脱炭素、難民流入、インフラ崩壊…世界の「見切り品ショップ」に成り果てたドイツが歩み続ける「発展途上国への道」

川口 マーン 惠美 プロフィール

この数字が発表された日、フランクフルター・アルゲマイネ紙は下落の原因を、高いエネルギー、高い税金、そして、インフラの悪さであると分析した。

●Standort Deutschland wird immer unattraktiver(Frankfurter Allgemeine, 18.06.2024)

ちなみに国際競争力の1〜3位は、シンガポール、スイス、デンマークだ。中国は14位、サウジアラビアが16位。それに比して欧米勢は、オーストリアが26位、イギリスが28位、フランスが31位と、どれも芳しくない。ロシア制裁に熱心な国々が打撃を受けている様子が明白だ。

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話を「見切り品ショップ」に戻すと、ドイツでは現在、テクノロジーによる成長が止まっており、投資家は、よほど良い条件が提示された場合のみ、散発的に投資する状態だという。

ヴァイマー氏によれば、「経済的には、ドイツは発展途上国への道を歩んでおり」、ヨーロッパにおいては、「すでにブレーキ役として認識されている」。

投資に関する悪条件は、エネルギー政策の失敗の他、誤った移民政策、デジタル化の遅延、税制の問題や行き過ぎた官僚・書類主義など多岐にわたる。いずれにせよドイツがEUの牽引役だと思っているのは、未だに政府のグリーン・ディールやデジタル・トランスフォーメーションなどの効用を信じている人々だけかもしれない。

 

先日の欧州議会選挙での与党の惨敗が示すように、すでに多くの国民は、ドイツの劣化に危機感を募らせている。

そのためヴァイマー氏は、ドイツに対する信頼を取り戻すためには、経済界が立ち上がり、自らの手で積極的に事態を改善させようと呼びかけた。ドイツ政府にはとっくに匙を投げているらしい。

一方のジン氏は、現在の様子を「ドイツは燃えている」と表現。これは、ドイツが現在、過去の産業(=栄光)を自ら燃やしているという意味で、背筋が寒くなる図だ。

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