ティンカーベルの子   作:宵月颯

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変異・1

 

戦場の風向きは常に変わる。

 

それは平等な時もあれば、不平等な時もある。

 

だが、これは嵐の前の静けさではない。

 

大きな流れの予兆だ。

 

 

「…」

 

 

ある日、ウォルターは考え事をしていた。

 

壁越えを果たしたレイヴンへの依頼は以前よりも増していた。

 

中でもルビコン解放戦線から依頼されたべリウス地方にあるBAWSの第二工廠の調査。

 

平行してケイトと呼ばれる独立傭兵と共にその施設への強制監査を行う惑星閉鎖機構の部隊の妨害。

 

この二つの依頼で起こった出来事は例のデリーターACに深く関与しているとウォルターは推測した。

 

第一にBAWSの第二工廠は人員どころか施設防衛の為のMTが全て破壊されていた。

 

何者かによる口封じの可能性も否定出来ない。

 

レイヴンがグリット136の閉鎖区域で遭遇した未確認のACと同型と思われる集団の襲撃を受けた。

 

更にその後、同じくBAWS第二工廠で合流予定だったケイトと共に惑星閉鎖機構のAC並びにMTの混成部隊と交戦。

 

無事、撤退させる事に成功した。

 

…デリーターACの猛威は止まらず。

 

ガリア多重ダムを落とした事で解放戦線の重要人物らを捕虜として手に入れたベイラム社のレッドガン部隊。

 

だが、彼らが遠征に出ている間に収容所はデリーターACの襲撃を受けた。

 

更にドサクサに紛れて解放戦線の別動隊によって重要人物らを奪い返されると言う始末。

 

収容施設の防衛に就いていたミシガンの腹心であるG2ナイルの部隊も壊滅し彼自身も負傷した。

 

あのラークと言う少女の救援が間に合った事でミシガンは自身が信頼に置く参謀を失わずに済んだ様だ。

 

同時刻、例の壁の防衛拠点を手に入れたアーキバス社のヴェスパー部隊もデリーターACの襲撃を受けたらしい。

 

こちらの防衛にはフェアリーと他のナンバーズが対応し難を逃れた。

 

日々、増加しつつあるデリーターACは何を理由に行動しているのか…未だに不明。

 

ウォルターは思う。

 

一連のデリーターACによる襲撃事件は無差別的ではなく何かを狙っている様子が見受けられると…

 

ベイラム社のレッドガン部隊とアーキバス社のヴェスパー部隊に同時期にルビコン3で活動している新型AC。

 

その搭乗者であるラークとフェアリーと言う少女。

 

デリーターACの気配を感じ取る稀有な素質と彼女達の専用AC以外の対抗策がない。

 

以前、回収したデリーターAC残骸とフェアリーのACが同系列の技術が使用されているのではないかと調査をした事がある。

 

結果的に同系列の技術ではなく、フェアリーのACがデリーターACの技術を上回る技術で製造された事が判明した。

 

恐らくラークと言う少女の機体もそれに該当する。

 

これらを纏めるのは少しデータ不足だが、今回の任務を遂行してから結論を出すべきだろう。

 

ウォルターは例の依頼者からメッセージが届いたのを知ると621のACに詳細内容を転送した。

 

 

******

 

 

『これは…ある友人からの、私的な依頼だ。』

 

 

ウォッチポイントと呼ばれる場所がある。

 

惑星閉鎖機構がルビコン3の地脈に眠るコーラルの支脈を管理する施設の名。

 

かつては流量制御を担っていた施設だ。

 

ウォルターはある人物からの依頼により、レイヴンにウォッチポイントの調査を指示した。

 

 

『お前にはこの施設を襲撃して貰う。』

 

 

目標は施設の最奥にあるセンシングバルブの破壊。

 

猶、当該施設は惑星封鎖機構の監視部隊が警備に当たっている。

 

企業達も表立っての手出しは避けるだろう。

 

つまり、今回の依頼はレイヴンが単体で向かうと言う事だ。

 

 

「…」

 

 

単機での夜間潜入である以上、頼れる僚機も援軍もない。

 

 

『621、何が起こっても不思議ではない…気を引き締めてかかれ。』

 

 

ウォルターの言葉の意味を借りるならデリーターACとの遭遇も視野に行動しなければならない。

 

レイヴンは輸送ヘリの中で静かにため息を付いた後、気を引き締め直した。

 

 

~ウォッチポイントへ到着後~

 

 

今回の任務の天候は嵐とまでは言えない強風に視界の悪い雨だった。

 

夜間である事も含めて、監視部隊に奇襲をし掛けるには丁度いい。

 

 

『621、準備は良いか?』

 

 

指定ポイントへ到着後、ウォルターに声を掛けられた。

 

 

『独立傭兵が単機で仕掛けてくるとは封鎖機構も想定していない。』

 

 

特に独立傭兵は依頼内容にもよるが、自らに火の粉が降りかからない様にしている。

 

今回の依頼は余程の命知らずかイカれた奴の暴走と取られても仕方がない。

 

 

『行ってこい、仕事の時間だ。』

 

 

ウォルターは『仕事の時間』と言う合図を送る。

 

これはレイヴンの生きる意味を与える言葉。

 

必ずとは言えないが戻って来いと告げているかのように…

 

 

=続=

 

 


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