資本だけでなく有能な人材も去っていく
かつて強力な自動車と化学産業で世界の輸出王であったドイツが、“緑の思想に囚われた政治”により、国際競争の敗者になりつつある。政府は「エネルギー転換」と称して、脱原発、脱内燃エンジン、および脱石炭、脱オイルを目指し、なんと、ガス管網の撤去にまで手をつけ始めた。
24年3月には連邦会計監査院も、このままでは20年代の終わりには制御できる電力が不足し、需要と供給のバランスが取れなくなると警告を発している。要するに、このままではドイツという大船は間違いなく氷山に向かっていき、座礁、沈没は免れない。
それにしても、再エネだけで産業国の電気が賄えないことは誰にでもわかるはずなのに、なぜドイツ政府だけが、いつか再エネ100%が実現し、電気代はタダになるという果てない夢を拡散し続けているのかが謎だ。
国民はすでに、どうもおかしいと気付いてしまい、それが先日の欧州議会選挙の結果をもたらしたが、しかし、社民党にも緑の党にも反省の色はなく、緑の党に至っては、「敗北の理由は再エネへの転換が野党に阻まれてうまく進んでいないせいだ」などと寝ぼけたことを言っている。
なお、注目すべきはメディアの動向だ。これまでは、「脱炭素は経済成長をもたらす」とか、「カーボンゼロは可能だ」などという政府の主張を拡散してきた彼らだが、今、慌てて折り返し点を模索中。少なくともこれからは、「最初の困難さえ切り抜ければ、ドイツは再エネへの転換で世界の勝者になれる」などと、国民を鼓舞することだけは無くなるだろう。