逆境を乗り越える子に育つために、親がやめるべきこと
SHOWROOM株式会社の前田裕二氏など、貧しい家庭に生まれたにもかかわらず、成功している人は一定数、世の中にいますよね。多様な機会を与えてもらい、サポートの体制も万全である裕福な子どもとは、生まれながらにして大きな格差があったはず。では、厳しい家庭環境にも関わらず、成功できる要因は何なのでしょうか?
Stefanie DeLuca氏、Susan Clampet-Lundquist氏、Kathryn Edin氏の共著『Coming of Age in the Other America』に、ヒントが書かれています。本によると、子ども達が逆境を乗り越えて高校や大学を卒業するには、趣味など熱中できることを持っていることが大きく関係しているとのこと。これらはアイデンティティプロジェクトと呼ばれており、生きる上で目的や使命、インスピレーションを持つことが、障害の克服に役立つと言われています。卒業した後も、生きていく上では多くの困難に遭遇しますよね。それぞれの過程で障害を乗り越えていくためには、没頭できることを見つけておくことが、ひとつの鍵と言えます。
では、子どもが夢中になれることを見つけるために、親は何ができるのでしょうか?専門家によると、親は何かを「やってあげる」よりも、あることを「やめてあげる」方が、より効果があるのではないか、という見解が出ています。
米メディア Creative Child 掲載の”How to Help Your Child Find Their Passion”を翻訳・編集して、説明します。
SNS の普及によって、直接関わりのない人たちの近況も目に入るようになりました。子ども絡みの嬉しいイベントを投稿する傾向のある、子育て世帯。「息子が進学校に合格した」「娘がピアノのコンクールで優勝した」などの投稿を見ると、あたかも他のお家が素晴らしい子育てをしているかのように思えてしまい、焦るのではないでしょうか。実際に他の子の活躍が目に入るとますます、自分も何かしなくては、とプレッシャーを感じてしまいますよね。
しかし、子どもを成功させるようにプレッシャーをかけることは、逆効果と言えます。スポーツを例にとって見てみましょう。全米青少年スポーツ連盟の調査によると「70%の子どもが、13歳になるまでに集団競技をやめてしまう」との統計が出ています(米メディア ワシントンポスト 掲載の Why 70 percent of kids quit sports by age 13 )。やめることになった理由は、金銭的な事情で続けることが困難になったなど、一概には言えませんが、大多数の子どもたちはスポーツを「もう面白くない」と感じ、自らの判断でやめてしまっていたのです。
皆さんも、子ども時代を振り返ると思い当たる節があるのではないでしょうか。親の勧めで、特に好きでもない習い事を始めて、楽しくないけれど続け、自分の意見が言えるようになって、やっと止めることができた......費やした時間を、他のことに使うことができていたら、もっと熱中できることに出会えていたかもしれません。
また、せっかく子どもが面白いと思い始めてきたところで、親の過剰な期待を感じてプレッシャーになってしまい、興味の芽を摘んでしまうことも。子どもにとって良いと思ってしていることが、かえって息苦しくさせてしまうことがあるのです。
子どもが夢中になり始めた時には「今、子どもにプレッシャーをかけすぎていないか?」と少し敏感になってみてください。親のプレッシャーがない中で思いっきり打ち込める環境こそが、子どもたちの情熱を解き放つうえで、不可欠なのです。
「もっと英語ができたら、今頃は海外に住めていたかもしれない。」「野球を地域のクラブチームではなく、有名な先生から教わっていれば、もっと上達できたのに。」......コンプレックスのない人間などいません。ウォーレン・バフェットなど一部の人間を除き、おそらく全ての親は自分のとらなかった選択肢を後悔し、叶わなかった夢を持っているのではないでしょうか。
そんな親にとって、子どもに自分ではかなえられなかった夢を実現してもらうことは一見、魅力的に思えますよね。
子どもは親からの期待を感じ取ると、やめたくても言い出せず、続けてしまうことがあります。なぜでしょうか?
大好きな親の期待に添えないことが、子どもにとって何より辛いことだからです。既に興味を失ってしまったものでも、親に喜んで欲しくて頑張ってしまいます。
私たち親に求められるのは、子どもが自分の筋書き通りに動いているか確認することではなく、何が自分の子どもを動かしているのかをよく観察・理解してあげることなのです。。
それでも、どうしても親のサポートは必要です。子供を一人で何かやらせるにはある程度の年齢まで行かないと難しい上に、習い事では送り迎えや、月謝などの費用が発生します。水遊びでは溺れないか見守ってあげるなど、気も配らなくてはなりません。また、プレッシャーをかけてはいけないと頭では分かりつつも、どうしても我が子には期待してしまうのが親というもの。そんな中で上手くバランスを保って、プレッシャーをかけないように必要なサポートのみをするのは、難しいですよね。
では、子どもが関心を示すもの見つけた時、どうすれば上手に引き出してあげることができるのでしょうか?
子どもの興味を上手く引き出してあげるために親のできることは、まずは子どものことをよく知ることです。スマホやパソコンをしまってデバイスフリーの時間を作り、マインドフルな状態で、子どものすることに注目してあげましょう。その際、パパが運動神経が良かったからこの子も良いはず、自分はクラシック音楽が好きだからこの子も好きなはず、といった先入観も一旦しまっておくのがいいですね。
「習い事、何させてる?」という会話は、ママ友・パパ友との間でよく行われます。子どもにとって最善のものを選んであげることは、大人の方が熱中してしまいがち。しかし、子どもが苦手としそうなものや、自分が過去得意でなかったものを、あえて体験させることを恐れてはいけません。子どもの脳は、全ての経験から学びます。親によって厳選された、最高のものに触れ続ける必要はないのです。興味のあることを見つけることは、それ自体を目的として見つかるものではなく、たくさんの経験をした上での副産物と言えます。
だから、親である皆さんは、そんなにプレッシャーを感じなくても大丈夫。様々な体験を、無理のない程度で子どもと一緒に楽しんでください。夢中になれるものが見つかったらラッキー、という心持ちで過ごすのがいいですね。プレッシャーから解き放たれた状態の中で、子どもの目が輝いているかどうか、ゆったりと見守ってあげましょう。
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