◇おぢを尊重し、敬意を払い、感謝は伝える


さて、本日4本目のブログ更新です。

早速ですが、寄稿記事が公開されておりますので、まだお読みいただいてない方はどうぞ。


こちらから→男のプライドを尊重し、おぢに恥をかかせない。これぞ頂き女子の作法


Twitterを見ていると、頂き女子りりちゃんや、タワーマンションで女性が殺害された事件への評価が真っ二つに割れていて、興味深いなと思います。


頂き女子って、言葉は可愛いですが、やっていることは下品ですよね。
りりちゃんに騙されてお金を渡すような男性は、基本的に善良な人たち。そんな男性たちの良心につけ込んで、彼らがコツコツ貯めてきたお金を吐き出させるのですから、決して褒められたことじゃない。


とはいえ、若い女の子が真面目な男性に恋をさせて、金品を貢がせるのは「文化」といったらおかしいけれど、昔からよくあることです。
私が大学生だった頃にも、今でいう頂き女子は知り合いにいました。



「財布にするのは、女慣れしていない真面目でうぶな男が狙い目」だと言って、狙った男を罠にはめ、基本的には「やらずぼったくり」で散々お金を引っ張る。(ヤらせない方が引っ張れるそうです)
そして相手が素寒貧になったらポイッ。そうやって男たちを千切っては捨て、千切っては捨て、全く悪びれることがありません。


ただ、今にして思えば、知人の場合は別れ方が上手でした。
彼女は巧みに本性を隠して、男に対しては「どの口が言うとるんや!」って呆れるような嘘ばかりつくのですけど、おかげで男の方は最後まで夢を見ているので「◯◯ちゃんは悪くないよ」なんて言ってたりする。

なんなら、別れた後でも「◯◯ちゃんのために」って、お金を振り込んだりするのです。


私や友人は、彼女がそうやって男たちを手玉に取っていく様子を見て、「なんでやー!なんで男にはヤツの本性が見抜けんのやー!」と身悶えしておりました。


だけど、これも今にして思えば「貢がせた男に最後まで本性を見抜かせない」って、知人はいい仕事してたんだなと思います。


世の中には嘘でいいことなんて一つもないかもしれないけど、嘘でもいいことはいっぱいあるのですから。
最後まで嘘を突きとおすことで守られるものがあるなら、それは、罪のない、優しい嘘なのではないでしょうか。


私は、貢がせた男性から殺されてしまった女性について、刺されて当然とは思いません。
そんなの当然なわけがない。

けれど、金品を貢がせて身ぐるみはがした上、面子を潰し、心ばかりかプライドさえズタズタに傷つけたら、恨まれて当然だとは思います。それは男女の立場が逆転したってそうでしょう。


ところで、記事で紹介した「化身」は、映画と小説ではちょっとずつ話が違うんですよね。
私は、映画の終わり方のほうが好きです。


小説の方の主人公は、若い霧子を恋人にしながら、元カノである史子もセフレにしようとします。
全く相手にされないのですが、霧子に振られる際にも、彼は性懲りも無く史子に甘えようとするんですよ。一杯付き合って欲しいと頼んだり、電話をかけたり、最後までジタバタしていてみじめ。


ですが、映画の方の主人公は、霧子に去られ、やるせなくて仕方なくて、それでも公衆電話から電話をかける相手は史子ではありません。天気予報にかけるんです。

そして、すれ違う若い女を、もう目で追いかけている。


そのシーンがめちゃくちゃ好きですね。美中年である藤竜也がカッコ良すぎるせいもありますが、大人の男が痩せ我慢をして、寂しさや苦しさに一人耐えてる姿にキュンとくる。
そして、あんなにも霧子に執着していたのに、もう若く魅力的な女に目が行ってしまうところなんて、ホントどうしようもなくて愛おしい。


一方で、私が小説で最も好きなシーンは、映画には出てきません。
私は、主人公が霧子を相手に、女性の美について語る一幕が好きなのです。


「若くて綺麗、なんてことは、平凡なことだからね」

「そうかなぁ」

「そりゃそうさ。もし若くて汚ければ、よほどひどいんだ」

ボーイがワインを注ぎに来たが、霧子はこらえきれずに笑い出した。

「そんなことをいったら、若い人に嫌われますよ」

「若い時は、顔の美獣とは別に、どんな恰好をしてもサマになって可愛い。犬の仔だって、豚の仔だって、小さい時には可愛い」

「わたしも、今までは豚の仔だったのね」

「若い時に可愛い。なんてのは、たいして価値はない。問題は年齢を取ってからだからね。二十歳できれいというのは平凡なことだが、三十できれいならまずまず。四十できれいなら、なるほど、ということになる。
五十になってもなお美しければ、相当なものだし、六十を超えても素敵だと思わせるようなら、これはもう大変なことだ。こうなったら、まさしく才能としかいいようがない」



私が「化身」を読んだのは高校生時分でしたが、この下りが強く印象に残りました。
この記事を書くにあたって、30年ぶりに「化身」を読み直しましたが、「渡辺淳一って、やっぱりいいこと言ってるよな」と思います。みなさんはどうですか?



化身 上巻 (集英社文庫)
渡辺淳一
集英社
2017-09-01


化身 下巻 (集英社文庫)
渡辺淳一
集英社
2017-09-01