下記コメントがはてなスターをあつめ、はてなブックマークの注目コメントの8位につけているところを見て、あらためて考えてみたい。
[B! 表現の自由] 作品が批判されて委縮することを拒否したくて都知事候補「ひまそらあかね」を支持した表現者は、とりあえず世にだした作品が批評されるのに耐えられないのはナイーブ過ぎると認めるべきだと思うよ - 法華狼の日記
id:hunglysheep1 フェミニストは「見たくない表現に触れない権利」を欲しがってるから問題になるんだと思うよ https://togetter.com/li/1870892 他人の権利を凄くカジュアルに制限したがるのがな…
以前にふれた話題*1でいえば、アニメ映画『ガールズ&パンツァー 劇場版』の公開時に、冒頭の予告編でカニバリズム映画『グリーン・インフェルノ』が流れて、抗議*2によって配給会社が謝罪し、予告もさしかえられたことがある。
アニメ関係の抗議は何度か言及してきたが*3、過去にふれたことがなかった事例でも『デジモンアドベンチャー tri.』のキャラクターデザイン改善要求で5千以上の署名があつまった事例などがある。
オンライン署名 · デジモンアドベンチャーtri.キャラクターデザインの改善を提案 - 日本 · Change.org
2015年11月21日上映予定の映画「デジモンアドベンチャーtri.」のキャラクターデザイン案についての改善を求めます。
現在、公式が公開しているキービジュアル・ティザーPVでのキャラクターデザインにおいて、ネット上では「違和感がある」という意見が多く生まれております。
広告関係では、冒頭のはてなブックマークでid:sand_land氏が「品川駅の“社畜”広告やネット上の鼻の角栓やら歯垢やらの広告」がフェミニストでなくても拒絶されてきたことを指摘している。
品川駅の広告炎上騒動で考える、ネットのバナー的な広告メッセージが抱えるリスク(徳力基彦) - エキスパート - Yahoo!ニュース
品川駅のコンコースに表示された「今日の仕事は楽しみですか」という広告が物議を醸し、広告を出稿していた広告主が謝罪し広告を停止するという騒動がありました。
医療関係では脅迫的なメッセージの広告がたびたび注目されては問題視されてきた。献血ポスターへの批判理由のひとつだったし、厚労省が吉本興業に委託したポスターに批判が殺到して発送中止にいたったこともある。
小籔さん起用の「人生会議」ポスター、批判受け発送中止:朝日新聞デジタル
ポスターが公表された25日から、SNSなどで「ふさわしくない」「不安をあおる」などの投稿が相次いだ。
他にJR九州がゆるキャラを宣伝につかおうとした時、西郷隆盛キャラクターが拒絶され、同年につくられたばかりのクマのキャラクターにさしかえられたこともある。
西郷さんNG、クマに変更/新幹線熊本駅のPRキャラ | 全国ニュース | 四国新聞社
JR九州は当初、西郷隆盛をモチーフにした「西郷どーん」をデザインしたボードを博多駅や鹿児島中央駅と同時に、熊本駅にも設置する予定だった。しかし、県民らが「西郷隆盛は鹿児島をイメージさせるため、熊本には似合わない」などと不快感を示したため、熊本駅での設置は見送られていた。
くまモンが全国的な人気となった背景のひとつに、拒絶感の出にくいキャラクター性があったわけだ。
このように「見たくない表現に触れない」ことを要求してきたのはフェミニストにかぎらない。
仮にフェミニストの抗議が多いとすれば、現代社会の意思決定の場に女性が少ないことで女性が見たくない表現がフィルタリングされづらく、結果として実作への抗議が多くなる可能性も考えられる。一方、根拠が不当であっても押しとおせる権力者ゆえに抗議をくりかえす自民党のような事例もある*4。
ちなみに私自身は基本的に表現することも批判することも権利として認められるべきとは考えていて、なおかつ根拠が妥当で喫緊の抗議であったとしても表現そのものは完全にはとりさげず次回に活用するか注釈などで対応してほしいと考えることが多い。ただしそれが非マイノリティゆえの余裕がなせる態度である可能性も認識はしている。
*1:『オッペンハイマー』との悪趣味クロスオーバー「#Barbenheimer」へ『バービー』公式広報がのっかったとして、実際の作品を見ずに批判していいのだろうか? - 法華狼の日記
*2:「なんとかなりません?ハッキリ言って不快なだけなんですが」というツイートをおこないつつ、「苦情」であって「クレーム」ではないという差異を重視しているところが興味深い。「映画を観に行ったら不快な予告を見せられた。」この場合、映画館に対して一言言うのは「あり」なのか? - Togetter [トゥギャッター]
*3:こちらのエントリの末尾など。 あまり「萌え」がわからぬ動物として、少し源流の記憶をたどってみる - 法華狼の日記
*4:以前に言及したものとしては、表現への抗議と攻撃 - 法華狼の日記やNHKが政府与党の圧力に屈して軍艦島ドキュメンタリ『緑なき島』を封印したらしいという報道 - 法華狼の日記等。