暑い日々が続きます。読者の皆さん、体調など崩されていないでしょうか。今回の対話は体調管理についてです。
○部下:「本当に暑いですね……熱帯夜が続きます」
●営業課長:「今年は涼しい夏になると思っていたが正直なところキツいな」
○部下:「キツいなんてものじゃないです。だるくて仕方ありません」
●営業課長:「ちゃんと寝ているのか」
○部下:「それが駄目です。昨夜は飲み会で2次会まで付き合ったら、帰宅が12時過ぎになってしまいまして。妻がクーラー嫌いなので扇風機をつけて寝ましたが夜中の2時まで眠れませんでした。汗が気になって5時に起きてしまったので、なんだか頭がクラクラします」
●営業課長:「おいおい大丈夫か。ところで昨日の朝、君に頼んだ市場分析のまとめはどうなった。それができないとプロジェクトが先に進まない」
○部下:「あ、すみません。今日、何とかやります。飲み会へ行ってる場合じゃありませんでした」
●営業課長:「2時間もあれば終わる仕事だ。昨日の午後ずっと社内にいただろう」
○部下:「その通りですが……。なんだか仕事に対するモチベーションが落ちているというか……」
●営業課長:「勘違いするな。モチベーションじゃなくて体調の問題だ。具合が悪いと思考ノイズが出てきて脳のワーキングメモリーに余裕がなくなる」
○部下:「脳のワーキングメモリー?」
●営業課長:「そうだ。人間の脳がデータを処理するためには、ワーキングメモリーに十分な余裕がないといけない。だが体調が悪くなると、頭が痛いとか、腹が痛いとか、さっきの君のように寝不足で疲れがたまっているとか、考えるようになる。それが思考ノイズだ。そういうノイズが脳のワーキングメモリーを占拠し始めると、本来のデータを処理するためのメモリーがなくなる」
○部下:「ははあ、パソコンと同じでメモリーに余裕がないと正しく頭を働かすことができないわけですね」
●営業課長:「その通り。頭が整理できない状態になっていく」
○部下:「そう、そうなのです。今の私の状態ですね。仕事が山積みなのに、どこから手を付けていいのか分からなくて、なんだかいらいらします。それを紛らわせようと飲みに行ってしまいました」
●営業課長:「やらなくちゃいけない仕事を先送りして飲んだところでスッキリしないだろう」
○部下:「『あれをまだやっていない』『もう一つの件も手を付けていない』『ひょっとしてやらなくても課長に怒られないかな』とか、帰宅途中でグダグダ考えていました。なるほど、まさにノイズですね」
フルマラソンの完走者は30万人近くに
●営業課長:「とにかく体調だな。こうして顔色を見ていても明らかに本調子じゃない。君はまだ31歳だろう。何か運動をしているか」
○部下:「毎日すごく疲れているので、とても無理です。そういえば課長は40歳を過ぎているのに毎日走っているそうですね」
●営業課長:「月間100キロを目標に走っている。スポーツジムに週2回は行って月に10キロは泳ぐ」
○部下:「……信じられません。仕事だって人の3倍はやっているじゃないですか」
●営業課長:「知り合いに月間200キロランニングし、50キロ泳ぎ、1000キロ自転車で走り、ついでに年間3回、トライアスロンの大会に出場している人がいる」
○部下:「そんな人、普通じゃないですよ」
●営業課長:「A建設の社長だよ」
○部下:「えっ! あの社長が? 60歳前後ですよね……」
●営業課長:「そういう人は結構いるぞ。私なんて、たいしたことはない。フルマラソンは1年に1回ぐらいしか出場していないし」
○部下:「私の周囲には誰もいません。課長やA建設の社長は異常ですよ」
●営業課長:「昨年2014年の数字だが、フルマラソンの完走者は絶対数で30万人近くにまできているそうだ。これを異常値というかどうかだな」
○部下:「ええっ! 30万人!」
●営業課長:「『疲れているから運動できない』と考えるな。『運動しているから疲れない体が手に入る』と受け止めろ。何事も逆算思考だ。先のことを考え、今どうするか考える方がいい。今日は駄目だったみたいだが、気持ちよく、朝を迎えた日はあるのか?」
○部下:「ここ数年ほとんどありません。今日は本当に最悪でした。眠いし、頭痛いし、胸やけはするし……ああ、これもノイズですね」
●営業課長:「私は毎朝スッキリ目を覚ます。今日は5キロぐらいジョギングしてからシャワーを浴び、子どもたちに味噌汁を作り、早朝の電車の中で1週間のタスクを見直した。まだ誰も来ていないオフィスでタスクをいくつか片付け、みんなが出社してから通常業務に入った」
○部下:「そうでした。お子さんの面倒を見られているのですよね」
●営業課長:「妻がいないからな。だから体調を崩すわけにはいかない」
○部下:「日中、冷たい飲み物をほとんど口にしないですよね」
●営業課長:「飲み会でビールは飲むが腹を冷やさないように心掛けてる。夏でも温かいうどんを食べたりする」
○部下:「ストイックですね……」
●営業課長:「違うよ、単なる習慣だ。時間の余裕はそれほどないが、いつも心に余裕は持っている」
○部下:「だから頭が回って仕事をこなせるわけですね。私のように心に余裕がないと、脳のワーキングメモリーもいっぱいいっぱいになってしまうと。とにかく今から2時間以内に市場分析のまとめをやります」
ネガティブ思考ではなくてもノイズが発生する
「仕事をやりたくない」「面倒くさい」「モチベーションが上がらない」などとグダグダ考えれば考えるほど、脳のワーキングメモリーに思考ノイズが貯まり、脳の処理スピードが急激に落ち、頭の整理ができず、考える力が落ち、解決策を見つけられなくなります。
ネガティブ思考の人でなくとも、体調が悪くなると思考ノイズが発生します。そうならないように、仕事ができる人、一流と呼ばれる人は体調管理に余念がありません。不摂生で、無茶なことばかりやりながら、それでも結果を出す人もいるでしょうが、真似できるものではありません。
体調管理で重要なのは「食事」「運動」「睡眠」の3つでしょう。いずれも個人差がありますから、自分にとってどのような状態が最適であるかを見極め、体調を整えておきましょう。
特に意識すべきなのは「運動」です。「食事」「睡眠」は内容はともかく毎日必ず意識するものです。ただし「運動」だけは習慣にしないと、何も運動しないまま、毎日を過ごしてしまいます。
その人の状態によりますが、夏であっても適度に運動する習慣を身に付けると気力も体力も付いてきます。体調管理には気を配りたいですね。
(この記事は日経ビジネスオンラインに、2015年8月4日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)
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