性別変更の「手術要件」は違憲  最高裁が初判断 生殖能力なくす性同一性障害特例法の規定【裁判官一覧】

2023年10月25日 19時59分
 出生時の性別と性自認が異なるトランスジェンダーの人が戸籍上の性別を変更する際、生殖機能をなくす手術が必要になる「性同一性障害特例法」の規定(生殖不能要件)が違憲かが争われた家事審判の特別抗告審の決定で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は25日、この規定が「強度な身体的侵襲の手術か、性別変更を断念するかの過酷な二者択一を迫るもの」として、初めて違憲と判断した。裁判官15人全員一致の意見。手術を望まない当事者に性別変更の道が開かれ、国は要件の見直しを迫られる。(太田理英子)

 大法廷は、もう一つの論点だった特例法上の性別変更後の性別に似た性器の外観を求める要件(外観要件)は審理を尽くす必要があるとし、憲法判断せずに高裁に差し戻した。このため、申立人の性別変更を認めず、再び高裁で審理されることになる。
9月に弁論が開かれた最高裁大法廷

9月に弁論が開かれた最高裁大法廷

 15人のうち3人の裁判官は外観要件も「違憲」として、高裁に差し戻すのでなく、性別変更を認めるべきだとの反対意見を出した。
 決定は、生殖不能要件の規定が「憲法13条が保障する意思に反して身体への侵襲を受けない自由を制約する」と指摘。法制定時は生殖機能を残して性別変更して子どもが生まれた場合の親子関係の問題や社会の混乱が想定されたが「問題が生じるのは極めてまれ」で、性的少数者への理解促進の取り組みが広がっている状況も踏まえ「制約は必要とも合理的ともいえない」と結論付けた。
 申立人は西日本在住で、戸籍上は男性、性自認が女性。ホルモン治療による生殖機能減退などを理由に、性別適合手術を受けておらず「性別変更と引き換えに手術を求める規定は違憲だ」として手術なしの性別変更を求めていた。家裁、高裁段階では認められなかった。
 特例法を巡っては、最高裁第2小法廷が2019年、別の申立人の家事審判で生殖不能要件を「現時点で合憲」と判断。社会状況は変化するため、「憲法適合性は不断の検討を要する」と指摘していた。今月11日には、静岡家裁浜松支部が生殖不能要件を「違憲」とし、手術なしでの性別変更を認める決定を出した。
 最高裁が法令を違憲と判断したのは戦後12件目になる。

関連キーワード


おすすめ情報

社会の新着

記事一覧