティに対する知覚を方向付ける。
 2.パースペクティブは、さらに、概念枠組みとして描くことが出来る。それは一組(一連の)の諸前提、価値、信条(~のセット)から構成され、我々の知覚を組織化し、我々の行動を統制するために用いられるものである。
 3.個人は、それが自らにとって持つ有用性という観点から、パースペクティブの善し悪しを判断する。
 4.個人は数多くのパースペクティブを持っている。それは相互作用から生じ、個々人の役割と関連付いている。
 5.あるパースペクティブは別のパースペクティブと比べて「より優れている」と考えることが出来る。これは次の〔二つの〕条件が揃った場合に可能となる。すなわち、「より優れている」ということがより正確であることを意味する、ということに我々が同意でき、その正確性を我々が測定することが出来る、という条件がそれである--困難な課題ではあるが--。科学においては、あるパースペクティブは他のパースペクティブと比べてより正確なものであるかも知れない。とはいえおそらくは次のように主張する方がより的確だと思われる。すなわち、各々の科学的パースペクティブは、それぞれ、リアリティの異なった側面に焦点を当てているのである、と。
 パースペクティブは、それがどの程度公的(formal)かによって異なるものと捉えられる〔Charon-memo.docxの「1)」へ〕。確かに我々は、次のようなパースペクティブを持っており、それを日常的に使っている。男性としてのパースペクティブ、女性としてのパースペクティブ、学生としてのパースペクティブ、恋人としてのパースペクティブ、購買者としてのパースペクティブ、音楽狂[http://gyo.tc/REjE]のパースペクティブ、友人、アマチュア・カウンセラーのパースペクティブ。これらのパースペクティブを、より公的で組織化されたパースペクティブと区別することはおそらく有用なことであろう〔・・・区別するとおそらく便利だ〕。例えば、クリスチャンのパースペクティブ、アメリカ人のパースペクティブ〔→Cf. American Creed、アメリカ人の国民性。「国家」ないしは「国籍」という基準のFormal性?〕、社会学者、心理学者、歴史学者のパースペクティブなど。さらにこれらは、(やろうと思えば[=仮定法])科学的なものと非科学的なものとに分けることが出来るだろうし、またその上で、前者をさらに下位の類型に分類することも出来るだろう。以下の一覧表は、個人がリアリティを吟味する際に用いるであろうパースペクティブの多様性を図解で例証したものである。これは包括的なものを意図して作られたものではない。人間が使い得るパースペクティブの多様性を示唆したものに過ぎない。
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①相対的に公的〔=おおやけに[http://gyo.tc/R2Zh]定められた形式;Formalの類語[http://web-beta.archive.org/web/20120602101756/http://ejje.weblio.jp/content/%E6%AD%A3%E5%89%87];形式に拘る、ある一定の形式に基づいている、パターン化されている;明確ではっきりとしていて、規定の型に従った⇔自由な〕ではない日常的なパースペクティブ
 学生のパースペクティブ
 娘のパースペクティブ
 母親のパースペクティブ
②公的ではあるが、科学的ではないパースペクティブ。
 切手収集家のパースペクティブ〔なぜここで「切手収集家」?〕
 芸術家のパースペクティブ
 詩人のパースペクティブ
 黒人のパースペクティブ〔そうかな~?。Charonの偏見じゃないか?。事実、第3版では「アジア人」になっているし。しかし「アジア人のパースペクティブ」も公的かな? 「アジア人」という括りは公的だろうが。〕
 アメリカ人のパースペクティブ〔これも多分に怪しいが、、〕
 クリスチャンのパースペクティブ
③公的で科学的なパースペクティブ
 生物学
 物理学
 化学
 天文学
 心理学
 文化人類学
 経済学
 社会学
④社会学内部におけるいくつかのパースペクティブ
 マルクス主義
 パーソニアン(構造機能主義)
 シンボリック相互作用論https://archive.is/bAjIK#selection-1381.0-1381.51][http://id.nii.ac.jp/1066/00000157/][http://hdl.handle.net/2065/34499
 ウェーバリアン(Max. Weberの理論に傾倒するもの)
 デュルケミアン(E/. Durkheimの理論に傾倒するもの)
 システム理論
 交換理論

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 誰しも各々、個人というものは〔←Any one of individual:かなり無茶な意訳〕、上に列挙した類のパースペクティブのうち、そのいくつかから〔その頭の中が〕構成されており、ある状況において、そのうちの何れか一つを選択する可能性がある〔~かもしれない〕。事実、ひとたびその状況に置かれれば、当の個人は自分が持っている種々のパースペクティブを変化させることがあるし、他者たちの相互作用において、自らが当初抱いていたパースペクティブが現在進行形の形で〔→刻一刻と〕変化している、という実感さえ得ることがある。人は一日のうちに、学生になったり、娘、母親、芸術家、黒人、アメリカ人、クリスチャン、生物学者、社会学者、マルクス主義者、パーソニアンになったりするかも知れない。〔それぞれの人間になることで〕、その各々のパースペクティブから異なった世界が見えるだろうし、旧知の事柄に対する新しいまなざしも開けるだろう(Cf. https://web-beta.archive.org/web/*/http://megalodon.jp/2013-0804-1746-03/web-beta.archive.org/liveweb/http://archive.is/Hgvhg)。
 本書は、非常に刺激的なある一つのパースペクティブに関する文献である。それがシンボリック相互作用論である。このパースペクティブは、ある意味で独特な(他とは異なる、普通のものではない)ものである。それは社会科学のパースペクティブではあるが、他の多くの社会科学のパースペクティブとは非常に異なったものである。シンボリック相互作用論の諸概念を理解するにあたって、従来の社会科学的パースペクティブのいくつかを説明しておくことが重要かもしれない〔~が重要・有益ではないだろうか〕。本書第2章の目的がそれである。



<シンボリック相互作用論の一般的歴史的・哲学的背景>
 シンボリック相互作用論は通常さかのぼることが出来る。G.H.ミードの研究業績に。彼はシカゴ大学の哲学を担当していた教授の一人だった。ミードは数多くの論文を書いた。とはいえ、彼のシンボリック相互作用論に対する影響の多くは、<学生たちによる彼の講義録や講義メモの出版>によって(を通じて)〔も〕もたらされている。他のさまざまな社会学者たち、とりわけミードの学生の一人であった、ハーバート・ブルーマーによる彼の研究業績の解釈に加えて。
 おそらく、ブルーマーは、シンボリック相互作用論のパースペクティブを統合し解釈した人間の中で最も重要な存在である。私はかつて、大学院の同僚の教授の一人に尋ねたことがある。アドバイスを求めて。シンボリック相互作用論の〔知的〕背景を良く知るには何を読めばいいかに関して。彼女の答えはこうである。「ええと、そうねぇ、これまでシンボリック相互作用論について書かれてきたことはすべて、ハーバート・ブルーマーが書いているわね」。その時は、私は彼女の見解を一笑に付し看過しようとしていたが、ブルーマーの文献の読了に取り組むうちに、彼女の意見が如何に正しいかに気づかされた。ブルーマーが唯一の優れたシンボリック相互作用論者である、というわけではない。とはいえ、彼の研究はまず間違いなく<他の論客たちが書いてきたものを解釈し統合したものとしては最良の内容>を表現(示した)したものである。と同時に、彼の研究は、このパースペクティブの社会的な意味(意義)〔→社会に関する示唆=社会学的な意味〕と独自の洞察(=明察、鋭い見方keen insight、複雑な状況に関する明解な理解)のいくつかを引き出している。
 ブルーマーが援用し、またシンボリック相互作用論の先駆者となったのはミード一人ではない。二、三の例を挙げるなら、シンボリック相互作用論のパースペクティブは次のような学者たちの研究にさかのぼる。ジョン・デューイ、ウィリアム・ジェームズ、ウィリアム・イザック・トーマス、そしてチャールズ・ホートン・クーリー。ブルーマーは主として、1950年代から60年代にかけて執筆活動を行ったが、上記の研究内容の多くを統合した(まとめ体系化した)。加えて、とりわけ次のような学者たちが、彼らに先立つ研究者たちの研究を統合しその理論的・経験的適用例を示すことで、このパースペクティブに貢献してきた。マンフォード・H・クーン、アーノルド・ローズ、ノーマン・デンジン、グレゴリー・ストーン、アルフレッド・リンドスミス、アンセルム・レオナルド・ストラウス、ジェローム・メインズ(?)、バーナード・メルツァー、そしてタモツ・シブタニ。シンボリック相互作用論はまた、他のパースペクティブにも着想を与えてきた。例えば、逸脱研究におけるラベリング理論、アーヴィン・ゴフマンの演劇的相互作用論(ドラマツルギー)というパースペクティブ、そして間違いなく、ハロルド・ガーフィンケルのエスノメソドロジーにも。
 図3-2は、シンボリック相互作用論のパースペクティブの展開〔過程〕を説明したものである〔注:Mainstreamとは、おそらくは、ハバーマス、ルーマン、新機能主義、意味学派[including バーガーらの現象学的社会学]、構築主義では?〕。
 シンボリック相互作用論というパースペクティブの一般的な立場を理解する一つのやり方として、その主たる創始者であるミードが受けた主要な影響をまとめる、というのが挙げられる--以下の記述はStrauss, 1964, Desmonde, 1957に依る--。そうした影響には三つのものがあった。その各々がその後、シンボリック相互作用論者のすべてにとって重要なものとなっている。すなわち、
 1.プラグマティズム哲学
 2.ダーウィンの進化論
 3.行動主義
 ミードは、プラグマティズムと呼ばれる哲学の学派の展開において重要な人物の一人である。プラグマティズムは、ミードの--そしてシンボリック相互作用論者たちの--真理へのアプローチ(接近方法)においてとりわけ重要なものである。この哲学は、その基礎に(以下のような)四つの一般的原理を持っており、我々はそれらをこのパースペクティブ(=プラグマティズム)を完全に再現しているものとして捉えることにする。

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