大雨で県道崩落 出雲 日御碕地区“孤立状態”に

前線の影響で9日大雨となった出雲市では県道が大きく崩落し、市は一部の地区で住民が孤立状態になっているとしています。

県が撮影した出雲市大社町の県道29号です。
片側一車線の道路が崩れて車が通れなくなっています。
9日午後7時までの12時間に降った雨の量が200ミリと、統計を取り始めてから最も多くなった地点もあった出雲市。
市によりますと、道路が通れなくなった影響で日御碕地区の住民が孤立状態になっているということです。
地区には235世帯548人が住んでいますが、電気や水道は通っているということです。
測量などを手がける出雲市の会社が10日午前6時ごろにドローンを使って撮影した映像では、片側一車線の道路の路面が、最大で25メートルほどにわたって崩落し、崖下の海に向かって大量の土砂が流されているほか、巨大な木が倒れているのも確認できます。
また崩れた道路のすぐ脇には、車が1台取り残されている様子も確認できます。

道路の一部が崩落した出雲市の現場では、10日正午ごろ取り残されていたタクシーの撤去作業が行われ、トラックの荷台に引き上げられました。
タクシー会社によりますと、タクシーは9日夕方、日御碕地区に乗客を送ったあと、市街地に向かって運転していた際、直前で道路が崩落していることに気づき、とっさの判断で道路脇に停車したということです。
ドライバーは車の外に出ることができ、けがはないということです。
会社の測量によりますと、道路から海までの崖の高さはおよそ35メートルで、崩れた斜面の長さは77メートルにおよぶということです。

NHKでは10日午後1時すぎ、ドローンを使って出雲市にある県道の崩落現場を撮影しました。
映像では、道路が大きく崩落し、崖下の海に向かう斜面も土がむき出しになっているのが分かります。
また、市が孤立状態にあるとしている日御碕地区の方向にカメラを向けると、住宅とみられる建物が点在しているのも確認できます。
現場は、観光名所として知られる出雲日御碕灯台から直線距離で2キロほど離れた場所です。

県道とは別に住民が歩いて通れる道はあるということで、10日朝は、地区から市の中心部に出勤する人の姿もみられましたが、疲れた様子でした。
日御碕地区に住む男性は、「道路は大きくえぐれていた。ずっと歩いてきたので疲れました」と話していました。
地区に通じる県道が崩落した出雲市の日御碕地区で民宿を経営している高橋英明さん(74)は、「生活の部分を含めて、物資などの調達が難しくなる。すぐに困ることはないが、近日中の宿泊予約はキャンセルになるし、影響が長期化する場合はこちらからお断りをしないといけない」と話していました。
また、高橋さんによりますと、地区にはかかりつけの病院に通うのが難しくなった人もいるということで、生活や健康への影響が懸念されます。
高橋さんは、「近年、このような規模の災害はあまりなかった。不安はあるが、とにかく道路の復旧を待つしかない」と話していました。

県道が崩落して孤立状態になっている出雲市の日御碕地区には、10日午後3時ごろ、島根県立中央病院などの医師や看護師からなる「島根DMAT」のチームが徒歩で向かいました。
県立中央病院の医師は、「地区には医師がいないので、どのような医療ニーズがあるのか聞きにいく」と話していました。
島根DMATによりますと、地区に住む人工透析が必要な患者についてはすでにドクターヘリで病院に搬送したということです。
一方、出雲市は地区のホテルなどに取り残されていた観光客のためマイクロバスを用意し、大勢の観光客が現場近くまで徒歩で移動し、バスに乗り込んでいました。
大阪府から来た20代の女性は、「帰れるか不安だった。帰りの飛行機の時間に間に合わないかもしれない」と話していました。
現場を視察した出雲市の飯塚市長は、「地区の皆さんが求めているものを把握し、国や県と協力してできるだけ早く物資などをスムーズに運べるようにしたい」と話していました。

県は今後、本格的に復旧作業を進めることにしていますが、現時点でめどはたっていないということです。

島根県は9日からの大雨で一部の地区で住民が孤立状態になるなど被害が出ている出雲市について、災害救助法の適用を決めました。
出雲市では大社町の県道29号が大きく崩落して日御碕地区の住民が孤立状態になるなど被害が出ています。
県は、今後も大雨となって市民への被害が広がるおそれがあることから、出雲市に対して災害救助法の適用を決めました。
これによって支援の実施主体は県となり、避難所の設置や運営について、市は国や県の補助を受けることができるということです。

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