公衆浴場の混乱「極めてまれ」 最高裁の三浦守裁判官、性別変更の外観要件も「違憲」
2023年10月25日 18時40分
最高裁は25日、トランスジェンダーの人が戸籍上の性別を変える際、生殖機能をなくす手術を求める法律の規定について「違憲」と判断した。
判断したのは、15人の裁判官全員が参加する大法廷。このうち三浦守裁判官(67)は、申立人の性別変更を認めるべきだとする反対意見を述べ、「少数者の権利利益が軽んじられてはならない」と付け加えた。
◆三浦裁判官の反対意見のポイントは
「生殖不能」を求める規定について、三浦裁判官は2019年の段階で「違憲の疑い」を指摘していた。
今回の反対意見では、その後の医学的知見の進展や、全国の自治体にパートナーシップ制度が広がるなど、近年の社会状況の変化に言及。生殖不能要件について「現時点で、必要かつ合理的なものとはいえない」と述べた。
さらに、変更後の性別の性器に似た外観を求める「外観要件」についても「違憲」だとした。
公衆浴場などでの風紀を乱す可能性については、外観などを基準とした事業者の措置によって維持されていることに触れ、「社会生活上の混乱が生ずることは極めてまれ」と論じた。外観要件の必要性は「相当に低いものになっている」と述べた。
◆三浦裁判官の「付言」
反対意見の最後に、三浦裁判官は、2019年の決定からの4年間でも「本件規定により重大な影響を受けた者は少なくない」として、さらに「国の責務」やマイノリティーの尊重についても付言した。
2008年に改正された「性同一性障害特例法」では、性別変更の制度について必要性に応じて検討を加えることが定められていた。だが、「改正以来15年以上にわたり、本件規定等に関し必要な検討が行われた上でこれらが改められることはなかった」と述べた。
三浦裁判官は「全ての国民は、個人として尊重され、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」として、そのための措置を講じるのは「国の責務である」と指摘した。
2008年に改正された「性同一性障害特例法」では、性別変更の制度について必要性に応じて検討を加えることが定められていた。だが、「改正以来15年以上にわたり、本件規定等に関し必要な検討が行われた上でこれらが改められることはなかった」と述べた。
三浦裁判官は「全ての国民は、個人として尊重され、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」として、そのための措置を講じるのは「国の責務である」と指摘した。
さらに「 指定された性と性自認が一致しない者の苦痛や不利益は、その尊厳と生存に関わる広範な問題を含んでいる。民主主義的なプロセスにおいて、このような少数者の権利利益が軽んじられてはならない」と締めくくった。
◆三浦裁判官、これまでの裁判では?
三浦裁判官は、これまでのジェンダーや家族の多様性を巡る裁判でも個別意見を述べたことがある。
2019年、トランスジェンダーの人が戸籍上の性別を変える際に生殖腺をなくす手術が必要だとする法律の規定について、合憲と判断した最高裁第2小法廷の決定では、「違憲の疑いがある」と補足意見を述べた。
世界保健機構(WHO)や欧州人権裁判所など国際的な判断の変化に触れつつ、「現時点では、憲法13条に違反するとまではいえないものの、その疑いが生じていることは否定できない」と論じた。
また2021年には、夫婦別姓を認めない現制度を巡って憲法判断を示した決定で、別姓での婚姻届を受理しなかった市役所の対応を支持する法廷の結論には賛成した上で、夫婦別姓の選択肢がない規定そのものは違憲だと指摘した。
◆三浦裁判官、どんな経歴?
三浦裁判官は検察官出身で、2018年2月に任命された。
最高裁ウェブサイトによると、1980年に東京大法学部を卒業。1982年に検察官となり、那覇地検検事正、最高検公判部長、札幌高検検事長、大阪高検検事長などを務めた。
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