復興施設 建設はできたけれど…維持費ずしり 石巻

原篤司 岡本進
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 宮城県石巻市の複合文化施設「マルホンまきあーとテラス」が1日、JR石巻駅の北約3キロの開成地区にオープンした。真っ白なたくさんの家が合体したような外観で、大小のホールやアトリエ、和室、研修室などがある。コロナ禍で式典は見送られ、静かに開所した。

 震災の津波で全壊した市文化センターと、一部損壊し老朽化も顕著だった市民会館の機能の二つを合体、新設した形だ。大ホールは旧市民会館(1362席)に近い規模の1254席で、現在、他に市内に二つあるホールはいずれも400席強。市教育委員会の担当者は「大きなホールを使うイベントは10年間出来なかった。待望の施設だ」と胸を張る。

 総事業費は約130億円。その半分以上は震災復旧復興関連の国費で、残りは寄付金や市の借金など。建てる時には国の支援があるが、維持管理は市の負担。まきあーとテラスの年間維持費は2億7500万円で、震災直前の旧2施設の合計の2倍以上となる。

 復興期間が終了し、国の手厚い支援で年間2千億円以上まで膨らんだ市の予算は、今年度に震災前に近い700億円台に戻る。市には、震災前より増えたり、立派になったりした施設の維持費が重くのしかかる。

 旧北上川の河口近くでは、「石巻かわみなと大橋」という長さ536メートルの新たな橋の建設が進む。総事業費約92億円のうち市負担は数億円で、残りは全額国費。これも来年3月の完成後は、市が市道として維持管理する。

 ほかの復興事業との優先度合いや将来の維持費の負担などから、市役所内では必要性を疑問視する声もあったが、亀山紘市長が推し進めた。500メートルほど河口側には「日和大橋」という同じ規模の橋があり、復興庁も「予測される利用者が少ない」などの理由で、市の建設要望を最初は退けた。

 当時の市の関係者は、こう明かす。「もともとは、地域の再建が遅れていた魚市場側を整備するための事業という意味合いがあった。ただ、国に認めてもらうためにも『避難道路として必要だ』と前面に掲げて訴えた」

 国に要望する復興事業の優先順位を、市の内部であらかじめ決め、復興庁と予算交渉に臨んだときがあった。この橋よりも優先順位が高い事業がありながら、当日の副大臣との折衝の場で、亀山市長が急きょ順番を入れ替え、橋の予算化を最優先で求めたという。

 結果的に、国土交通省社会資本整備総合交付金の復興枠として認められた。のちに、市長は取材に「予算がつくとは思わなかった」と語った。

 「市の人口は減っていくのだから、震災後にできた施設の維持費も国に面倒をみてもらわないと、市の財政はいずれ立ちゆかなくなるだろう」。市の元幹部のひとりはそう指摘したうえで、こう続けた。

 「将来の財政負担を気にかけ、復興事業を圧縮した首長もいたなかで、亀山市長にそうした姿勢は感じられなかった。各部からの事業要求を、ほぼそのまま国に伝え、市長自身がストップをかけることはほぼなかった」

 被災者の生活再建のために必須だった4千戸以上の復興公営住宅の建設には、建物だけで計1071億円かかった。これもほぼ全額が国費だ。国による家賃の減額補助(供用開始後10年間)や建物の維持費の補助(同20年間)は、2019年度で計約39億円。市は補助期限切れ後の維持補修に備え、基金に約158億円(19年度末現在)を積み立てている。しかし、将来予想される人口減で入居者が減るとどうなるか。先行きは不透明だ。

 震災を機に築かれた施設を活用しながら、どう財政を保つか。新市長は難しいかじ取りを迫られる。(原篤司、岡本進)

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この記事を書いた人
原篤司
高知総局

防災、司法、民主主義、漁業、起業、韓国文化