補足特例法の大法廷は、戸籍の性別の変更の際に、生殖腺の切除を要件とすることを違憲としたため、女性から男性への性別変更の際には性別適合手術が不要となっていた。今回は、最高裁から差し戻された外観要件が「違憲の疑い」だと判断して手術なしで男性から女性への性別変更が可能になったということだろうか。記事によれば「ホルモン治療」によって外観がかなり変化したこと、おそらく外性器がかなり委縮した状態にあることを認めてのことのようなので、これをもって直ちに性別変更の際に外観要件が不要となるかどうか不明である。詳細な判決文を待ちたいところである。 風呂に関しては、公衆浴場法には性別に関する記載はない。厚生労働省からの通知によって、「身体的特徴」によることが周知されているだけの状態のため、こうした「ホルモン治療」後の外観の「身体的な特徴」をどう判断するのかを含め、きちんとした立法が必要となろう。
同じ記事に対する他のコメンテーターコメント
コメンテータープロフィール
1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、 武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。