意に反する手術は「過酷な選択」 最高裁の宇賀克也裁判官、性別変更の外観要件も「違憲」

2023年10月25日 19時05分
最高裁は25日、トランスジェンダーの人が戸籍上の性別を変える際、生殖機能をなくす手術を求める法律の規定について「違憲」と判断した。
判断したのは、15人の裁判官全員が参加する大法廷。このうち宇賀克也裁判官(68)は、申立人の性別変更を認めるべきだとする反対意見を述べた。

◆宇賀裁判官の反対意見のポイントは

生殖機能をなくす手術では、精巣や卵巣を摘出する。
宇賀裁判官は、性別変更には生殖不能にする手術が必要とする法律の規定について、身体の自由を含む個人の尊重を定めた憲法13条に違反していると指摘。
宇賀克也裁判官(最高裁提供)

宇賀克也裁判官(最高裁提供)

さらに、変更後の性別の性器に似た外観を求める「外観要件」についても、意に反して手術を受けるか、性別変更を諦めるかの「過酷な二者択一」を迫るものだといい、正当化できるほどのものではないとして、「違憲」と判断した。

◆宇賀裁判官、これまでの裁判では?

宇賀裁判官は、これまでのジェンダーや家族の多様性を巡る裁判でも個別意見を述べたことがある。
2021年、トランスジェンダーの人が戸籍上の性別を変更する際、未成年の子がいないことが必要だとする法律の規定「子なし要件」について、合憲とした第3小法廷の決定では、担当した5人の裁判官の中で唯一、反対意見を述べた。
子どもの心理的な混乱や学校での差別の可能性など、「子の福祉への配慮」のための規定だとする説明について「漠然とした観念的な懸念にとどまる」「十分な説得力を感ずることができない」と論じた。
また2021年、夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲とした大法廷の決定では、「違憲」と反対意見を述べた。この規定は、夫婦同等の人格的利益を求める人にとって「自由かつ平等な意思決定を侵害する」と指摘した。

◆宇賀裁判官、どんな経歴?

最高裁ウェブサイトによると、宇賀裁判官は研究者出身で、2019年3月に任命された。専門は行政法で、行政手続きや情報公開などを研究してきた。
1978年に東京大法学部を卒業。同大助手、助教授を経て1994年から教授を務めた。放送大、米ハーバード大の客員教授なども歴任した。
趣味は、美しい自然の景観を眺めること、近所の公園の散策。作家の故・司馬遼太郎さんのファン。


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