公衆浴場での懸念は「可能性低い」 最高裁の草野耕一裁判官、性別変更の外観要件も「違憲」
2023年10月25日 20時11分
最高裁は25日、トランスジェンダーの人が戸籍上の性別を変える際、生殖機能をなくす手術を求める法律の規定について「違憲」と判断した。
判断したのは、15人の裁判官全員が参加する大法廷。このうち草野耕一裁判官(68)は、申立人の性別変更を認めるべきだとする反対意見を述べた。
◆草野裁判官の反対意見のポイントは
草野裁判官は反対意見で、変更後の性別の性器に似た外観を求める「外観要件」についても検討した。外観要件の目的は「公衆浴場などで意思に反して異性の性器を見せられないこと」だとして、合憲の場合と違憲の場合を比べた。
外観要件を合憲だとすれば、公衆浴場などで意思に反して異性の性器を見せられることが「およそ起こりえない、静謐な社会」だが、それは「性同一性障害者の自由、利益に対する恒常的な抑圧」によるものだと論じた。
一方、外観要件を違憲とした場合でも、性同一性障害の人の人口が少なく、公衆浴場などでは管理者が注意して規則を定めることが期待できる、と指摘。意に反して異性の性器を見せられないという利益は「損なわれる可能性は低い」ことに加え、「性同一性障害者の自由、利益に対する抑圧は大幅に減少する」として、外観要件は「手段としての相当性を欠き、違憲」と結論づけた。
◆草野裁判官、これまでの裁判では?
草野裁判官は、これまでも家族の多様性を巡る裁判で個別意見を述べたことがある。
2021年、夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲とした決定では、「違憲」だと反対意見を述べた。「選択的夫婦別氏制によって向上する国民の福利は、同制度によって減少する国民の福利よりもはるかに大きいことが明白」と指摘した。
◆草野裁判官、どんな経歴?
最高裁ウェブサイトによると、草野裁判官は弁護士出身で、2019年2月に任命された。弁護士としては主に企業法務、金融法務の分野で活動。2002年にスイスの製薬大手ロシュが国内大手の中外製薬の株式を取得する際、ロシュの法律顧問を務めた。
1978年に東京大法学部を卒業し、1980年に弁護士登録。2004年から西村ときわ法律事務所(現・西村あさひ法律事務所)代表パートナー、2013年から慶応大教授を務めた。東京大、米ハーバード大の客員教授なども歴任した。
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